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Goodbye, Childhood.

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導いてくれるのはいつだって黄金色の彼だった。
だけど、その彼の隣で私も一緒に生きてきた。

その事実は何よりの自信に変わる。

過去は容易く私を暗闇に連れ去ろうとするけれど。
その度に私は記憶に負けそうになるけれど。

二人でいれば無敵だった。

私はもう一人でも平気だと、そのことに気付いていないだけなのだと、誰よりも信頼しているゴードンが言ってくれるから。

私はようやく長く続いた悪夢から目が覚めた。
御伽噺のお姫様が永遠の眠りから目覚めるように。

私は愛するゴードンの真実の愛のキスで目が覚めたのだ。

そもそも革命軍という存在自体、おかしな話だ。
果てなき王国はもう過去の遺物なのに。
私が国王になる為の国はもう既に滅んでいるというのに。

「ゴードン、彼らの避難をお願いします」

ゴードンの瞳が楽しげに揺らめく。

「いいぞ。これから、どうするつもりだ?」

彼の高揚に煽られて、私の血も滾り始める。

久しぶりの感覚だ。
そうだ、私たちはいつもこうやって生きてきた。

「このまま、拠点ごとぶっ飛ばします」

ゴードンの瞳が大きく見開かれて、そのあと彼は口笛を吹いた。
期待に胸が膨らんでいるようだ。

「それでこそ、俺のクレオだ」

ゴードンの瞳の輝きに私はこれまでの冒険を思い出す。

幾度も死にそうになる彼を助けに赴いた。

アンデッドが私に襲い掛かってきたことも数知れず。
その時はゴードンが助けに来てくれた。

二人で窮地に追い込まれた時は、互いの背を守りながら闘ってきたのだ。

果てなき王国という閉鎖的世界に甘やかされて育った子どもたちは、外の世界を生き、次第に無骨な大人へと成長していった。

ゴードンがそうなるのを私は真横で見ていた。
私の成長はゴードンが見守ってくれていた。

私だけがいつまでも華奢で可愛い少年のままだと、なぜ思い込んでいたのだろう。

アンデッドに臆さず、彼らを風景の一部だと思っている私は、この世界に随分と馴染んでいるではないか。

――――あの頃よりもずっと自由に。

私は手近なところにあったフルーツを手に取り、齧り付いた。
口から溢れた果汁を拭いて、立ち上がる。

「もう大丈夫です。さぁ行ってください」

ゴードンは私にさっと口付け、テントを出て行った。
一人残された私は暫くかっと熱くなる頬を冷ましていた。

「……全く、あの人は」
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