高殿アカリ

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私は、ちいさな羽を持っている。

ちいさくてちいさくて、みすぼらしい羽を。薄くて汚くて。

ところどころ破れかけている、私の羽。



薄茶色に濁ったその羽で、私は空を飛ばんとしていた。

この身体さえ支えられないようなその羽で、身の程知らずにも青い空に溶け込まんとしていた。



私の穢れた羽よりも、薄汚くどす黒く濁った地上を後にして。



馬鹿な夢を見ては、ただただ孤独に怯えるばかりの私。

空を飛びたくとも飛ぶための能力なんて一つもなかった。



私は愚図で鈍間で。

そう言われながら生きてきたし、実際そうだと思う。



だから、たとえ母に捨てられようとも、父に殴られようとも、クラスメイトに存在なく扱われようとも、担任に雑用を押し付けられようとも、当然のことなのだ。



秋。高校二年。私は昨日、十七歳になった。

父は私に暴力という名の誕生日プレゼントを与えた。



狂気に満ちた父の目を思い返す度、私は孤独じゃないと安心する。



それでも、昨日刻印された家族の印がうずくから。

赤黒く腫れた右瞼のせいで優しい空の青がよく見えないから。



やっぱり私の羽は飛びたそうに、低く小さく、ささやかな重低音を奏でる。

その音は私にしか聞こえない。



そう、これでいいのだ。
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