海辺の町で

高殿アカリ

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 彼女は俯いている私の顔を覗き込むようにして、私の視界に入ってくる。



「みなみちゃん……どうかした?」



 優しく包み込むようにして問うてくる夕花に、思わず私の視界はゆがんだ。



 どうして、どうして。

 どうしてこんなに醜い私に彼女はいつも優しくしてくれるのだろう。



 醜く心に巣食うこのどす黒い感情を垂れ流すことしかできない私に、夕花はいつも優しくあれるのだろう。



 ううん、夕花だけじゃない。陽太も。

 彼もまた、私を見付けてくれた。



 夕花の隣に立って、同じようにして私の顔を覗き込んでいる陽太を見て、そう思った。

 彼の瞳にはただの純粋な心配しか映ってはいなかった。



 彼はいつだって私の太陽でいてくれた。

 彼が私に挨拶をしてくれてから、私はいつも少しだけ世界に優しくなれたような気がした。



 潤む視界を堪えて、私は心配する二人に声をかけた。



「何でもない。ほら、海に行こう?」



 優しい二人はそれ以上、何を言うでもなく、砂浜へと向かう私の後を付いてきてくれる。

 ほら、二人はこんなにも優しい。



 上を見上げると、一つの流れ星が私たちを追い越して、明日に沈んでいった。



「「「あ」」」



 三人共に声をあげて、顔を見合わせる。

 考えていることはどうやら同じことで、にやにやしながら、興奮していく。



 この海辺では、この時だけは。

 私は永遠の存在を信じた。



 今、この瞬間は、きっと永久なのだと。

 何一つ変わることなどなく、胸の奥深く、誰にも触れられないような場所で、きっといつまでも鮮明な思い出として残るのだ。



 詭弁でしかなくても。

 綺麗ごとでしかなくても。



 私はそう信じたい。

 例え、記憶が、何一つの例外なく、色あせてゆくものだとしても。
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