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「まず、総長たちのことを心配する必要があるということだ」



 俺の深刻な表情に、雅也が小さな悲鳴を挙げた。



「そ、そうか……!」



 達也は一人取り残されたように、おろおろと俺たちの会話の行く末をただ見守っている。



「裕也……総長たちが騙されたかもしれないってことだよね……?」



「あぁ、その可能性をまずは考えなくちゃいけないだろう」



「そういうことか」



 達也も腑に落ちたようで、難しい顔をしている。



 俺たち三人は膝を突き合わせて、指を組んだ。

 その姿はまるで、秘密の会合を開いているかのようだった。



「あ!」



 突然、何かに気が付いたらしい達也が声を出した。



「どうした?」



「いや、最近、追い出しがめっきり無くなってきたなぁ、と思ってよ」



「そう言えば、確かに……」



 達也の言葉に納得する雅也。

 俺は少しだけ考えて、それから結論を出した。



「……うん、なら仕方がないな。総長たちが騙されていたとしても、俺らの安全には変えられないものな。レナさんのことはそのままにしておこう」



 俺の言葉に二人は勢いよく頷いた。

 なんて現金な奴らなんだ、俺たちは。



 そんな俺たちの後ろから、この場には相応しくない明るい声が届いた。



「うん? 私が、何だって??」



 恐る恐る後ろを振り返った俺たちの前には、仁王立ちで腕を組んだレナがいた。



 ……うん、何も見なかったことにしようか。

 そうしよう。それがいい。さぁ、今すぐにどこかへ行ってくれ。



 俺は切実にそう願った。
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