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第二章 巨大スライム討伐と一人目の嫁
その3
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「あとは俺がやる。」
レインズはアレクシィに背を向けると、
彼女を残し、茂みを出る。
『これ以上アレクシィを傷つけるワケにはいかない。』
そんな決意を胸に、レインズは巨大スライムの元へ向かう。
巨大スライムは痺れから回復したのか、こちらに向かって進んでいる。
『はは、逃がしてはくれない…か。』
自分に都合のいい展開を期待した自分の浅ましさに自嘲気味に笑う。
レインズはスライムの魔法の射線上に、自分とアレクシィが並ぶのを防ぐため、
回り込みながら巨大スライムへと近づく。
巨大スライムを倒す良い手が浮かんだワケじゃない。
だが、状況は少し、好転した。
辺りを覆っていた霧雨のような濃い霧が、
先程の衝撃で吹き飛び、空も青空が覗いている。
「これなら火魔法も使える。」
レインズは小さな炎を掌に出し、火魔法が使える事を確認する。
『俺の火魔法でこの大きなスライムを焼き払う事は出来ない…がっ!』
上空にまた巨大な水の塊を放たれる前に、この火魔法でっ!
「炎の弾っ!」
レインズは掌に出した直径15cm程の火球を巨大スライムめがけて投げつける。
普通のスライムであれば一撃で蒸発させられる威力の魔法だがー…。
ーぼしゅぅっ…ー
予想通りと言えばその通りなのだが、やはりレインズの投げた火球は一瞬で消えてしまう。
「よしっ!」
だが、レインズは落ち込むどころか、小さくガッツポーズを取ると、
「炎の弾っ!炎の弾っ!」
続けざまに何発もの火球を投げつける。
もちろん、全ての火球は巨大スライムに当った瞬間消えてしまい、
巨大スライムにダメージは見られない。
「坊ちゃま…一体何を…?」
茂みに隠れていたアレクシィは四つん這いになり、
茂みの隙間からレインズの戦いを覗いている。
「レインズ様の魔力量は炎の弾を10発も撃てるとは言え…。」
とても効果があるとは思えない攻撃に、アレクシィーは首を捻る。
「炎の弾っ!炎の弾っ!炎の弾っ!」
巨大スライムの放つ水の塊を避けながら、
レインズは火球を投げ続ける。
その行動の意味がわからないアレクシィを他所に、
魔法の回数はそろそろ、レインズの限界の10発になる。
「坊ちゃまは何を考えて…?」
頭脳明晰と称された坊ちゃんの事、何か考えがおありのハズ…。
見た所巨大スライムに変化はない。
ただ、レインズの火球が当たる位置が、
1発ごとに少しづつ下がってきているような…?
「…あっ!」
いつの間にか巨大なスライムの核が、随分と下の方、
もう少しで剣が届きそうな距離まで下がってきている。
「そうかっ!坊ちゃまは核の少し上に火球を当てる事で、
ダメージは与えられないけれど、核の位置を下へと誘導してっ!
お見事です、坊ちゃまっ!頑張れっ坊ちゃまっ!」
アレクシィは拳を強く握り、ブンブン振り回して応援する。
「さて、これだけ下がれば、剣も届くかっ!」
最初は見上げるような位置にあった核も、
今は誘導されてレインズのほぼ目線の位置まで下がっていた。
だいぶ下がった核を見ながら、レインズは大きく息を吸い込み、
「これで最後だっ、炎の弾っ!!」
レインズは残りの魔力を全て込めた、今までより大きめの火球を、
核が逃げないよう、その少し上めがけて投げつけると同時に、
その核めがけて突きを放つっ!
