15cm先の君へ

高殿アカリ

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ねぇ、優希。



初めて君と会ったあの日のことを思い出すよ。




まだ幼かった僕たちが、初めて会ったあの日。



僕が君の家の隣に引っ越して来て、両親に連れられて挨拶に行ったよね。




僕より二つ年上の君は、僕に優しく接してくれた。



大して楽しくもなかっただろうに、僕との遊びに付き合ってくれた。




そんな優しい君だったから、憧れたのだと思う。恋をしたのだと思う。



そして今も変わらず、愛しているのだと思うよ。




写真が嫌いだった君には、もう記憶の中でしか会えない。



そんな風に絶望したのが、この物語を紡ぐきっかけだった。




僕はもう一度だけ、君に会いたかった。



君のくれた万年筆が僕を君の元へと導いてくれる気がして。




だけど、今はこの万年筆が憎らしいよ。



このたった15cmほどの万年筆だけが、僕と君を隔てているのだから。




今はどうにもならないこの壁を、僕もいつか越えるときが来るのだろう。




その時は、僕たちの子どもの亜子も立派な大人になっているだろう。



結婚なんかもして、僕は孫に恵まれているかもしれないね。




君はそれまで、待っていてくれるだろうか。



僕が君の側に行く、その時まで。




もしも待っていてくれるのなら嬉しい。



君に話したいことが沢山あるんだ。




つい先日も、亜子が二足歩行を覚えてね……。



……っと、この続きはそっちで話すときまでとっておくことにしようか。




あの頃のように、一緒に甘いものでも食べながらお喋りをしよう。
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2023.05.11 ユーザー名の登録がありません

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高殿アカリ
2023.05.11 高殿アカリ

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