5 / 7
第2話 デートのお誘い
しおりを挟む
「嫌なことって続くものなの?」
校門前で呟いた私の言葉に、アリスが首を傾げてこちらを見る。
だけど、今はそんなことを気にしていられるほどの余裕が私にはなかった。
なぜなら、昨日の奴が、つまり、昨日私を心底困らせたRyoって奴が、なぜか私の通う高校の校門に立っているのだ。
しかも、朝から。
私と同じ制服を着た女の子たちに囲まれている彼に気が付いて足を止める私。
私の足が止まったことに気が付いたアリスもまた、足を止める。
何か言いかけようとした彼女の口が、開いてまた、閉じた。
大方、アリスの聞きたかった答えが向こうからやって来たからだろう。
Ryoは私たちの前に立つと、私とアリスの顔を交互に三度ほど見比べて、
「わお。君たち、双子?」
それが奴の第一声だった。
しかし、奴の口がここで終わるはずがなかったのだ。
疑問符で終わったはずの会話なのに、彼は畳みかけるように続けて口を開いた。
「あ、俺はモデルのRyo。リアスちゃんと同業者なんだ。えっと……」
会話にもなっていないし。
そうやってふて腐れる私の横でRyoはアリスに自己紹介をしていた。
答えなくていいよ。
私がそう言う前に、真面目で律儀な私の姉は、差し出されたRyoの右手を左手で握り返していた。
「初めまして、神川アリスです。いつも妹がお世話になっています」
あんたは母親か! 思わずそう言いたくなるのを必死で堪えた。
Ryoはアリスの返事に気を良くしたようで、
「そっか、アリスちゃんって言うんだね。よろしく」
そう言って、握手している手をぶんぶんと上下に激しく振ってから、ようやっとアリスの手を離した。
「はあ、よろしくお願いします」
アリスがそう答えながら、離れた左手を制服のスカートでごしごしとこすっているのを私は見逃さなかった。
ナイス、アリス。半ばダジャレのようなことを心の中で思いつつ、私は口を開く。
「それで、どうしてこんなところにいるの? それに、そもそもどうして私の高校を知ってる訳?」
「いや、俺がここにいるのはね、リアスちゃんが今日なら暇なのかなって思ったからなんだ」
きらり☆
また、昨日と同じ笑顔を見せて、奴はそう言ってのけた。
高校を知っている理由をはぐらかしたように聞こえるのはきっと私だけではないはずだ。
多分、誰かから聞いたのだろう。誰か、女の子から。
モデルのRyoに良くされたい女の子は一人や二人だけではないはずだ。
そんなことを推測している間にも、きらり☆な笑顔にやられた女子高校生の悲鳴が背後に響き渡る。
悲しいことに、モデルという職業はそれだけで、世間一般に言ってイケメンという訳なのだ。
「「「キャー」」」
ここは、殺人現場かね、ワトソン君。
なんて脳内ホームズが炸裂してしまったじゃないか。
アリスは彼の言葉で、昨日私が話していた人だと気が付いたみたいだった。
「……え、昨日の今日で……」
隣でドン引きしている姉の独り言が聞こえてきた。
本当にそうよね。私は姉のその独り言に大いに頷いた。
「生憎だけど、今日は終業式なのよ。せめて明日からにしてくれないかしら」
いっその事、明日にここで待ちぼうけしてくれれば良かったのに。
「あぁ、それは気が利かなくてごめんね」
しょぼくれる彼に返事をしたのは、私ではなく姉だった。
「それもそうね。……一週間後の明日、つまり二十九日に一日デートなんてしてみるのはどうかしら」
「な、え?」
戸惑う私とは反対に、Ryoは笑顔で、
「二十九日だね? 分かった。必ず開けておくよ。それじゃあまた、連絡する!」
そう言って、奴は軽やかにこの場を去っていった。な、なんて無責任な。
その後ろ姿を図らずしも見送ってしまった後、私はアリスに詰め寄った。
「どうして勝手に返事してるのよ!」
