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ダンジョン攻略と4人の新人騎士
楽しいダンジョン攻略 その3
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「そろそろ、最深階層だな…。」
俺は深度計を見ながら呟く。
ついに我々は、
ダンジョンに潜って10日、やっと最深部に到達したようだ。
出来てスグのダンジョン攻略にしては時間がかかったのは、
4人のお守りがあったからだろう。
俺は後ろを振り向き、4人の新人騎士を見る。
この10日で随分顔つきが変わり、
皆、騎士の、戦士の顔になった。と思う。
「何ですか?私たちの顔に何か付いてますか?」
サスティが聞いてくる。
「私たちの成長に、驚いておられるのでしょう。」
馬鹿デカイ盾を担いだアルフリーヌがエヘン、と無い胸を張る。
「本当ですか、ハヤト様っ?!」
ミラが身を乗り出し、鼻息荒く聞いてくる。
「ふふ、そうだと嬉しいです!」
エイクが明るく笑う。
サスティはバフの効果時間もしっかり管理出来るようになり、
効果が切れた瞬間に掛け直す事が出来るようになった。
最初の頃のように、無駄なバフの多重掛けが無くなった。
アルフリーヌは腕力が上がり、あの馬鹿デカイ大楯を持っても、
パーティのタンクとしてヘイトを買って攻撃を受け切れるようになった。
もちろん、隊列から遅れる事もなくなった。
ミラは大胆なだけでなく、状況を冷静に見られるようになった。
レベルが上がったことで攻撃力も上がり、頼れるアタッカーになった。
当然だが、サスティのバフもしっかり受けてから戦闘に参加している。
エイクは物理アタッカーと思っていたが、
水魔法や回復魔法が得意いうことで、
ミラと一緒に前衛に出たり、サスティの補助に回ったりと、
パーティとして非常に助かっている。
探究心と向上心が高く、よくダンジョンや魔法の知識を聞きにくるので、
パーティの頭脳としても急成長している。
しかし…。
この4人のレベルの上がり具合もさることながら、
勇者として、先達として、
敬意を払ってもらえるようになった事が、
何より本当に感慨深い。
ダンジョンに潜った頃は、このままどうなる事かと思ったが、
何とか4人ともに、避けられない程度には信頼関係が築けたようだ。
「ところでハヤト様。」
「何だ?」
「どうして、ここが最深部だとお分かりになるのです?」
ミラが不思議そうに尋ねる。
「それは…。」
俺が説明しようとすると、
「それはですね!」
エイクが目を輝かせ、会話に割り込んだ。
「ミラ様は、そもそもダンジョンがどのような物かご存知ですか?」
「えー、私たちの世界と魔界を繋ぐトンネル…。」
「その通り、ダンジョンとは、魔界と世界を繋ぐ多階層のトンネルです。
で、その魔界はどこにあるかと言うと、地下にある。
俺たちの感覚で言うと、魔族は地底人のようなものです。」
エイクが得意そうに、俺が教えたことをエイクに説明している。
エイクは本当に知識欲が豊富だった。
攻略当初は離れた所からこちらを見ているだけだったが、
いつからか積極的に質問に訪れ、
質問攻めで寝不足になった日もあった。
「魔界の天井から地上までの距離は…」
エイクの説明は続く。
「魔界の天井から地上までの距離は大体同じ…、
高い山の上のダンジョンなど例外はありますが、
深度計で地上からどれ位潜ったかが分かれば、
ダンジョンの残りの階層が大体分かる、ということです。」
「で、地上から魔界の天井までの距離がほぼ〝0m〟になったので、
ココが最深部ってことだ。」
俺は目盛が0になった深度計をミラに見せながら、
エイクの説明を引き取る。
「エイクは本当に、色々詳しくなったなぁ。」
俺は無意識にエイクの頭を撫でる。
「ダンジョンの知識だけでなく、回復や補助呪文まで…。」
「ほわあぁぁぁ////」
「ど、どうした?!あ!すまん、ついクセで!不躾だったな、悪かった!」
耳まで真っ赤にしたエイクが奇声を発している。
頭を撫でるなんて、貴族のご令嬢に不躾な事をしてしまった。
俺は慌てて手を離すと、すぐに謝った。
「いっ!いえ!私こそおかしな声を出してしまって、すいません!」
エイクは頭をペコペコ下げながら、向こうへ走って行ってしまった。
「…悪いコトしたなぁ…。」
遠ざかるエイクを見ながら独言ていると、
「んっ!」
アルフリーヌが綺麗なふわふわ縦ロールの金髪頭を突き出してくる。
「な、何だよ?」
彼女の意図がわからない俺はたじろぐ。
「んっ!!」
アルフリーヌがさらに頭を近づける。
何だよ、頭突きか?
