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私を水の都へ連れてって
旅行は向かってる時が一番楽しい その6
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裏道的な森の旧道を進むこと3日。
馬車は大きな河のほとりに出る。
「おっきい河っ!」
「すごいな…。向こう岸が見えないぞ…。」
道祖と神前が目を丸くする。
「これが名高いウール河か…。
この河はミュールまで続いているらしい。
ここから川沿いに下ると、
今日の夕方にはミュールに着くハズだ。」
俺の視線は川上から川下に、
川の流れのように流れ、
彼方にうっすら見える大聖堂の尖塔に流れ着く。
「夕方…。」
少し道祖が思いつめた顔をしているような?
「どうした、道祖?」
「ううん、何でもないのっ。」
道祖は首を振って否定するが、
何もない顔ではないと思うが、
無理に聞き出すのもなぁ…。
日本でもお目にかかれない絶景に、
せっかくなので俺達は馬車から降りて大河を眺める。
余裕ぶって道祖達に説明していたが、
俺も実物を見るのは初めてだ。
「これ程の大河とは…。」
あまりの雄大さに呆けている俺の横で、
「こんな見晴らしのいい所、進んでいいの?」
道祖が辺りを見渡し、心配そうにしている。
確かに、森から出たため俺達を隠すものは何もない。
が、
「普通はここから少し川上にある船着き場から、
船でミュールまで行くんですよ。」
カシネが指差す方を見ると、
沖に大きな船が浮かんでいる。
普通の旅行客などは、あの船を使うのか。
「なるほど、ココを通る方が目立たないのか。」
「そぉゆーコトですぅ~。」
「ところで、そろそろ昼食にしてはどうだろうか?」
神前がなぜかソワソワしている。
眼前に広がる雄大な大河に、
川面を吹き抜ける涼しく心地よい風。
確かに、ここでの食事は素晴らしそうだ。
「そうだな、この景色を見ながら昼食にするか。」
俺は神前の提案に乗る。
「よしっ!そうと決まれば、早速私と飛鳥で用意しようっ!
なっ!飛鳥っ!」
「えっ?!…うんっ!そうだね、やろうっ!」
一瞬躊躇った道祖も、すぐにやる気になる。
そうか、さっき思いつめた顔をしていたのはコレか。
今日の夕方にはミュールに着くから、
自炊での食事は、この昼食が最後だ。
先日の夕食があまり上手に出来なかったのを悔やんでいた道祖は、
リベンジを狙っていたのだろう。
あれ以来料理を作ることはなかったが、
代わりにずっとスエンが食事の用意をするのを見ていた。
恐らく、料理の手際のコツを学習していたのだ。
本当に負けず嫌いなんだなぁ。
…神前は何であんなにやる気なんだ?
皆が美味いと褒めたからか?
お世辞だったとまでは言わないが…褒められて伸びるタイプなんだろうか?
どっちかと言うと、おだてられて木に登るタイプか??
「?あれ?」
「どうした、カシネ?」
「いや、あれ…。」
何かを見つけたカシネ、
その彼女が不思議そうな顔で指差す方に、
俺は目を凝らす。
「馬…人か?」
それがどうした?
この川沿いの旧道は人通りが少ないとは言え、
ゼロって事はないだろう。
何をそんなに不思議そうに、とカシネを見ると、
「あの人、手を振ってますよ?」
「何っ?」
俺は再度人影に目を凝らす。
土埃を上げながら近づいてくる馬上の人影は、
確かに手を振っているような…。
「あ。」
遂に顔が見えるまで近づいたその人物は、
目的地ミュールの御令嬢、エイクだった。
つづく
馬車は大きな河のほとりに出る。
「おっきい河っ!」
「すごいな…。向こう岸が見えないぞ…。」
道祖と神前が目を丸くする。
「これが名高いウール河か…。
この河はミュールまで続いているらしい。
ここから川沿いに下ると、
今日の夕方にはミュールに着くハズだ。」
俺の視線は川上から川下に、
川の流れのように流れ、
彼方にうっすら見える大聖堂の尖塔に流れ着く。
「夕方…。」
少し道祖が思いつめた顔をしているような?
「どうした、道祖?」
「ううん、何でもないのっ。」
道祖は首を振って否定するが、
何もない顔ではないと思うが、
無理に聞き出すのもなぁ…。
日本でもお目にかかれない絶景に、
せっかくなので俺達は馬車から降りて大河を眺める。
余裕ぶって道祖達に説明していたが、
俺も実物を見るのは初めてだ。
「これ程の大河とは…。」
あまりの雄大さに呆けている俺の横で、
「こんな見晴らしのいい所、進んでいいの?」
道祖が辺りを見渡し、心配そうにしている。
確かに、森から出たため俺達を隠すものは何もない。
が、
「普通はここから少し川上にある船着き場から、
船でミュールまで行くんですよ。」
カシネが指差す方を見ると、
沖に大きな船が浮かんでいる。
普通の旅行客などは、あの船を使うのか。
「なるほど、ココを通る方が目立たないのか。」
「そぉゆーコトですぅ~。」
「ところで、そろそろ昼食にしてはどうだろうか?」
神前がなぜかソワソワしている。
眼前に広がる雄大な大河に、
川面を吹き抜ける涼しく心地よい風。
確かに、ここでの食事は素晴らしそうだ。
「そうだな、この景色を見ながら昼食にするか。」
俺は神前の提案に乗る。
「よしっ!そうと決まれば、早速私と飛鳥で用意しようっ!
なっ!飛鳥っ!」
「えっ?!…うんっ!そうだね、やろうっ!」
一瞬躊躇った道祖も、すぐにやる気になる。
そうか、さっき思いつめた顔をしていたのはコレか。
今日の夕方にはミュールに着くから、
自炊での食事は、この昼食が最後だ。
先日の夕食があまり上手に出来なかったのを悔やんでいた道祖は、
リベンジを狙っていたのだろう。
あれ以来料理を作ることはなかったが、
代わりにずっとスエンが食事の用意をするのを見ていた。
恐らく、料理の手際のコツを学習していたのだ。
本当に負けず嫌いなんだなぁ。
…神前は何であんなにやる気なんだ?
皆が美味いと褒めたからか?
お世辞だったとまでは言わないが…褒められて伸びるタイプなんだろうか?
どっちかと言うと、おだてられて木に登るタイプか??
「?あれ?」
「どうした、カシネ?」
「いや、あれ…。」
何かを見つけたカシネ、
その彼女が不思議そうな顔で指差す方に、
俺は目を凝らす。
「馬…人か?」
それがどうした?
この川沿いの旧道は人通りが少ないとは言え、
ゼロって事はないだろう。
何をそんなに不思議そうに、とカシネを見ると、
「あの人、手を振ってますよ?」
「何っ?」
俺は再度人影に目を凝らす。
土埃を上げながら近づいてくる馬上の人影は、
確かに手を振っているような…。
「あ。」
遂に顔が見えるまで近づいたその人物は、
目的地ミュールの御令嬢、エイクだった。
つづく
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