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Goodbye, Childhood.

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拠点内に適宜爆発物を設置したあと、私は木の上に登った。
爆風の被害を受けないためだ。

排除するのはアンデッドだけでいいので、それほど大きな爆発にはならない。

最悪、足元さえ吹っ飛んでしまえばいい。
行動不能にして、後から頭を射抜くだけならばそこまで難しくない。

少し向こうにピーターたち戦闘要員が後退してきているのが見えた。
ゴードンの仕事が早いのか、拠点内にいた女や子どもは既に避難したあとだ。

このままピーターたちがアンデッドを拠点内に引き入れるのを待って、私は彼らの頭上から声をかけた。

「ピーター、下がりなさい」

顔を上げた彼らが私に恐れ慄いているように見えるのは気のせいだろうか。

まぁ、そんなことはどうでもよいか。

ピーターたちがゴードンに引き摺られるように拠点から退場していく。

あぁ、ここは私の舞台だ。
私だけが好きに出来る場所。

「アンデッドを導いてきたことは評価致しましょう」

興奮冷めやらぬまま、私はゆっくりと起爆ボタンを押した。

さようなら、過去の遺物たち。
さようなら、かつての生者たち。
さようなら、私の忌まわしき記憶たちよ。

爆発音がして、アンデッドたちの肉片が四方に飛び散った。

希望も絶望も何もない、彼らの瞳が最後の瞬間だけ驚愕に見開く。
まるで死ぬことなど想定していなかったみたいに。

その様が誠に人間らしく、私がアンデッドをそこまで憎めない理由でもあった。

人間であってヒトでないアンデッドたちに、幸あれ――――。

「爆発オチはいつだって爽快ですねぇ」

爆風に髪を靡かせながら、私は眼下を見下ろした。
いつのまにか横に来ていたゴードンが楽しそうに手を叩いている。

「俺はお前が世界をちゃちにみている姿が一等綺麗で好きだぜ。……知らなかっただろう?」

ゴードンがしたり顔でそう言い、私は眉を上げた。

「なら、もう少し早く教えていただきたかったですね」

「自分で気づかなきゃあ、意味がないだろうが」
「それもそうですね」

数ヶ月ぶりの再会だと言うのに、私たちの会話はいつも通りだった。

ゴードンと再会したことで私は憑き物が落ちた。

やけにすっきりとした気持ちで木っ端微塵になった拠点を眺める。
テントの切れ端がアンデッドの死体に舞い落ちていった。

こうして、アンデッド退治は成功を収めた。
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