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アルフラーデ王国連合と異世界勇者

現状確認する話 その1

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部屋に戻った俺たちは、ソファに腰掛ける。
昨夜の情事で汚れた床やソファは、
チェーレの水魔法と俺の風魔法でキレイに掃除済みだ。
そのチェーレはお茶の用意をしてくれる。

「さて、どこから説明しましょうか?」
「いや、まずは自己紹介をさせてくれ。
クサム殿にも、俺の家来を紹介したい。」
俺はクサムを遮り、この国が召喚した勇者の少女、
[ガトフ]に向かって自己紹介を始める。

「さっき少し話したが…俺の名前はハヤト。
隣のオスル王国で日本から召喚された勇者だ。
貴女を鍛えるのようこの国に要請されて来た。
そして…。」
「ボクはカシネwハヤト様の領地で警備を担当しています。
クサムさん、ガトフさん、よろしくお願いしますねw」
立ち上がってペコリと頭を下げる。

「そして…。」
「ハヤト様の家臣、チェーレと申します。
よろしくお願いいたします。」
お茶の入れる手を止め、深々と頭を下げる。

「では…。」
コホン、と咳払いしクサムが立ち上がり、
「改めまして、私クサムと申します。
この国の外務副大臣を務めております。
そしてこちらが、我が国が召喚し、
異世界よりお越しいただいた[ガトフ殿]です。」

お越しいただいた…この一言が出るだけで、
この男への評価が上がる。
そうだ、俺も、このガトフも、好きで来たわけじゃない。
有無を言わさず連れてこられたんだから。

「さ、ガトフ様。」
「は、はい。」
クサムに促され、ガトフが立ち上がる。
「わ、私は、一月前にマーラスから召喚されました、ガトフです。
み、皆さん、よろしくお願いします。」

「ちなみにガトフ様、こちらのハヤト様はオスル王から公爵の爵位を。」
「爵位をっ?!」
「あぁ、公爵として領地を経営し、家臣団も持っている。
異世界人でも、戦果を上げればちゃんと評価される世界だよ。
だから、安心して強くなろう、な?」
驚くガトフに、俺は優しく語りかける。
「は、はい!お願いします!」
今までで一番大きな声が聞けて、俺は少し安心する。

「いくつか聞きたいんだが、いいか?」
「はい。」
「君は『マーラスから召喚された』と言ったが、
俺はマーラスなんて国は知らないんだが、どこにある国だ?
もしくは、どこかの都市なのか?」
俺はガトフがどこから召喚されたのか気になっていた。
ガトフ、という名前もあまり馴染みがない。
もしかして…。

「マーラスはクスタ大陸にある国なんですが、
小さく貧しい国なのでご存知ないのかも…。」
「うん、クスタ大陸も知らないな。
はい、俺の世界以外からの召喚でした~。」
「え?ハヤト様の世界からじゃないんですかっ?!」
「ああ。俺の世界にクスタ大陸なんて大陸は無い。
もしかしたらと思っていたが、やはり他にも世界があるんだな。
並行宇宙で派生した世界線とかなのか?
すごいな、パラレルワールドは本当にあったのか…。」

俺がブツブツと独り言を言いながら考え込んでいると、
「あの、ハヤト様。ご思案中の所すいませんが、
王国内の説明をさせていただいても?」
申し訳なさそうに断るクサムに、俺は我に返る。
「あ、ああ!悪い!よろしく頼むよ。」
「では。」
クサムは部屋の壁に掛けられたアルフラーデ王国連合の地図の前に立ち、
説明を始める。

「ハヤト様の一番の疑問かと思います、
モータル王様の事ですが…。
これはオスル王国へは報告無用でお願いします。」
クサムの声のトーンが低くなり、深刻そうな顔になる。
少し圧倒された俺たちの間にしばらくの沈黙が流れ…、
「…ああ、わかった。」
俺の返事を聞いてから、クサムは声を潜めて話し出す。
「実は、モータル王様は現在療養中です。」
「!あの頑丈そうな男が療養中?!」
「はい。しかも原因が不明でして。
医師も神官の回復、治癒魔法も効果がなく…。」
「俺が診て…。」
「世界有数の魔法使いでもある、
ハヤト様に診ていただけるのはありがたいのですが、
伝染性の病の可能性もありますので…。
病を恐れて家臣でもあまり病床へは近づきません。」
「そうか…。」
「アルフラーデ王国連合で我が国が盟主足り得るのは、
経済力だけでなく、モータル王のカリスマ性に依る所が大きいのです。」
「…国王が療養中と知れると、どこかの国が動き出す…のか?」
「はい、恐らくは。そのため、この事を知っているのは宮殿内の者のみ、
宮殿への出入りも最小限にしております。」
随分ときな臭い話だ。
西のフーレ王国が復権を狙って動き出す、という事だろうか。

「秘密を守るため、今は王宮への訪問は全ての国から断っております。
そのため、ハヤト様を国賓としてお迎えできませんでした。申し訳ありません。」
そう言うと、クサムは深々と頭を下げる。
「いやいや、頭を上げてくれ。
俺はてっきり、市民に嫌われているからかと…。」
「我らがそんな、薄情な人間に見えますか?
確かに侵攻戦直後はオスル王国やハヤト様への批判や怨嗟の声もありましたが、
モータル王が貴殿を労われた頃から、そのような声は聞こえなくなりましたよ。
今では貴殿は、我が国を救った英雄です。」
「そうか…。」
本当に、モータル王には頭が上がらない。
あの戦いの後、壊れかけた俺の心を救ってくれただけじゃなかったのか…。
俺はこの恩に、あの人に報いたい!

「このような重要機密が他国に漏れる可能性もあるのに、
それでも俺を呼んだのは…現れたという魔王のせいだな?」
そう、俺はこのモータル王国に現れたと言う魔王の調査も、
女王から依頼されている。
「はい。秘密を守るため他国に兵を要請することも出来ませんので、
自国の軍の強化が急務です。
そのため、勇者ガトフ殿にも強くなっていただこう、と。」
「で、俺に鍛えて欲しい、と。」
俺はガトフを見る。
華奢な体躯に過剰な期待、少しかわいそうになる。
ガトフも自分への期待の大きさを再認識させられ、
小さな体をさらに小さくしている。
俯いた少女の膝は、震えて見える。

「如何でしょうか、ハヤト様。
我らにご助力いただけ…。」
「もちろんだ!」
食い気味に応えた俺に、クサムがたじろぐ。

「モータル王は俺の恩人!
その恩人の国がピンチなんだ、当然だろうっ!!」
俺は立ち上がり、拳を振り上げ叫ぶ。
あ、俺、なんか熱血主人公みたい。

急に恥ずかしくなった俺に、
ーパチパチパチー
「さすがハヤト様っw」
「素敵です♡」
カシネとチェーリが拍手する。
やめて、恥ずかしいっ///


つづく
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