その女、女狐につき。2

5.女狐の過去

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　結論から言うと、黒閻が助けたのは夢乃の方だった。



　そりゃそうよね、だって夢乃は黒閻の寵愛姫候補だもの。



　私が誘拐されたってこと自体、彼らが知っていたかどうか。

　怪しいものよね。



　だけどね、賭けに負けたのも夢乃の方だったの。



　あのとき、私は心の中で彼を呼んだ。



　ぶっきらぼうで、口が悪くて。

　私のことを妹みたいにしか思っていなくて。



　でも、それでも、大好きな彼のことを。



　だって私のヒーローは満吉だけだったから。



　そうしたら、本当に満吉が助けに来てくれるんだもん。

　私、びっくりしちゃった。



　神様なんて信じていなかったけど。

　このときばかりは信じてみても良いかもしれないって思った。



　まさか、このことが原因で満吉が死ぬだなんて知っていなければ。



　私の純潔と満吉の命を天秤にかけられたのなら。

　私は喜んで自分の純潔を捧げたのに。



「満吉、どうして……？」



　助けに来た満吉に向かってかけた言葉は、彼に抱き締められたことによってどこかへいってしまった。



　彼は泣きながら、震える腕で私を包み込んだ。



「愛美、良かった……」



　その声が、まるで繊細な宝物を手にしているみたいな声だったから。

　私は思わず顔を上げて、彼の表情を見つめたの。



　それから、私と彼の瞳が重なって。

　私と彼は、私たちなんだって知った。



　私の心にいるのが彼であるように、彼の心の中にいるのもまた、私だったのよ。



　目と目が合うだけで、私たちは全てを理解した。

　互いが互いをどれだけ大切に思っているのか、ってことが。