転封貴族と9人の嫁〜辺境に封じられた伯爵子息は、辺境から王都を狙う〜

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第三章 獣隷王国と二人目の嫁

その26 エピローグ その1

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床に正座するレインズと、それを見下ろすアクサナ。
「……アクサナ、これ、脚が痛いんだが……。」
「龍人族かどこかの種族の座り方じゃ。誠意を示す時にする、と聞いたコトがある。」
「さすが、アクサナ様は博識ですね!」
アレクシィに褒められ、アクサナは無い胸を張る。

「無事に帰って来て欲しいとは言うたがのぉ、主様。」
「はい…。」
「嫁を増やして帰ってくるとはのぉ?」
「面目ございません…。」
「主様は、何しに行ったんじゃったかいのぉ?」
「…セレーテを助けに…。」
「何で娶って帰ってくるんかのぉ?」
「返す言葉もありません…。」
アクサナに責められ、レインズは頭を下げたまま、
彼女の顔も見れない。

「…セレーテに、男装のまま俺が求婚したら、
結婚を許すって言ったのは本当か?」
「主様が気絶している間の話じゃな?
確かに、あの娘に言うたは本当じゃよ?」
「なんで、そんな事を?」
「…主様の悲願成就を思えば、手は多い方が良いからの。」
「アクサナ…。」
レインズはアクサナの真意を知り、嬉しさで顔を上げる。

「じゃが、ちくっと早ぉないか?」
「ひぃっ?!」
レインズの上げた眼前に、緋色の目を爛々と光らせたアクサナの貌が…。
思わず声を上げるレインズ。

「革命軍、獣人族、戦力として取り込むのは悪ぅないと思うて提案したが…。
よもやこんなに早く娶ってくるとは…。予想外じゃ。」
セレーテを焚き付けたのはソッチじゃないかっ!と言いたい所だが、
レインズ自身も驚くスピード婚に、後ろめたすぎて言葉を飲み込む。

「可愛い新妻に向かって、ひぃっは無いですよ、レインズ様っ。」
アレクシィも仁王立ちでレインズを見下ろす。
最早すっかり主従は逆転している。

「良いのじゃアレクシィ、ワシの胸が絶壁なせいで主様を満足させられんから…。」
「嗚呼っ!なんとおいたわしやアクサナ様っ!」
二人抱き合い、よよよと泣き合う。
何度も見た芝居がかったこの光景に、レインズは思わず苦笑いする。

「あっ!レインズ様今笑いましたねっ!」
「どういう神経で笑えるんじゃ、主様はっ!」
「すいません、ごめんなさいっ!悪気はないんだっ!」
レインズが二人に責められていると、奥の部屋からセレーテが現れた。

「それ位にしてやってくれないか、レインズが可愛そうだ。」
「可愛そうなのはアレクサ様ですよっ!
この泥棒猫、いや、泥棒狼っ!」
「ど、泥棒狼っ?!」
アレクシィが今度はセレーテに噛みつく。

「…別れの挨拶は済んだのかぇ?」
「ああ、ありがとう。ゆっくり話せたよ…。」
「セレーテ…。」
アレクシィの問いかけに、セレーテは寂しそうに笑って返す。

レインズは奥の部屋に目をやる。
奥の部屋のベッドには、爺が静かに横たわっている。

セレーテ達革命軍を王国に売ったのは、爺だった。
自分が幼かったセレーテに国の惨状を教え、
その結果彼女を革命軍のリーダーにしてしまったー。
その事を悔いた爺は、彼女の命は助ける事を条件に、
王国を使って革命軍を壊滅させ、
彼女を『革命』と言う、自分が押し付けた『夢』から切り離そうとしたのだ。

彼は、爺は諦めたのだ。
獣人族の自立を、人族との共存を。
だが、彼がその『夢』を諦めた矢先、
彼の夢を実現可能だという、確かな証拠を見せ付けられた。
レインズとアクサナ、アクサナとアレクシィ。
そして、セレーテを助けに行ったレインズ…。
それぞれ違う種族でありながら、
互いに思い合う、その姿を。

結果、彼は自ら命を絶った。
セレーテを裏切り、革命軍を窮地に追いやった自責の念にかられて。
アレクシィがアクサナの看病をする姿を見ながらー。

「爺の手紙にはなんて?」
「…まだ読めてない…読めないんだ。」
「そうか…。」
セレーテが爺からの手紙を握り締める。

つづく
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