「え、だって二十九日はオフの日だって、この前言っていたじゃない」
「それは、そうだけど。……ってそうじゃなくて、どうしてデートなんて言ったのよ。それも丸一日!」
空を仰いで打ちひしがれる私。
でも、アリスにとってはそんなことはお構いなしのようだった。
彼女は冷たい瞳を私に向けて、こう言ったのだ。
「まさかリアス、昨日私を騙したこと、忘れた訳ではないでしょう?」
あぁ、神様。どうして私の姉はこんなにも妹に厳しいのでしょうか。
「ははは、まさか、そんな都合よく自分のしたことを忘れるなんてことがある訳が、な、ないわよ」
白々しい私の言葉に、アリスは普段はめったに見せない満面の笑みで頷いた。
あぁ、この状況で見たくはなかった。
未だざわついている生徒たちの間をすり抜けながら、私は溜息を吐いた。
「はぁ、どうして朝からこんなにも疲れなきゃいけないのかしら」
「ほんとにね」
アリスが静かに同意する。
夏の太陽が、私たちをじりじりと焼いている。あぁ、暑い。
……それにしても、奴は私の連絡先まで把握しているというのだろうか。
それか、これから調べるつもりなのか。
どちらにしても、気が重かった。
これから夏休みだというのに、信じられない。
「あぁ!!」
私は夏の青い空に向かって、思いっきり嘆いた。
アリスがぎょっと驚いてこっちを見てくるが、知ったことか!
半分は彼女のせいでもあるのだから、多少彼女の疑問符に答えなかったところでバチは当たらないわ。
ぷりぷりしながら、私はお尻を振って校門を潜った。
校門前で呟いた私の言葉に、アリスが首を傾げてこちらを見る。
だけど、今はそんなことを気にしていられるほどの余裕が私にはなかった。
なぜなら、昨日の奴が、つまり、昨日私を心底困らせたRyoって奴が、なぜか私の通う高校の校門に立っているのだ。
しかも、朝から。
私と同じ制服を着た女の子たちに囲まれている彼に気が付いて足を止める私。
私の足が止まったことに気が付いたアリスもまた、足を止める。
何か言いかけようとした彼女の口が、開いてまた、閉じた。
大方、アリスの聞きたかった答えが向こうからやって来たからだろう。
Ryoは私たちの前に立つと、私とアリスの顔を交互に三度ほど見比べて、
「わお。君たち、双子?」
それが奴の第一声だった。
しかし、奴の口がここで終わるはずがなかったのだ。
疑問符で終わったはずの会話なのに、彼は畳みかけるように続けて口を開いた。
「あ、俺はモデルのRyo。リアスちゃんと同業者なんだ。えっと……」
会話にもなっていないし。
そうやってふて腐れる私の横でRyoはアリスに自己紹介をしていた。
答えなくていいよ。
私がそう言う前に、真面目で律儀な私の姉は、差し出されたRyoの右手を左手で握り返していた。
「初めまして、神川アリスです。いつも妹がお世話になっています」
あんたは母親か! 思わずそう言いたくなるのを必死で堪えた。
Ryoはアリスの返事に気を良くしたようで、
「そっか、アリスちゃんって言うんだね。よろしく」
そう言って、握手している手をぶんぶんと上下に激しく振ってから、ようやっとアリスの手を離した。
「はあ、よろしくお願いします」
アリスがそう答えながら、離れた左手を制服のスカートでごしごしとこすっているのを私は見逃さなかった。
ナイス、アリス。半ばダジャレのようなことを心の中で思いつつ、私は口を開く。
「それで、どうしてこんなところにいるの? それに、そもそもどうして私の高校を知ってる訳?」
「いや、俺がここにいるのはね、リアスちゃんが今日なら暇なのかなって思ったからなんだ」
きらり☆
また、昨日と同じ笑顔を見せて、奴はそう言ってのけた。
高校を知っている理由をはぐらかしたように聞こえるのはきっと私だけではないはずだ。