「あのぉー。」
困惑する俺の後ろからサスティが、
「ご自分の頭も撫でろ…というコトでは?」
なるほど…。
「アークストルフ嬢も小さな体で、
立派にタンクをこなしてるな。」
アルフリーヌのふわふわの金髪を撫でる。
「ぅふぅぅ///」
頭を撫でられ嬉しそうなアルフリーヌを見ていたミラが、
「あの~…私はいかがです?」
頭を差し出しながら、上目遣いで聞いてくる。
「……ダルトウル嬢も、アタッカーとして成長してるよ。
最初は猪武者かと思ったけどね。」
そう言うと、ミラの頭も撫でてやる。
「くふふ、ありがとうございます///」
ミラにも満足いただいたようだ。
「では。」
サスティが改まって頭を差し出す。
「?なんだ?」
「いえ、そう言う流れかな?と。」
「わかったよ。」
俺がサスティの頭を撫でてやると、
「あれ?私は褒めていただけませんの?」
「んー、アスモント嬢、貴女には感謝している。」
「え?」
「最初に話しかけてくれたのは、貴女だった。
…本当に嬉しかったよ。」
「…サスティです。」
「ん?」
「いい加減、サスティとお呼びください!」
「で、では、サスティ嬢…。」
「サ・ス・ティ・です。」
「…サスティ、ありがとう。」
「ふふふふ。」
サスティにも満足いただけたようだ。
「で、では!私もミラとっ!」
「わ、私も!アルフリーヌとお呼びいただいて結構ですわっ!」
ミラとアルフリーヌに続き、
「私もエイクでお願いしまーす!」
向こうの岩陰からエイクの声がする。早く戻っておいでよ。
「ふー。」
俺はため息をひとつつき、
「…すごくリア充っぽい。」
目を細めて呟いた。
つづく
俺は深度計を見ながら呟く。
ついに我々は、
ダンジョンに潜って10日、やっと最深部に到達したようだ。
出来てスグのダンジョン攻略にしては時間がかかったのは、
4人のお守りがあったからだろう。
俺は後ろを振り向き、4人の新人騎士を見る。
この10日で随分顔つきが変わり、
皆、騎士の、戦士の顔になった。と思う。
「何ですか?私たちの顔に何か付いてますか?」
サスティが聞いてくる。
「私たちの成長に、驚いておられるのでしょう。」
馬鹿デカイ盾を担いだアルフリーヌがエヘン、と無い胸を張る。
「本当ですか、ハヤト様っ?!」
ミラが身を乗り出し、鼻息荒く聞いてくる。
「ふふ、そうだと嬉しいです!」
エイクが明るく笑う。
サスティはバフの効果時間もしっかり管理出来るようになり、
効果が切れた瞬間に掛け直す事が出来るようになった。
最初の頃のように、無駄なバフの多重掛けが無くなった。
アルフリーヌは腕力が上がり、あの馬鹿デカイ大楯を持っても、
パーティのタンクとしてヘイトを買って攻撃を受け切れるようになった。
もちろん、隊列から遅れる事もなくなった。
ミラは大胆なだけでなく、状況を冷静に見られるようになった。
レベルが上がったことで攻撃力も上がり、頼れるアタッカーになった。
当然だが、サスティのバフもしっかり受けてから戦闘に参加している。
エイクは物理アタッカーと思っていたが、
水魔法や回復魔法が得意いうことで、
ミラと一緒に前衛に出たり、サスティの補助に回ったりと、
パーティとして非常に助かっている。
探究心と向上心が高く、よくダンジョンや魔法の知識を聞きにくるので、
パーティの頭脳としても急成長している。
しかし…。
この4人のレベルの上がり具合もさることながら、
勇者として、先達として、
敬意を払ってもらえるようになった事が、
何より本当に感慨深い。
ダンジョンに潜った頃は、このままどうなる事かと思ったが、
何とか4人ともに、避けられない程度には信頼関係が築けたようだ。
「ところでハヤト様。」
「何だ?」
「どうして、ここが最深部だとお分かりになるのです?」
ミラが不思議そうに尋ねる。
「それは…。」
俺が説明しようとすると、
