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4.ボーイズたちは見守るばかり
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愛美の自傷行為は俺たちを動揺させた。
何しろ、そこまで追い詰められているとは思ってもみなかったからだ。
ケイが愛美の手当てをした。
彼女の手首に巻かれた白い包帯が痛々しかった。
今は愛美も落ち着き、一花と一緒に眠っている。
「なぁ、フウガ……」
暗い顔をしたタイシが俺に話しかけてくる。
「愛美さぁ、やっぱり病院に連れて行った方が良いんかな」
「そりゃ、そうだろう」
「そっか。……でも、フウガは連れて行く気ないんやろ?」
「……愛美に、頼まれたからな」
「え?」
「いや、正確には愛美が一花に頼んだんだ。『もし、私がどうにかなったとしても絶対に病院には連れて行かないで。警察にも知らさなくていい。公にはしないで』ってな」
「っっ!! なんやそれ、そんな言い方まるで……」
「あぁ、まるで自分がどうにかなることを知っていたみたいだよな」
俺とタイシが沈黙すると、階段の向こうの扉から下っ端たちが声をかけてきた。
「フウガさん、あの、お客さんが来てます」
慌てた様子でもなく、戸惑った様子で下っ端はそう言った。
俺はタイシと顔を合わせて、立ち上がった。
扉を開けると、そこに居たのは和樹と里奈とかいう愛美の友人だった。
「……お前らか。まぁ、ちょうど良かった。連絡しようかと思っていたところだ」
俺の言葉に和樹が反応する。
「まさか、愛美さんに何かあったのか?」
察しの良い和樹に、そうだとは言えず。
俺は何も答えないまま、二人を愛美の部屋へ案内した。
愛美の自傷行為は俺たちを動揺させた。
何しろ、そこまで追い詰められているとは思ってもみなかったからだ。
ケイが愛美の手当てをした。
彼女の手首に巻かれた白い包帯が痛々しかった。
今は愛美も落ち着き、一花と一緒に眠っている。
「なぁ、フウガ……」
暗い顔をしたタイシが俺に話しかけてくる。
「愛美さぁ、やっぱり病院に連れて行った方が良いんかな」
「そりゃ、そうだろう」
「そっか。……でも、フウガは連れて行く気ないんやろ?」
「……愛美に、頼まれたからな」
「え?」
「いや、正確には愛美が一花に頼んだんだ。『もし、私がどうにかなったとしても絶対に病院には連れて行かないで。警察にも知らさなくていい。公にはしないで』ってな」
「っっ!! なんやそれ、そんな言い方まるで……」
「あぁ、まるで自分がどうにかなることを知っていたみたいだよな」
俺とタイシが沈黙すると、階段の向こうの扉から下っ端たちが声をかけてきた。
「フウガさん、あの、お客さんが来てます」
慌てた様子でもなく、戸惑った様子で下っ端はそう言った。
俺はタイシと顔を合わせて、立ち上がった。
扉を開けると、そこに居たのは和樹と里奈とかいう愛美の友人だった。
「……お前らか。まぁ、ちょうど良かった。連絡しようかと思っていたところだ」
俺の言葉に和樹が反応する。
「まさか、愛美さんに何かあったのか?」
察しの良い和樹に、そうだとは言えず。
俺は何も答えないまま、二人を愛美の部屋へ案内した。
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