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第三章 獣隷王国と二人目の嫁

その10

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「オレの名前はセレーテ。レインズ、俺と手を組まないか?」
革命軍のリーダーを名乗った銀髪の美少年セレーテは、
床に転がるレインズに手を差し出した。

「革命軍とは穏やかじゃないが…。どういう組織なんだ?」
「その前に…。レインズ、この国の主な産業を知ってるか?」
「奴隷だろう?」
「あっさり言ってくれるな…。
だが正解だ。田畑の開拓にさえマルワール王国とエメルヒス帝国の許可を必要とするこの国では、特に産業はない。
結果、国民を奴隷として他国に送り出すしかない…。
この砦の先に港があるんだ。」
「俺達が入港する予定だった港か。」
「今年は、その港から2万人、国民が送り出される。」
「2万人…。」
レインズは自分の大切な領民を、奴隷として他国へ売り出す事を想像し、絶句した。

「どれ程昔かわからない位大昔の戦争の咎で、こんな絶海の孤島に押し込まれ、
下等種族として扱われ、人族の傀儡国家として毎年何万人もの国民を他国に奴隷として送り出す…っ!
そんな事、納得できるかっ!!」
セレーテは机を激しく叩き付ける。その拳には血が滲んでいる。

「だから革命軍か…。兎人族の王家を打倒して、それからどうするんだ?」
「王家の打倒より、オレ達は人族国家からの干渉をなくしたいんだっ!」
「話が大きくなったな…。王国と帝国を敵に回す気か?ぞっとしないな。」
『革命家は夢想家。現実が見えにくいとは聞いた事があるが…。
だが、上手く動いてくれれば、俺の手札が増えるか?』
レインズはセレーテと自分の利益の共通点を考える。

「お前も、マルワール王国に一矢報いたい、そう思ってるんじゃないのかっ?」
セレーテはレインズに詰め寄り、レインズの目から視線を逸らさないが、
「確かに、王家に思う所はあるが…そんな大それた事は考えてないよ。」
レインズはセレーテから視線を逸らす。

「だが…。」
「だが?」
「俺達がココへ来た目的は、ある物を帝国へ輸出するために、中継地になってもらうために来たんだ。」
「ある物?」
「アレクシィ。」
「はい、レインズ様。」
アレクシィは立ち上がると、レインズ達に背を向け、スカートをたくし上げる。

「おいおい、何を…っ?」
「コレです。」
赤面して慌てるセレーテに、アレクシィはスカートの中、腰に巻き付けていた袋を彼に手渡す。

「…開けても?」
「もちろんだ。」
興味津々のセレーテが袋の中を覗き込む。

袋を覗き込んだセレーテの表情が変わる。
「これは…魔石か?」
「ああ、そうだ。これを買い取って、帝国に輸出して欲しい。」
「目的は…。」
「俺のコトを知ってるって事は、俺の領地の事も知ってるか?」
「詳しくは…大魔森林に接してるんだったか?」
「領土はそこそこ広いんだが、ほとんどが大魔森林でな。
住むに適した土地が少ないせいで領民も少ないし、産業らしい物もまだない。
そこで、大魔森林の魔物を狩って魔石を集め、売って一儲けしたい、と思ってな。」
「王国内で売ればいいじゃないか。」
セレーテはもっともな疑問を口にする。

「王国へはワシの生家、魔王国が魔石を輸出しておる。
主様と商売敵にはなりとうない。」
レインズに代わってアクサナが説明する。

「そうか…。妻の生家とは争えないな。」
「俺達から買い取って、帝国に更に高値で売りつけてやれ。革命軍の資金になるぞ。」
「それに、帝国内の魔石の供給量が増えれば、国力が上がって、王国の脅威になる…。
両国間が不安定になれば、俺達革命軍の付け入るスキも増えるなっ。」

「そうじゃな。」
アクサナがレインズにチラリと視線をやる。

『やはり、アクサナは俺の狙いに気付いて…。』
だが、彼女は気付かないフリをしてくれているー。
『いつかは、この胸の内をアクサナにも伝える日が来るのかー。』
レインズは頭を振り、思考を切り替える。

「魔石は全て帝国に流す必要はない。
魔力があるとは言え、さほど強くない獣人族にも俺達人族同様、魔石は重宝するだろ。」
「お前が人族かどうかは、怪しい話だがな。」
「…それは追々話してやるよ。」
レインズの言葉にセレーテの目の色が変わる。

「それは、オレと手を組むって事かな?」
ニコリと微笑んだセレーテが、レインズに再び手を差し出す。

「…いや、手が動かせないんだが。」
「ああそうだったな。もうこれは解いてもイイかな、お嬢さん達。」
「ふむ、主様も反省しておるようじゃしな。」
「レインズ様、アクサナ様の寛大なお心に感謝してくださいねっ!」
「…はい。」
『アレクシィは俺の使用人だったハズなのに…。』

レインズは釈然としない気持ちになるー。

つづく
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