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こそばゆい、この関係
しおりを挟むその日、佐々木は朝から少しばかり調子が悪かった。
というのもここ最近、佐々木は毎晩のごとく夜更かしをしていたからだ。
理由など推測するまでもなかった。
真木田のことを考えていたのである。
真木田をオカズにしそうになる自分を叱咤するも、それで快適な安眠が得られるわけでもなく。
もんもんとした夜が続いたのである。
そんな佐々木が、教室の扉を開けた時だった。
ガタッと椅子が引かれた音がしたかと思うと同時に、不眠の原因である真木田の声が響いた。
「佐々木...!」
悲痛な声だった。
なんだなんだとクラスメイトたちがザワついていることにも気が付かず、真木田は続ける。
「どうしたんだよ、その顔」
それから、てくてくと佐々木のもとに小走りでやってきた真木田。
震える指先でそっと佐々木の頬に手を添える。
真木田の指は何故かぽかぽかと温かく、心地よかった。
佐々木はうっとりと瞳を閉じると、そのまま夢の中に落ちてしまいそうになった。
皮肉なものだ。
あんなに真木田のせいで眠れなかったはずなのに、真木田に触れられるとどうにも眠たくなるとは。
そんなことを考える佐々木の耳に真木田の声が物憂げに響く。
「顔色が悪いぞ? 大丈夫か?」
そのことが妙に嬉しくて、佐々木はふわっと笑顔を見せた。
「ただの寝不足だからだいじょうぶ。マキはなんも心配しなくていいよ」
いつもの意地悪な笑顔とは違う、ただただ愛おしいと言わんばかりのその笑みに、真木田の頬が朱色に染まる。
それから、真木田は赤く染まった顔を背けて、
「べ、別に心配なんてしてないからなっ...!」
そんな2人のやりとりを終始見ていたクラスメイトたちは一人残らず全員、思った。
(((朝っぱらから何を見させられているんだろうか......)))
とは言え、2人の関係に名前が付くのはまだまだ先のことである。
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