転封貴族と9人の嫁〜辺境に封じられた伯爵子息は、辺境から王都を狙う〜

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第一章 隻眼隻腕の伯爵子息 レインズ・ウィンパルト

その6

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「バルク領っ?!あの王国の果て、大魔森林のあるっ?!」
レインズは軽い眩暈を覚える。

[大魔森林]
魔族の治める魔王国とマルワール王国との国境に横たわる、巨大な森林。
神代の時代、神と邪神が戦い、邪神が討ち取られた場所として昔話に謳われる。
その影響か、今も多くの魔物が跋扈しており、奥へ行くほど強大な魔物が住むという。
大森林の真ん中に国境線があるため、大森林の半分は名目上王国の領土だが、
多くの魔物のために手つかずとなっている。
バルク領は領地の多くをその手つかずの大魔森林が占めるため、
人が活動出来る範囲が狭い、経済的にも痩せた悲しい領地だ。
しかも、度々人間の活動圏に魔物が表れる、魔物災害も多い土地だ。
ちなみに、魔族と魔物は無関係で、魔族が魔物の上位種という事もない。
ただ、下級の魔物を牛馬の代わりに使役したりはするようだ。

「そうだ。
それに、あの爆発に巻き込まれた市民への補償などもあり、
ウィンパルト家にはその…なんだ、金がないのだ。
メイドもほとんどに暇を出し、レーナが買い物に行く始末…。
領主代理の俺が不甲斐無いばかりに…。」
アルソンが申し訳なさそうにうなだれる。

「転封…つまりココは俺の住んでいた屋敷じゃないのか…。
知らない天井なのも当然か…。」
俺は妙に納得するが、ハッとして我に返る。

「って、いや、なんで俺達が転封なんだ?!コッチは被害者だぞっ?!
犯人は大方、我家を快く思わない貴族連中だろうっ?!」
「それが…義父殿達もお前も意識がないものだから、
衛兵の調査で”馬車に可燃性の物でも積んでいて、それに引火爆発したのだろう”…と。
そして、責任を取る形でここバルク領へと転封になったんだ…。」
「なんだそれはっ痛…っ!」
「坊ちゃま、落ち着いてっ!」
アレクシィがレインズの背中をさすってくれる。
体に走る激痛が、レインズに憤る事すら許さない。

なんだ、その調査はっ?!
正に死人に口なしではないかっ!いや、死んでないが…。

「それと…その…。」
アルソンが言いにくそうにしている。
まだ何かあるようだ。
「義兄さん…。大丈夫、もう何を聞いても驚かないよ…。」
レインズはアルソンに力なく笑いかける。
事実、こんな最果ての貧乏領地に転封された事以上に、驚く事があるとは思えない。

「そうか…そうだな、黙っていても、いずれわかる事だしな…。」
「ああ、そうさ、一思いに言ってくれ。」
「…実はな、お前が目を覚ましたら伝えるよう言われてたんだが…。」
「ああ、なんだ?」

「国王陛下が、ナルコシア王女との婚約破棄を伝えてこられた。」
「んなっ??!!」

アレクシィに背をさすられながら、レインズは気が遠くなるのを感じたー。

[第二章 巨大スライム討伐と一人目の嫁]へ つづく
30分後に次話更新します。お付き合いください!
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