転封貴族と9人の嫁〜辺境に封じられた伯爵子息は、辺境から王都を狙う〜

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第五章 聖龍王国の御姫様

その3 思いがけない同行者 1

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「う~ん…。」
船の一室、ベッドに横たわる少女をレインズは見下ろし、
腕組みして唸る。

「おい、お前が見つけたんだったな?」
「はいっ、領主様。
俺が海面を監視していた所、この少女が木片にしがみ付いて浮いてました。」
レインズの問いかけに、少女を発見した兎人族の乗組員が一歩前に出る。

「漂流者か…他にナニかなかったか?」
「それが、この子が誰かわかるような物は何もなく…。
ただ、この子が掴まっていた木片やらに混ざって、この帝国の国旗も流れてました。」
「帝国国旗…。」

レインズは乗組員から国旗を受け取り、裏表確認し手がかりを探すが、
特に何か書かれているワケではなかった。
「それと、今は脱がしてますが、中々上等な寝間着を着てました。」
「じゃあ、この子は乗ってた帝国の船が事故にあって流されてた金持ちの娘…ってトコか?」
「そう考えるのが妥当かと…。」

「う~ん…。」
レインズは再び腕を組み、少女を見ながら唸る。
年齢は10歳位、色白金髪の少女だ。
長いまつ毛に少し低い鼻筋、ふっくらした頬と小さな唇が可愛らしい。
後数年もすれば、男を惑わす立派なレディに…。

レインズが少女に見入っていると、
「御前様はこーゆー少女が好きなのか…。」
さそがしアクサナはドストライクだろうな。」
横にいたセレーテが能面の様な顔でレインズを見ている。
「…どうりで私には目も向けてくださらないんですね…。」
アレクシィは涙目で自分の大きな二つの果実を押さえつけている。

「いやいや、そんなんじゃないから!こんな子供をそんな目で見ないから!」
レインズは慌てて否定するが、
「その慌てっぷりが余計に怪しいな…。」
「アクサナ様、この脂肪の塊、もいでくださいっ。」
「こ、怖いことゆーなよっ、もったいない!」

「…お主ら静かにせんか。娘が起きてしまうぞ。」
「はい、すいません。」
アクサナに睨まれ、三人は縮こまる。

「でも実際、起きてもらって事情を聴くのが一番早いかと…。」
「いやいや、こんな子供を無理に起こすのは可哀想だろ。
目を覚ますまで誰か付いててやれ。起きたら連絡しろ。」
「え?は、はぁ…。」
レインズが乗組員に命令するが、乗組員の返事は歯切れが悪い。

「なんだ、不服か?」
レインズは乗組員の返事に少し苛立つ。
「私が付いてましょう。」
そう言うと、アレクシィがベッド脇の椅子に腰掛ける。
「あ。」
そうだ、忘れていた。
この船の乗組員は皆獣隷王国から連れて来た革命軍の獣人達ばかりだ。
少女が目を覚ました時側に獣人がいれば、少女はパニックになるだろう…。
『俺自身は当然として、アレクシィも普通に獣人と接してたから…。』
自分の配慮の至らなさにレインズは頭を掻きながら、
事後をアレクシィに頼んで船室を出た。

レインズ達は各々の部屋に向かいながら、あの少女の処遇を話し合う。
「どうするんじゃ、あの娘?」
「どうもこうも…海に投げ捨てるワケにはいかないんだ。乗せていくしかないだろう。」
「聖龍王国までか?それはまた…。」
「帝国の港町ででも保護してもらうかえ?」
「帝国軍に臨検されるのは嫌だな。それに、帝国の子と決まったワケでもない。」
「まあ、まずはどこから来たかの確認からじゃな。
ふあぁぁ~~あ。夜中に起こされたからのぉ。
ほれ、あの娘が起きるまでワシらももうひと眠りじゃ。」
「ああ、そうだな。」
「ほれ、主様はコッチじゃ♡」
「ん?ああ。」
アクサナに腕を掴まれ、レインズはアクサナの部屋へ誘導される。

「いやいや待て待てっ!アクサナっ!今日はオレの日だろっ!」
「ふふふ、そうだったかの?」
「そうだったかの、じゃないよ!何しれっと連れてってんだよ!」
「そうじゃったのぉ。いや、寝ぼけてついうっかり。すまんの、セレーテ。」
「まったく、油断も隙もないなっ!
御前様も御前様だよっ!さっきまであんなに、その、かっ、可愛がってくれてたじゃないかっ!」
「ははは、そうだったそうだった。
う~ん、それじゃあどうだろう、ここはみんな仲良く三人で、とか。」
「んなっ?!三人っ?!」
レインズの提案にセレーテは顔を真っ赤にして狼狽える。

「ア、アクサナっ!御前様がお、おかしな事言い出したぞ!
なんか言ってやってくれ!」
「ん?ワシは問題ないがの?其方とも仲良ぅ出来て一石二鳥じゃ。」
「お、お前までおかしな事言うなっ!」
「おかしくはないだろ、俺達は夫婦なんだからっ。」
「え?あ、え?そうか、夫婦か…そうだな…ん?んぅんっ??」
レインズのもっともらしい物言いに、セレーテは流されそうになる。

「よし、じゃあ二人ともワシの部屋へ…っ。」
「え?ちょ、ちょっと待てって!」
「あ、皆様ココにおられましたかっ!」
アクサナの部屋へセレーテを押し込もうレインズ達に、
乗組員の男が駆け寄って来る。

「どうした、あの子が目を覚ましたのか?」
「はい。アレクシィさんの指示で皆さんを呼びに。」
「そうか、それはご苦労。で、どこの誰かは?」
「それが…。」
乗組員の男は困った顔で口ごもったー。

つづく
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