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皇女アルミラの楽しい世界征服
決着!からの… その2
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「地割れだとっ?!」
激しく揺れる足元に動揺していると、足元から怖気る様な哄笑が聞こえー、
ーガゴッ!!ー
「うわっ?!」
轟音と共に、足元が崩れ落ちる。
舞台は崩れ、大きな口を開けた大穴が舞台の砂を呑み込んでいく。
「舞台の下に穴がッ?!」
俺は大量の砂と共に呑み込まれるフラジミルを抱え、飛行魔法で飛び上がろうとするが、
「くそっ、コイツ重いって!」
よく考えれば、俺は女の子しか抱いて飛んだ事はない。ましてやこんな巨体…コイツとの仕合のダメージもあるし、
もういっそ手を離してやろうか、そう思いながらヤツに視線を向ける。
脳天からしたたかに打ち付けたため、ヤツは目を覚ます様子もなく完全いノビている。
「…そうもいかないよなぁ」
俺がフラジミルの巨体を抱えてフラフラ飛ぶ横を、ものすごい速さで何かが飛びすぎる。
「な、なんだっ?」
ソレは一つや二つではない。
次々に飛んでいくソレの数は数十、数百、いや、それ以上ー。
真っ暗な地の底から舞台の大穴を通って、大量の魔物達が湧き出て来る。
「ま、魔物っ?!」
「逃げろーっ!」
「お、押すなっ!落ちるだろうがっ!」
突然の魔物の襲撃に観客席はパニック、阿鼻叫喚の地獄へと変わる。
我先に逃げ出す人々、押されたはずみで足を踏み外して大穴へ落ちてしまう者、
そして、魔物に襲われる者ー。
ーザシュッ!ー
一閃、真っ二つに斬られた魔物が消滅する。
「コ、コイツ等いつの間にあんな大穴をっ?!」
ヘインズとミーナが湧き出てくる魔物と応戦しているのが見えた。
「いや、それより今は殿下をお助けしないとっ!」
「はぁっ?!何を言って!お助けするのは将軍でしょう?!」
アルミラの元へ駆け出そうとするヘインズを制し、ミーナが叫ぶ。
「お前が将軍大好きなのはわかってるけど、俺達は帝国兵だぞっ?!殿下の御命を最優先…っ!」
「私は将軍に御仕えしてるんですっ!ってゆーか、私が将軍好きとか何で知って…っ!」
「それは今いいからっ!俺達は飛べないんだから、将軍の事はどのみち今はアイツに任せるしかないだろっ!」
「あんな帝国の敵にっ?!」
二人の視線が、フラジミルを抱える俺に向けられる。
ーガンッ!ー
飛べない我が身の不甲斐無さからミーナは客席を蹴り上げ、
「ハヤト殿っ!将軍をしっかり頼みますよっ!将軍に何かあったら許しませんからねっ!」
ミーナは一方的に叫ぶと、ヘインズと共に上段のアルミラの元へ駆けて行く。
「女の子に頼まれちゃなぁ…よいしょっ!」
俺はだらりと伸びるフラジミルの巨体を肩に担ぎ直すと、俺は観客が逃げ惑う客席を見回す。
「アルフリーヌ達は大丈夫か?まあ、アイツらが付いてるし心配はないが…」
「水の爪っ!」
『ぎゃああぁぁぁぁっ!!』
一際魔物達が集まっている所、最初にいた皆がいた席の辺りで、断末魔の叫びと共に魔物が大量に飛び散る。
どうやら獣人化したガトフが魔法爪を放っているようだ。
魔物達の隙間を覗くと、アークストルフ父娘とクサムを囲み、ウチのメイド達とガトフが円陣を組んで守っているのが見えた。
「大将ぉっ!大丈夫ですかぁっ!!」
俺の視線に気付いたのか、ケーラが手を振る。
「ああ、ちょっとコイツが重いけど、大丈夫だ!」
「そんな荷物は捨てて、早くこちらへっ!」
「ハ、ハヤト殿っ!早く助けてくれっ!」
「もぉっ、御父様ったら!情けないですわねっ!」
やはり心配の必要はなかったようだ。
「ああ、今行-」
俺はフラフラと皆の方へ向かっていると、
ーブンッ!ー
背後から風切り音がっ!
