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私を水の都へ連れてって
水の都ミュール その1
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夕日に照らされた城壁が近くなり、
大きな城門、家路を急ぐ街の人々、
それをチェックする衛士の姿が見え始めた。
「では、私が手続きしてきますね。」
「ああ、頼んだ。」
先導してくれていたエイクが衛士の方へ駆けていく。
その後ろ姿をぼんやり眺めー。
「あっ!」
俺はある事をすっかり忘れていたっ!
「スエンっ!急いで馬車を戻せっ!」
俺は御者台に乗り出し、スエン怒鳴る。
「ぅえぇっ?!馬車はそんな急に転回できませんよぉ~っ!」
「くそっ!ハメられたっ!」
「ちょっ、高御座君っ、どうしたのっ?」
「どうしたもこうしたもっー。」
取り乱す俺を見て、座席の道祖も慌てる。
「これ、お忍び旅だろ?
領主の娘の先導で入城って、忍んでないじゃないか。」
神前がさらりと言ってのける。
「お、お前っ!気付いてたのかっ?!」
神前に詰め寄る俺に、
「むしろ気付いてなかったのか?
お前、アホなのか?」
「~~~~~っ!!!」
「あの~。」
俺が自分のアホさ加減に憤慨している間に、
馬車の側に衛士が駆け寄っていた。
「なんでしょうかぁ~?」
「はいっ、エイクお嬢様に代わり、
ここからは我々が御屋敷まで先導いたします!」
「それはそれはぁ、ありがとうございますぅ~…。」
スエンは衛士に礼を言いながら、座席にうずくまる俺に視線を向ける。
その目は衛士の先導を受けるか訊いているようだ。
俺は黙って頷き、衛士の先導を受け入れる。
「ではっ!」
そう言うと衛士は馬車の前に進むが、
何か思い出したのか立ち止まり、こちらを振り向き、
「ようこそ、水の都ミュールへっ!」
「…はは、よろしく頼む。」
屈託のない衛士の笑顔に、俺は力なく笑うしかなかった。
ああ、絶対マイヤーに怒られる…。
つづく
大きな城門、家路を急ぐ街の人々、
それをチェックする衛士の姿が見え始めた。
「では、私が手続きしてきますね。」
「ああ、頼んだ。」
先導してくれていたエイクが衛士の方へ駆けていく。
その後ろ姿をぼんやり眺めー。
「あっ!」
俺はある事をすっかり忘れていたっ!
「スエンっ!急いで馬車を戻せっ!」
俺は御者台に乗り出し、スエン怒鳴る。
「ぅえぇっ?!馬車はそんな急に転回できませんよぉ~っ!」
「くそっ!ハメられたっ!」
「ちょっ、高御座君っ、どうしたのっ?」
「どうしたもこうしたもっー。」
取り乱す俺を見て、座席の道祖も慌てる。
「これ、お忍び旅だろ?
領主の娘の先導で入城って、忍んでないじゃないか。」
神前がさらりと言ってのける。
「お、お前っ!気付いてたのかっ?!」
神前に詰め寄る俺に、
「むしろ気付いてなかったのか?
お前、アホなのか?」
「~~~~~っ!!!」
「あの~。」
俺が自分のアホさ加減に憤慨している間に、
馬車の側に衛士が駆け寄っていた。
「なんでしょうかぁ~?」
「はいっ、エイクお嬢様に代わり、
ここからは我々が御屋敷まで先導いたします!」
「それはそれはぁ、ありがとうございますぅ~…。」
スエンは衛士に礼を言いながら、座席にうずくまる俺に視線を向ける。
その目は衛士の先導を受けるか訊いているようだ。
俺は黙って頷き、衛士の先導を受け入れる。
「ではっ!」
そう言うと衛士は馬車の前に進むが、
何か思い出したのか立ち止まり、こちらを振り向き、
「ようこそ、水の都ミュールへっ!」
「…はは、よろしく頼む。」
屈託のない衛士の笑顔に、俺は力なく笑うしかなかった。
ああ、絶対マイヤーに怒られる…。
つづく
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