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6.ガールズたちの裏話

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 私に呼び出れた彼女は、その仮面を脱いだ。

 今まで私に従順だったのが嘘みたいに、その瞳から私への尊敬の念が抜け落ちていた。



「噂を流したのはあんたでしょ、伊織」



 私の言葉に彼女は微かに笑みを浮かべただけ。

 それが余計に腹立たしかった。



「随分と楽しかっただろうね。私の言いなりになる振りをして騙していたのは」



「どうして私だと思うんですか?」



「だって、あんたしかいないもん。愛美ちゃんたちとも連絡が取れる人物なんて限られている」



 私の言葉に伊織は肩を竦めた。



「まぁ、そこまでバレてるんなら仕方がないですね。そうです、私が噂を流しました。ついでに言うと、愛美さんの誘拐についても私が黒閻に情報を流しました」



 彼女の全く詫びれないその姿に、私は苦々しい笑顔を浮かべることしか出来なかった。

 あぁ、私は何も見抜けていなかったってわけか。



「それ本当?」



「はい、もう嘘は吐きませんよ」



「……“もう”ね。はぁ、道理で愛美ちゃんの救出が早いと思った。でも、どうやったの? 誘拐場所や日時はあんたにも話していなかったって記憶してるんだけど」



「あぁ、それは……」



 そう言って、彼女は制服のポケットから小さな機械を取り出した。



「それは、盗聴器?」



「はい、そうですね。あの日、夢乃さんに付けさせてもらいました。情報屋がパソコンだけに強いという偏見は今すぐやめるべきだと思いますよ、夢乃さん。あと、脅しだけで情報屋を使おうとすることも」



「……なるほど、ね。それで? いつから愛美ちゃんに尻尾を振っていたの?」



「初めからです」



 伊織がそう言った瞬間、空き教室の扉が開かれて、愛美ちゃんたちが入ってきた。



「私は夢乃と違って、ちゃんとご褒美も用意していたからね。鞭だけじゃ、人は動かないのよ?」



 そんなことを言いながら。
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