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第四章 アクサナの里帰り
その11
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「けほっ、けほっ。」
ダンジョン内を大量に舞う砂埃に、セレーテが咳き込む。
ダンジョン内に響いていた、岩と岩がぶつかる轟音は消えたが、
未だ砂埃はもうもうと舞い続けている。
大量の砂埃に視界が遮られ、セレーテはレインズの姿を見ることが出来ないでいた。
レインズの姿が見えない事で、不安はさらに大きくなる。
『人族が一人がゴーレムに勝てるワケがないんだっ!
あまりに自信満々だったから、もしかしたら…なんて思ったけど、
ムリに決まってたんだ!
くそっ、まだまともに動けなかったなんて言い訳だ!
ああ、目の前でレインズをみすみす行かせてしまうなんてっ!
アクサナ達に顔向けできない…。
よし、今からでも助成に行くそっ!』
セレーテは覚束ない足取りで、レインズが戦っていた方へ進む。
「レインズっ!今…行くぞ…っ。」
体調は万全ではないが、それどころじゃない!
ーぐらっー
セレーテの視界が揺らぐ。
無理もない、彼女はまだこの辺りの魔力濃度に慣れ切っていないのだから。
レインズを助けるどころか、近づく事すら出来ない。
「あっ!」
セレーテの脚はもたつき、石につまづく。
「おっと、危ない。」
倒れるセレーテを、逞しい腕が抱き止めた。
「大丈夫か、セレーテ?」
それは、レインズの声だった。
「レインズっ!レインズ…。良かった…。」
「あ!おい!セレーテ!しっかりしろっ!」
セレーテはレインズの腕を抱きしめたが、
彼の無事に張り詰めていた神経が一気に緩んだのだろう。
気を失ってしまった。
徐々に薄れゆく意識の中、彼女はレインズの肩越しに、
いくつかに砕けた岩、巨大な岩の魔物の残骸が見えたー。
「レインズっ!」
セレーテは自分の大声で目を覚ます。
レインズがゴーレムに叩き潰される夢を見たのだ。
「嫌な夢だ…。」
セレーテは頭を振って、悪夢を振り払おうとする。
自分は気絶していたようだが、最後の記憶、
倒れる自分をレインズに抱き止められた…のは、
遠のく意識が見せた幻だったのか?
セレーテは自分の記憶が不安になる。
「…ここは…テントか?」
辺りを見回し、そこがいつものテントの中だとわかる。
いつものテント、いつもの寝袋、そして…。
「目が覚めたのか、セレーテ。」
いつものレインズの顔が、テントを覗く。
「良かった…。記憶違いでなくて…。」
セレーテはレインズの無事に、胸を撫で下ろす。
「何言ってるんだ?
それより、急に気絶するからびっくりしたぞ。」
「すまない…ほっとしたら気が抜けて…って、
違うっ!心配するのは俺の方だっ!
ケガとかしてないのかっ?!大丈夫かっ?!」
勢いよく上体を起こすセレーテ。
だが、
「あ…。」
急に起き上がった彼女をまた眩暈が襲い、よろめく。
「おっと。」
レインズはよろめくセレーテを素早く支えると、そっと寝かしつける。
「急に起きるからだ。もう少し休め。」
「ああ…ありがとう。
オレ…自分は頑丈だと思ってたんだが…。
御前様と出逢ってから…助けられてばかりだな…情けない…。
これで御前様の役に立ちたいだとか…獣人を独立させたいだとか…恥ずかしいよ。」
「そんな事はない。お前が居てくれて心強いよ。」
「ふふ…ありがとう…。」
レインズはセレーテの頬を撫で、セレーテはその手にそっと手を重ねる。
レインズの言葉はお世辞だとはわかっていたが、それでもセレーテは嬉しかったのだ。
「でも、御前様。
ゴーレムを一人で倒すなんて…。人族初の快挙じゃないか?
アレは数十人の討伐隊を組んで相手する魔物だろう?」
「いや、一人いただろう。」
「他にそんな化け物…ああ、アイツか…。」
「そう、エメルヒス帝国初代皇帝、英雄帝アルゴ・エメルヒス。
メルッツ大陸の南部から魔物を駆逐して、今の帝国を作ったー。
ま、おとぎ話みたいな話だけどな。」
「ゴーレムを一人で倒したってのも、十分におとぎ話レベルだよ。」
「お前だって強くなってるんだ。
ワーウルフ位ならもう、何匹いても怖くないだろう?」
「ああ。それに、オレのペースで進んでても、
御前様の修行にもなってるのがわかって良かった。
よし、少し休んだら先へ進もう。オレももっと強くなるぞ!」
ヤル気満々のセレーテを見て、レインズは少し申し訳なさそうな顔をする。
「どうした、御前様?」
「残念だが、もう少し休んだらダンジョンを出るぞ。」
「えぇっ?!まだダンジョンを半分も攻略出来てないだろうっ?なんで…?」
「さっきアクサナから通信機に連絡があった。」
「アクサナから?」
「ああ、船の改修が終わったそうだ。」
つづく
ダンジョン内を大量に舞う砂埃に、セレーテが咳き込む。
ダンジョン内に響いていた、岩と岩がぶつかる轟音は消えたが、
未だ砂埃はもうもうと舞い続けている。
大量の砂埃に視界が遮られ、セレーテはレインズの姿を見ることが出来ないでいた。
レインズの姿が見えない事で、不安はさらに大きくなる。
『人族が一人がゴーレムに勝てるワケがないんだっ!
