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Corrupt Kingdom

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男物の下着を履いているとビンタが飛んでくるからだ。
かと言って女物の下着を用意してくれるわけでもなかった。

彼らが見たいのは青いワンピースを着た母親の幻影なのだ。

最終的に臍の辺りまでスカートは捲られた。

情けなかった。
親しみをちっとも抱かない相手にどうして下半身を観察されなければならないのだ。

静かな空間に父親と執事の荒い呼吸が響く。

「あぁ、悪い子じゃのう。中途半端に男の身体をしおって」

父親が焼きごてを手にする。
熱い金具が私の大腿部に当てられた。

熱さを上回る痛みと焼かれた皮膚の匂いに私の頭のねじが数本飛んでしまいそうだった。

ちかちかと星が瞬いて、無意識のうちに悲鳴をあげている。

「これは仕置きである。青い花蕾の中にこんな逸物を隠しているなど、国王として看過できぬのじゃ。お前のためなのじゃぞ、クレオ」

父親の言葉は何一つ理解出来なかった。
理解する必要もないのだと今なら言える。

喉が潰れ、悲鳴も満足に出せなくなった頃、ようやく満足したのか父親は執事を伴って部屋を出て行った。

私はスカートを捲り下ろした。
大腿部の内側がじくじくと痛んでいる。

窓の向こう側に見える青空をただ羨望していた。

涙はとうに枯れ果てて、城壁の向こうに広がる世界はきっと楽園なのだと言い聞かせた。

――――いつか、そこへ行こう。
ゴードンと一緒に。

例え何が起きたとしても、楽園でゴードンと彼の家族と共に温かい日々を過ごせる未来を信じて。
そのささやかな願いだけが今を生きる理由の全てだった。

薄く開いた扉から、義母と異母兄が静かに私を蔑んでいる。

義母のピンヒールの足音が近づいてきている。
受け身を取ろうと身体を丸ませる前に、彼女の足蹴りが私の背中を貫いた。

声は出なかった。
ただ喉から奇怪な空気音が出ただけだった。

「あんたが悪いのよ。あんたが国王様を誘惑するから。どうせなら国王様に似て産まれればよかったのよ。誰もあんたみたいな、あの女に似た子どもなんて欲しくないの」

一言を紡ぐ度に蹴られながら、それでも私の視線は青い空を捉えて離さない。

ゴードンと約束をした。
『一緒に街を出よう』と誓い合ったのだ。

「どこ見てんのよ!」

ワンピースの上からピンヒールで爛れた大腿部を狙い撃ちされ、その余りにも強い痛みに私の意識は混濁した。

真っ直ぐに笑う茶目っ気たっぷりの私のヒーロー、私だけのヒーロー。

「……ゴー、ドン」

このとき、私の囁きを聞いた義母が一瞬驚いたあとすぐに何かを企むような顔をしたことに意識を失った私は全く気が付かなかった。
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