「くっ!」
なんとか避けた俺の鼻先を、巨大なハンマーが掠めていく。
「イカカカカカッ!想定以上にフラフラじゃなイカ、勇者ハヤトっ!
そっちのデカブツは報告以上の強さだったんじゃなイカ?」
俺の足元、穴の底から笑い声が聞こえる。
とても不快な笑い声だ。
ーぎらっー
大きな二つの目が闇の中に光る。
「第8次魔族第侵攻来だなっ!」
深い穴の奥から、巨大な烏賊の化け物が姿を現した。
「…誰だ、お前?馴れ馴れしいなヤツだなぁ」
「イッ?我を覚えておらんとっ?!なんと無礼なヤツではなイカっ!」
烏賊の被り物をした様な、ふざけた魔族が…憤慨しているようだ。
「第8次魔族第侵攻の際、あれほど激しく戦ったではなイカっ?!」
「すまん、ホントに覚えてないんだが…いや、謝る事じゃなイカ…あ、うつった」
「き、貴様っ!ふざけおるじゃなイカっ!我の名は魔界子爵スクィー…っ」
ーヒュンッ!ー
イカ魔族の頭、三角のヒレを俺の小さな火球が貫く。
「あっ、熱っ!熱いじゃなイカっ!」
「だから、お前みたいな小物魔族いちいち覚えてー」
「ハヤト様っ!後ろですわっ!」
アルフリーヌの声に後ろを見ると、先程鼻先を掠め去った巨大なハンマーが俺目がけて飛んで来る。
『ダメだ、避けきれなーっ』
ーゴンッ!ー
「ぐかっ?!」
フラジミルとの仕合のダメージとコイツの巨体のせいで避け切れなかった!
後頭部に衝撃が走り、目の前が真っ暗になる。
「イカカカカカカカッ!油断したんじゃなイカ、勇者ハヤトっ!」
イカ魔族の不快な笑い声が響く。
「ハヤト様っ?!」
「大将ぉっ!!」
遠のく意識の中、シンム達の呼ぶ声をわずかに聞きながら、俺はフラジミルもろもと大穴へ落ちて行ったー。
つづく
激しく揺れる足元に動揺していると、足元から怖気る様な哄笑が聞こえー、
ーガゴッ!!ー
「うわっ?!」
轟音と共に、足元が崩れ落ちる。
舞台は崩れ、大きな口を開けた大穴が舞台の砂を呑み込んでいく。
「舞台の下に穴がッ?!」
俺は大量の砂と共に呑み込まれるフラジミルを抱え、飛行魔法で飛び上がろうとするが、
「くそっ、コイツ重いって!」
よく考えれば、俺は女の子しか抱いて飛んだ事はない。ましてやこんな巨体…コイツとの仕合のダメージもあるし、
もういっそ手を離してやろうか、そう思いながらヤツに視線を向ける。
脳天からしたたかに打ち付けたため、ヤツは目を覚ます様子もなく完全いノビている。
「…そうもいかないよなぁ」
俺がフラジミルの巨体を抱えてフラフラ飛ぶ横を、ものすごい速さで何かが飛びすぎる。
「な、なんだっ?」
ソレは一つや二つではない。
次々に飛んでいくソレの数は数十、数百、いや、それ以上ー。
真っ暗な地の底から舞台の大穴を通って、大量の魔物達が湧き出て来る。
「ま、魔物っ?!」
「逃げろーっ!」
「お、押すなっ!落ちるだろうがっ!」
突然の魔物の襲撃に観客席はパニック、阿鼻叫喚の地獄へと変わる。
我先に逃げ出す人々、押されたはずみで足を踏み外して大穴へ落ちてしまう者、
そして、魔物に襲われる者ー。
ーザシュッ!ー
一閃、真っ二つに斬られた魔物が消滅する。
「コ、コイツ等いつの間にあんな大穴をっ?!」
ヘインズとミーナが湧き出てくる魔物と応戦しているのが見えた。
「いや、それより今は殿下をお助けしないとっ!」
「はぁっ?!何を言って!お助けするのは将軍でしょう?!」
アルミラの元へ駆け出そうとするヘインズを制し、ミーナが叫ぶ。
「お前が将軍大好きなのはわかってるけど、俺達は帝国兵だぞっ?!殿下の御命を最優先…っ!」