多分、誰かから聞いたのだろう。誰か、女の子から。
モデルのRyoに良くされたい女の子は一人や二人だけではないはずだ。
そんなことを推測している間にも、きらり☆な笑顔にやられた女子高校生の悲鳴が背後に響き渡る。
悲しいことに、モデルという職業はそれだけで、世間一般に言ってイケメンという訳なのだ。
「「「キャー」」」
ここは、殺人現場かね、ワトソン君。
なんて脳内ホームズが炸裂してしまったじゃないか。
アリスは彼の言葉で、昨日私が話していた人だと気が付いたみたいだった。
「……え、昨日の今日で……」
隣でドン引きしている姉の独り言が聞こえてきた。
本当にそうよね。私は姉のその独り言に大いに頷いた。
「生憎だけど、今日は終業式なのよ。せめて明日からにしてくれないかしら」
いっその事、明日にここで待ちぼうけしてくれれば良かったのに。
「あぁ、それは気が利かなくてごめんね」
しょぼくれる彼に返事をしたのは、私ではなく姉だった。
「それもそうね。……一週間後の明日、つまり二十九日に一日デートなんてしてみるのはどうかしら」
「な、え?」
戸惑う私とは反対に、Ryoは笑顔で、
「二十九日だね? 分かった。必ず開けておくよ。それじゃあまた、連絡する!」
そう言って、奴は軽やかにこの場を去っていった。な、なんて無責任な。
その後ろ姿を図らずしも見送ってしまった後、私はアリスに詰め寄った。
「どうして勝手に返事してるのよ!」
「え、だって二十九日はオフの日だって、この前言っていたじゃない」
「それは、そうだけど。……ってそうじゃなくて、どうしてデートなんて言ったのよ。それも丸一日!」
空を仰いで打ちひしがれる私。
でも、アリスにとってはそんなことはお構いなしのようだった。
彼女は冷たい瞳を私に向けて、こう言ったのだ。
「まさかリアス、昨日私を騙したこと、忘れた訳ではないでしょう?」
あぁ、神様。どうして私の姉はこんなにも妹に厳しいのでしょうか。
「ははは、まさか、そんな都合よく自分のしたことを忘れるなんてことがある訳が、な、ないわよ」
白々しい私の言葉に、アリスは普段はめったに見せない満面の笑みで頷いた。
あぁ、この状況で見たくはなかった。
未だざわついている生徒たちの間をすり抜けながら、私は溜息を吐いた。
「はぁ、どうして朝からこんなにも疲れなきゃいけないのかしら」
「ほんとにね」
アリスが静かに同意する。
夏の太陽が、私たちをじりじりと焼いている。あぁ、暑い。
……それにしても、奴は私の連絡先まで把握しているというのだろうか。
それか、これから調べるつもりなのか。
どちらにしても、気が重かった。
これから夏休みだというのに、信じられない。
「あぁ!!」
私は夏の青い空に向かって、思いっきり嘆いた。
アリスがぎょっと驚いてこっちを見てくるが、知ったことか!
半分は彼女のせいでもあるのだから、多少彼女の疑問符に答えなかったところでバチは当たらないわ。
ぷりぷりしながら、私はお尻を振って校門を潜った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。
家に帰ると夫が不倫していたので、両家の家族を呼んで大復讐をしたいと思います。
春木ハル
恋愛
私は夫と共働きで生活している人間なのですが、出張から帰ると夫が不倫の痕跡を残したまま寝ていました。
それに腹が立った私は法律で定められている罰なんかじゃ物足りず、自分自身でも復讐をすることにしました。その結果、思っていた通りの修羅場に…。その時のお話を聞いてください。
にちゃんねる風創作小説をお楽しみください。
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる