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今が、有る
しおりを挟む真っ白な世界で、目を覚ます――
「ここは、何処だ。あぁ、死んだのか――」
透明な水の上で、再び目を瞑る。もう、楽になる為に――
『たわけ者が! 誰が、寝て良いと言った。さっさと、起きぬかッ!!』
小さな足が黒を起こす為に頭を必要に蹴っていた。黒がいやいや起き上がると、小さな幼女が仁王立ちしている。
一目見て、その者が誰か分かった。見た目こそ違えど、自分が相棒を見間違う事はない――
「随分と久し振りな気がするが……どこで、何やってんだよ《バハムート》」
『少し、別の次元におるだけじゃ! それよりも、何たる体たらくよ……呆れたぞ』
「――うるせぇよ。でも、やっと確信に変わった」
立ち上がる黒が、小さな黒竜の頭に触れる。撫でられる事が久しかったのか、幼子と変わらないその顔を緩ませるほどの笑みを黒へと向ける。
頭に触れた手から、微かだが魔力の揺らぎを感じる。
魔力は、増えてはいない。が、そこには確かに存在している。2年前より前から隣に感じていた異質な魔力――
そんな一欠片に過ぎない魔力であっても、今の黒を叩き起すのには充分であった。
僅かな魔力が、水路を勢い良く流れる様に全身へと巡る。巡る度に、眠っていた細胞が呼び覚まされる。
魔力が起きろと、細胞一つ一つを起こして回る。
「――行けるか?」
『妾は、元より――絶好調じゃ!』
「だな……不調なのは、俺の方だ」
2人が並んで歩く。真っ白な世界が、徐々に黒の色へと塗り替えられる。
その道中で、黒は仲間達の近況を尋ねる。バハムートが、少し迷った様子の後に、娯楽が少ないと言う不便さを語るだけで問題は無い事を告げる。
続けて、この一言を付け足した。未来が会いたがっていた――
その一言で、黒は――救われた。
「未来に伝えとけよ? 俺から、会いに行くってよ」
『うむ、言われるまでもない。だが、心せよ。宿主は、妾との結び付きが存在しない。故に、本来の力がつ――』
「――分かってる。分かってるよ」
『……むん、ならば良い。妾は、マスターの心の枷を外しに来ただけじゃからな』
その一言を最後に、黒の隣からバハムートの存在が消える。だが、確実となった。
未来達の生存が、自分のすべき事が――
今一度、自分の頭に焼き付ける。この先、自分の取るべき行動がどんな結末を迎えるのかを――
最悪、倭の立場や帝国の家族に迷惑を掛ける結果になるかもしれない。だが、先の事はどうでも良かった。
ただ、仲間を救う為に今が有るからだ。
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