あまりに自信満々だったから、もしかしたら…なんて思ったけど、
ムリに決まってたんだ!
くそっ、まだまともに動けなかったなんて言い訳だ!
ああ、目の前でレインズをみすみす行かせてしまうなんてっ!
アクサナ達に顔向けできない…。
よし、今からでも助成に行くそっ!』
セレーテは覚束ない足取りで、レインズが戦っていた方へ進む。
「レインズっ!今…行くぞ…っ。」
体調は万全ではないが、それどころじゃない!
ーぐらっー
セレーテの視界が揺らぐ。
無理もない、彼女はまだこの辺りの魔力濃度に慣れ切っていないのだから。
レインズを助けるどころか、近づく事すら出来ない。
「あっ!」
セレーテの脚はもたつき、石につまづく。
「おっと、危ない。」
倒れるセレーテを、逞しい腕が抱き止めた。
「大丈夫か、セレーテ?」
それは、レインズの声だった。
「レインズっ!レインズ…。良かった…。」
「あ!おい!セレーテ!しっかりしろっ!」
セレーテはレインズの腕を抱きしめたが、
彼の無事に張り詰めていた神経が一気に緩んだのだろう。
気を失ってしまった。
徐々に薄れゆく意識の中、彼女はレインズの肩越しに、
いくつかに砕けた岩、巨大な岩の魔物の残骸が見えたー。
「レインズっ!」
セレーテは自分の大声で目を覚ます。
レインズがゴーレムに叩き潰される夢を見たのだ。
「嫌な夢だ…。」
セレーテは頭を振って、悪夢を振り払おうとする。
自分は気絶していたようだが、最後の記憶、
倒れる自分をレインズに抱き止められた…のは、
遠のく意識が見せた幻だったのか?
セレーテは自分の記憶が不安になる。
「…ここは…テントか?」
辺りを見回し、そこがいつものテントの中だとわかる。
いつものテント、いつもの寝袋、そして…。
「目が覚めたのか、セレーテ。」
いつものレインズの顔が、テントを覗く。
「良かった…。記憶違いでなくて…。」
セレーテはレインズの無事に、胸を撫で下ろす。
「何言ってるんだ?
それより、急に気絶するからびっくりしたぞ。」
「すまない…ほっとしたら気が抜けて…って、
違うっ!心配するのは俺の方だっ!
ケガとかしてないのかっ?!大丈夫かっ?!」
勢いよく上体を起こすセレーテ。
だが、
「あ…。」
急に起き上がった彼女をまた眩暈が襲い、よろめく。
「おっと。」
レインズはよろめくセレーテを素早く支えると、そっと寝かしつける。
「急に起きるからだ。もう少し休め。」
「ああ…ありがとう。
オレ…自分は頑丈だと思ってたんだが…。
御前様と出逢ってから…助けられてばかりだな…情けない…。
これで御前様の役に立ちたいだとか…獣人を独立させたいだとか…恥ずかしいよ。」
「そんな事はない。お前が居てくれて心強いよ。」
「ふふ…ありがとう…。」
レインズはセレーテの頬を撫で、セレーテはその手にそっと手を重ねる。
レインズの言葉はお世辞だとはわかっていたが、それでもセレーテは嬉しかったのだ。
「でも、御前様。
ゴーレムを一人で倒すなんて…。人族初の快挙じゃないか?
アレは数十人の討伐隊を組んで相手する魔物だろう?」
「いや、一人いただろう。」
「他にそんな化け物…ああ、アイツか…。」
「そう、エメルヒス帝国初代皇帝、英雄帝アルゴ・エメルヒス。
メルッツ大陸の南部から魔物を駆逐して、今の帝国を作ったー。
ま、おとぎ話みたいな話だけどな。」
「ゴーレムを一人で倒したってのも、十分におとぎ話レベルだよ。」
「お前だって強くなってるんだ。
ワーウルフ位ならもう、何匹いても怖くないだろう?」
「ああ。それに、オレのペースで進んでても、
御前様の修行にもなってるのがわかって良かった。
よし、少し休んだら先へ進もう。オレももっと強くなるぞ!」
ヤル気満々のセレーテを見て、レインズは少し申し訳なさそうな顔をする。
「どうした、御前様?」
「残念だが、もう少し休んだらダンジョンを出るぞ。」
「えぇっ?!まだダンジョンを半分も攻略出来てないだろうっ?なんで…?」
「さっきアクサナから通信機に連絡があった。」
「アクサナから?」
「ああ、船の改修が終わったそうだ。」
つづく
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