萌ゆる門には福来たる

追いかけるタイプの

「……あの、佐々木くん」

ある日、女の子に呼び出された。
場所は当然、体育館裏だった。

「……佐々木くん、好きです！」

頬を染めながら、胸に両手を当てて彼女はそう言った。
大変愛らしい、とは思う。

だが、それだけだ。
むしろ、俺は彼女よりもその後ろの茂みに潜んで、聞き耳を立てている真木田の方が……。

俺はにっこりと笑顔を見せて、彼女に言った。

「そっか、ありがとー」

でもごめんね、とは言わなかった。
言わなくとも、女の子たちには伝わるから。

案の定、目の前の名前も知らない彼女はきちんと瞳を潤ませてから、立ち去った。

ちなみに、そのスカートから伸びる脚は、結構俺好みだったりもした。

「……マキ？そんな所で何してんの？」

俺の声に、ガサリと葉っぱが蠢く。
それから、恐る恐るといった様子で真木田の頭が出てきた。

それから、

「……さっきの娘……付き合うの？」

俺は不安気な真木田の腕を引っ張り、茂みから出してやる。

「あーもー、ほら。葉っぱだらけじゃん」

頭やら制服についていた葉っぱを払い落としていると、

「なぁ！」

何故か憤った真木田が俺を見上げていた。
だから、すっぽり包み込んでやった。

そんな顔をする方が悪い。

わたわたと俺の腕から逃げ出そうとする真木田。
あまり深追いすることなく、俺は真木田を離してやった。

「な、なに！」

ぷるぷると震える姿は兎みたい。
俺は、ふっと笑って、

「何でそんなことが気になるの？」

「……な、なんでって。……もし佐々木に彼女が出来たら、俺と遊んでくれなくなるだろ」

しょんぼりと俯く真木田の頭に手を乗せる。

「じゃあ、今から遊ぼうぜ」

俺の言葉に、真木田は勢いよく顔を上げると、キラキラと瞳を輝かせた。

あーぁ、もう。
本当に単純なんだから。

鼻歌交じりに足を踏み出した真木田に向かって、俺は告げた。

「それに俺、追いかけるタイプの男の子なんだよね」

どうやら俺の流し目にやられたらしい真木田が、どぎまぎと視線を逸らす。

「そ、そうなんだ」

今日も、真木田は可愛いのだ。