「私は将軍に御仕えしてるんですっ!ってゆーか、私が将軍好きとか何で知って…っ!」
「それは今いいからっ!俺達は飛べないんだから、将軍の事はどのみち今はアイツに任せるしかないだろっ!」
「あんな帝国の敵にっ?!」
二人の視線が、フラジミルを抱える俺に向けられる。
ーガンッ!ー
飛べない我が身の不甲斐無さからミーナは客席を蹴り上げ、
「ハヤト殿っ!将軍をしっかり頼みますよっ!将軍に何かあったら許しませんからねっ!」
ミーナは一方的に叫ぶと、ヘインズと共に上段のアルミラの元へ駆けて行く。
「女の子に頼まれちゃなぁ…よいしょっ!」
俺はだらりと伸びるフラジミルの巨体を肩に担ぎ直すと、俺は観客が逃げ惑う客席を見回す。
「アルフリーヌ達は大丈夫か?まあ、アイツらが付いてるし心配はないが…」
「水の爪っ!」
『ぎゃああぁぁぁぁっ!!』
一際魔物達が集まっている所、最初にいた皆がいた席の辺りで、断末魔の叫びと共に魔物が大量に飛び散る。
どうやら獣人化したガトフが魔法爪を放っているようだ。
魔物達の隙間を覗くと、アークストルフ父娘とクサムを囲み、ウチのメイド達とガトフが円陣を組んで守っているのが見えた。
「大将ぉっ!大丈夫ですかぁっ!!」
俺の視線に気付いたのか、ケーラが手を振る。
「ああ、ちょっとコイツが重いけど、大丈夫だ!」
「そんな荷物は捨てて、早くこちらへっ!」
「ハ、ハヤト殿っ!早く助けてくれっ!」
「もぉっ、御父様ったら!情けないですわねっ!」
やはり心配の必要はなかったようだ。
「ああ、今行-」
俺はフラフラと皆の方へ向かっていると、
ーブンッ!ー
背後から風切り音がっ!
「くっ!」
なんとか避けた俺の鼻先を、巨大なハンマーが掠めていく。
「イカカカカカッ!想定以上にフラフラじゃなイカ、勇者ハヤトっ!
そっちのデカブツは報告以上の強さだったんじゃなイカ?」
俺の足元、穴の底から笑い声が聞こえる。
とても不快な笑い声だ。
ーぎらっー
大きな二つの目が闇の中に光る。
「第8次魔族第侵攻来だなっ!」
深い穴の奥から、巨大な烏賊の化け物が姿を現した。
「…誰だ、お前?馴れ馴れしいなヤツだなぁ」
「イッ?我を覚えておらんとっ?!なんと無礼なヤツではなイカっ!」
烏賊の被り物をした様な、ふざけた魔族が…憤慨しているようだ。
「第8次魔族第侵攻の際、あれほど激しく戦ったではなイカっ?!」
「すまん、ホントに覚えてないんだが…いや、謝る事じゃなイカ…あ、うつった」
「き、貴様っ!ふざけおるじゃなイカっ!我の名は魔界子爵スクィー…っ」
ーヒュンッ!ー
イカ魔族の頭、三角のヒレを俺の小さな火球が貫く。
「あっ、熱っ!熱いじゃなイカっ!」
「だから、お前みたいな小物魔族いちいち覚えてー」
「ハヤト様っ!後ろですわっ!」
アルフリーヌの声に後ろを見ると、先程鼻先を掠め去った巨大なハンマーが俺目がけて飛んで来る。
『ダメだ、避けきれなーっ』
ーゴンッ!ー
「ぐかっ?!」
フラジミルとの仕合のダメージとコイツの巨体のせいで避け切れなかった!
後頭部に衝撃が走り、目の前が真っ暗になる。
「イカカカカカカカッ!油断したんじゃなイカ、勇者ハヤトっ!」
イカ魔族の不快な笑い声が響く。
「ハヤト様っ?!」
「大将ぉっ!!」
遠のく意識の中、シンム達の呼ぶ声をわずかに聞きながら、俺はフラジミルもろもと大穴へ落ちて行ったー。
つづく
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