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意地悪したくなるから
しおりを挟むそんな訳で俺たちは放課後、街に繰り出した。
気持ち大きめに足を出していると、真木田が置いてかれまいと必死についてくる。
何も言わず、こちらに合わせようとしているところがとても真木田らしい。
俺がわざと一歩を大きくしてるなんて、疑いもしていないんだろう。
その素直さが真木田の良いところではあるんだけど。
時折、俺はその真木田の真っ直ぐさを弄びたくなってしまう。
……困ったもんだ。
「マキー」
「ん?」
「俺、明美の誕プレ買いたいんだよね」
ヘラヘラと笑いながら、そう告げると真木田が一瞬寂しそうな顔をした、ような気がした。
「……あ、わかった」
俺は明美の好きそうな可愛らしい雑貨屋に堂々と入っていく。
散々連れ回されたせいか、俺に羞恥心は全くない。
だが、真木田は違った。
きらきらと、ふりふりとが、いっぱい詰まったお店の前で俺を切なげに見つめていた。
入る勇気が出ないのだ。
あー、またそんな捨てられた子犬みたいな目をして……。
だけど、俺はそんな可哀想な真木田に気づかないふりをした。
「お、これ明美が好きそうな感じ~」
真木田の悲しみを帯びた視線が俺の横頬に突き刺さる。
うわぁ、何これ。
めちゃくちゃ快感なんだけど。
ひくひくとニヤけそうになる顔を何とか抑え込み、俺はのんびりと会計を済ませる。
店を出ると、真木田は瞳いっぱいに涙を溜めて、俺を睨んでいた。
「無視することないだろ!」
「あ、ごめんねぇ。明美の誕プレ探しに夢中になってて」
目線を合わせ、首を傾げながら謝る。
すると、真木田は瞳を泳がせて、
「……もう、いいから……」
真木田は俺にとても甘い。
それがどこまで許されるのか、試してみたくなるのが俺という人間だった。
ふわりと笑って、俺は真木田の柔らかな髪に手を伸ばす。
「意地悪しちゃって、ごめんね」
ぽつりと零した言葉は、真木田の耳には届かなかった。
疑問符を頭に掲げて、俺を見上げているのだから。
……いや、やっぱり。
そんな純粋無垢な眼差しを向けられると、また意地悪したくなるから困るよ。
「あ、言い忘れてたんだけど。明美って妹だから。マキが何か勘違いしてるみたいだけど、その」
困ったような顔を作ると、真木田の頬が恥ずかしさからか、真っ赤に染まった。
「なっ!そ、それならそうと、早く言えよ!」
「あはは、ごめーん」
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