萌ゆる門には福来たる

高殿アカリ

文字の大きさ
上 下
6 / 7

こそばゆい、この関係

しおりを挟む

その日、佐々木は朝から少しばかり調子が悪かった。
というのもここ最近、佐々木は毎晩のごとく夜更かしをしていたからだ。

理由など推測するまでもなかった。
真木田のことを考えていたのである。

真木田をオカズにしそうになる自分を叱咤するも、それで快適な安眠が得られるわけでもなく。
もんもんとした夜が続いたのである。

そんな佐々木が、教室の扉を開けた時だった。

ガタッと椅子が引かれた音がしたかと思うと同時に、不眠の原因である真木田の声が響いた。

「佐々木...!」

悲痛な声だった。
なんだなんだとクラスメイトたちがザワついていることにも気が付かず、真木田は続ける。

「どうしたんだよ、その顔」

それから、てくてくと佐々木のもとに小走りでやってきた真木田。
震える指先でそっと佐々木の頬に手を添える。

真木田の指は何故かぽかぽかと温かく、心地よかった。
佐々木はうっとりと瞳を閉じると、そのまま夢の中に落ちてしまいそうになった。

皮肉なものだ。
あんなに真木田のせいで眠れなかったはずなのに、真木田に触れられるとどうにも眠たくなるとは。

そんなことを考える佐々木の耳に真木田の声が物憂げに響く。

「顔色が悪いぞ? 大丈夫か?」

そのことが妙に嬉しくて、佐々木はふわっと笑顔を見せた。

「ただの寝不足だからだいじょうぶ。マキはなんも心配しなくていいよ」

いつもの意地悪な笑顔とは違う、ただただ愛おしいと言わんばかりのその笑みに、真木田の頬が朱色に染まる。

それから、真木田は赤く染まった顔を背けて、

「べ、別に心配なんてしてないからなっ...!」


そんな2人のやりとりを終始見ていたクラスメイトたちは一人残らず全員、思った。

(((朝っぱらから何を見させられているんだろうか......)))

とは言え、2人の関係に名前が付くのはまだまだ先のことである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺の基準で顔が好き。

椿英-syun_ei-
BL
学校一の美少年と噂される男と出会い頭に衝突してしまった。。 放課後、その美少年が部活中の俺のところにやってきて、飯を奢れと言ってきた。 怒っているのか、遊ばれているのか分からないが、俺はその申し出を受けることにする。 荒っぽく鈍感な上条 翔(かみじょう かける)と、 いまいち素直になれない学校一の美少年、竹内 楓(たけうち かえで)。 上条の親友の中西 灯夜(なかにし とうや)は少しずつ状況を理解し始めたようだが…? 青春系恋愛BLです。いかがわしいシーンはありません。後半まぁまぁシリアスな雰囲気になりました。タイトルに反してコメディ要素はないです。 ------------------------------------------------------ 2019/11/12(火) 無事完結しました!結局性癖は隠せないのですね。学びました(笑) 最後数話を書くのが寂しくて嫌すぎて辛くて楽しかったです。 1つでも感想もらえたら嬉しいな。 2作目もぼちぼち書き始めます。これからもよろしくお願いします✨

満員電車の中で痴漢されたのは俺!?

成瀬瑛理
BL
『ん? 何だこいつ、痴漢か? 俺のケツを狙ってやがる――!!』 ※学校帰りに電車に乗って帰る途中、満員電車の中でいきなり痴漢に遭遇。しかもその痴漢男がテクニシャンだったからさぁ大変! 狙われるケツを死守したい高校生男子の車内でのめくるめく奮闘劇――。

きみがすき

秋月みゅんと
BL
孝知《たかとも》には幼稚園に入る前、引っ越してしまった幼なじみがいた。 その幼なじみの一香《いちか》が高校入学目前に、また近所に戻って来ると知る。高校も一緒らしいので入学式に再会できるのを楽しみにしていた。だが、入学前に突然うちに一香がやって来た。 一緒に住むって……どういうことだ? ―――――― かなり前に別のサイトで投稿したお話です。禁則処理などの修正をして、アルファポリスの使い方練習用に投稿してみました。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

お前が結婚した日、俺も結婚した。

jun
BL
十年付き合った慎吾に、「子供が出来た」と告げられた俺は、翌日同棲していたマンションを出た。 新しい引っ越し先を見つける為に入った不動産屋は、やたらとフレンドリー。 年下の直人、中学の同級生で妻となった志帆、そして別れた恋人の慎吾と妻の美咲、絡まりまくった糸を解すことは出来るのか。そして本田 蓮こと俺が最後に選んだのは・・・。 *現代日本のようでも架空の世界のお話しです。気になる箇所が多々あると思いますが、さら〜っと読んで頂けると有り難いです。 *初回2話、本編書き終わるまでは1日1話、10時投稿となります。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

大嫌いな幼馴染みは嫌がらせが好き

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照
BL
*表紙* 題字&イラスト:たちばな 様 (Twitter → @clockyuz ) ※ 表紙の持ち出しはご遠慮ください (拡大版は1ページ目に挿入させていただいております!) 子供の頃、諸星真冬(もろぼしまふゆ)の親友は高遠原美鶴(たかとおばらみつる)だった。 しかしその友情は、美鶴によって呆気無く壊される。 「もう放っておいてくれよっ! 俺のことが嫌いなのは、分かったから……っ!」 必死に距離を取ろうとした真冬だったが、美鶴に弱みを握られてしまい。 「怖いぐらい優しくシてやるよ」 壊れた友情だったはずなのに、肉体関係を持ってしまった真冬は、美鶴からの嫌がらせに耐える日々を過ごしていたが……? 俺様でワガママなモテモテ系幼馴染み×ツンデレ受難体質男子の、すれ違いラブなお話です! ※ アダルト表現のあるページにはタイトルの後ろに * と表記しておりますので、読む時はお気を付けください!! ※ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 ※序盤の方で少し無理矢理な表現があります……! 苦手な人はご注意ください!(ちっともハードな内容ではありません!)

処理中です...