「それはですね!」
エイクが目を輝かせ、会話に割り込んだ。
「ミラ様は、そもそもダンジョンがどのような物かご存知ですか?」
「えー、私たちの世界と魔界を繋ぐトンネル…。」
「その通り、ダンジョンとは、魔界と世界を繋ぐ多階層のトンネルです。
で、その魔界はどこにあるかと言うと、地下にある。
俺たちの感覚で言うと、魔族は地底人のようなものです。」
エイクが得意そうに、俺が教えたことをエイクに説明している。
エイクは本当に知識欲が豊富だった。
攻略当初は離れた所からこちらを見ているだけだったが、
いつからか積極的に質問に訪れ、
質問攻めで寝不足になった日もあった。
「魔界の天井から地上までの距離は…」
エイクの説明は続く。
「魔界の天井から地上までの距離は大体同じ…、
高い山の上のダンジョンなど例外はありますが、
深度計で地上からどれ位潜ったかが分かれば、
ダンジョンの残りの階層が大体分かる、ということです。」
「で、地上から魔界の天井までの距離がほぼ〝0m〟になったので、
ココが最深部ってことだ。」
俺は目盛が0になった深度計をミラに見せながら、
エイクの説明を引き取る。
「エイクは本当に、色々詳しくなったなぁ。」
俺は無意識にエイクの頭を撫でる。
「ダンジョンの知識だけでなく、回復や補助呪文まで…。」
「ほわあぁぁぁ////」
「ど、どうした?!あ!すまん、ついクセで!不躾だったな、悪かった!」
耳まで真っ赤にしたエイクが奇声を発している。
頭を撫でるなんて、貴族のご令嬢に不躾な事をしてしまった。
俺は慌てて手を離すと、すぐに謝った。
「いっ!いえ!私こそおかしな声を出してしまって、すいません!」
エイクは頭をペコペコ下げながら、向こうへ走って行ってしまった。
「…悪いコトしたなぁ…。」
遠ざかるエイクを見ながら独言ていると、
「んっ!」
アルフリーヌが綺麗なふわふわ縦ロールの金髪頭を突き出してくる。
「な、何だよ?」
彼女の意図がわからない俺はたじろぐ。
「んっ!!」
アルフリーヌがさらに頭を近づける。
何だよ、頭突きか?
「あのぉー。」
困惑する俺の後ろからサスティが、
「ご自分の頭も撫でろ…というコトでは?」
なるほど…。
「アークストルフ嬢も小さな体で、
立派にタンクをこなしてるな。」
アルフリーヌのふわふわの金髪を撫でる。
「ぅふぅぅ///」
頭を撫でられ嬉しそうなアルフリーヌを見ていたミラが、
「あの~…私はいかがです?」
頭を差し出しながら、上目遣いで聞いてくる。
「……ダルトウル嬢も、アタッカーとして成長してるよ。
最初は猪武者かと思ったけどね。」
そう言うと、ミラの頭も撫でてやる。
「くふふ、ありがとうございます///」
ミラにも満足いただいたようだ。
「では。」
サスティが改まって頭を差し出す。
「?なんだ?」
「いえ、そう言う流れかな?と。」
「わかったよ。」
俺がサスティの頭を撫でてやると、
「あれ?私は褒めていただけませんの?」
「んー、アスモント嬢、貴女には感謝している。」
「え?」
「最初に話しかけてくれたのは、貴女だった。
…本当に嬉しかったよ。」
「…サスティです。」
「ん?」
「いい加減、サスティとお呼びください!」
「で、では、サスティ嬢…。」
「サ・ス・ティ・です。」
「…サスティ、ありがとう。」
「ふふふふ。」
サスティにも満足いただけたようだ。
「で、では!私もミラとっ!」
「わ、私も!アルフリーヌとお呼びいただいて結構ですわっ!」
ミラとアルフリーヌに続き、
「私もエイクでお願いしまーす!」
向こうの岩陰からエイクの声がする。早く戻っておいでよ。
「ふー。」
俺はため息をひとつつき、
「…すごくリア充っぽい。」
目を細めて呟いた。
つづく
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