「うおおぉぉぉぉっっっ!!!!!!」
レインズの雄たけびが響く。
充分に下がっていた核めがけ、レインズの片手剣が吸い込まれるように伸びていく。
『届けっ!届けっ!!届けぇぇっっ!!!』
ーずぶぅっ!ー
手応えはほとんど無いが、レインズの剣先がスライムの水の体に突き刺さる。
後はその奥の核まで剣を突き通すだけっ。
「おおおぉぉぉぉっっっ!!!んなっ??!!」
レインズの雄たけびが驚嘆の声に変わる。
剣先が核へ刺さる寸前、巨大スライムの核は無情にも、
上方へと素早く移動したのだー。
刺突の直前の火球など気にも留めずに…。
『そうか、誘われたのか俺は…。』
剣も届かない上方でユラユラ揺れる核を、レインズは呆然と見つめる。
突き刺した剣を上方へ斬り上げても、核へは届かないだろう。
表情があるハズのないスライムが、自分を見下し嘲っているように見えた。
「ゆらゆらへらへら…笑ってんじゃねぇよ…。」
巨大スライムへ悪態を付いた刹那、
ーっドンッッッ!!ー
「がっ??!!」
全身に衝撃が走り、レインズが吹き飛ぶ。
巨大スライムの放つ巨大な水の塊の直撃を、零距離で受けたのだ。
「坊ちゃまぁぁぁっっっ!!!」
アレクシィの悲痛な声が辺りに響いた。
つづく
30分後に次話更新します。お付き合いください!
レインズはアレクシィに背を向けると、
彼女を残し、茂みを出る。
『これ以上アレクシィを傷つけるワケにはいかない。』
そんな決意を胸に、レインズは巨大スライムの元へ向かう。
巨大スライムは痺れから回復したのか、こちらに向かって進んでいる。
『はは、逃がしてはくれない…か。』
自分に都合のいい展開を期待した自分の浅ましさに自嘲気味に笑う。
レインズはスライムの魔法の射線上に、自分とアレクシィが並ぶのを防ぐため、
回り込みながら巨大スライムへと近づく。
巨大スライムを倒す良い手が浮かんだワケじゃない。
だが、状況は少し、好転した。
辺りを覆っていた霧雨のような濃い霧が、
先程の衝撃で吹き飛び、空も青空が覗いている。
「これなら火魔法も使える。」
レインズは小さな炎を掌に出し、火魔法が使える事を確認する。
『俺の火魔法でこの大きなスライムを焼き払う事は出来ない…がっ!』
上空にまた巨大な水の塊を放たれる前に、この火魔法でっ!
「炎の弾っ!」
レインズは掌に出した直径15cm程の火球を巨大スライムめがけて投げつける。
普通のスライムであれば一撃で蒸発させられる威力の魔法だがー…。
ーぼしゅぅっ…ー
予想通りと言えばその通りなのだが、やはりレインズの投げた火球は一瞬で消えてしまう。
「よしっ!」
だが、レインズは落ち込むどころか、小さくガッツポーズを取ると、
「炎の弾っ!炎の弾っ!」
続けざまに何発もの火球を投げつける。
もちろん、全ての火球は巨大スライムに当った瞬間消えてしまい、
巨大スライムにダメージは見られない。
「坊ちゃま…一体何を…?」
茂みに隠れていたアレクシィは四つん這いになり、
茂みの隙間からレインズの戦いを覗いている。
「レインズ様の魔力量は炎の弾を10発も撃てるとは言え…。」
とても効果があるとは思えない攻撃に、アレクシィーは首を捻る。
「炎の弾っ!炎の弾っ!炎の弾っ!」
巨大スライムの放つ水の塊を避けながら、
レインズは火球を投げ続ける。
その行動の意味がわからないアレクシィを他所に、
魔法の回数はそろそろ、レインズの限界の10発になる。
「坊ちゃまは何を考えて…?」
頭脳明晰と称された坊ちゃんの事、何か考えがおありのハズ…。
見た所巨大スライムに変化はない。
ただ、レインズの火球が当たる位置が、
1発ごとに少しづつ下がってきているような…?
「…あっ!」
いつの間にか巨大なスライムの核が、随分と下の方、
もう少しで剣が届きそうな距離まで下がってきている。
「そうかっ!坊ちゃまは核の少し上に火球を当てる事で、
ダメージは与えられないけれど、核の位置を下へと誘導してっ!
お見事です、坊ちゃまっ!頑張れっ坊ちゃまっ!」
アレクシィは拳を強く握り、ブンブン振り回して応援する。
「さて、これだけ下がれば、剣も届くかっ!」
最初は見上げるような位置にあった核も、
今は誘導されてレインズのほぼ目線の位置まで下がっていた。
だいぶ下がった核を見ながら、レインズは大きく息を吸い込み、
「これで最後だっ、炎の弾っ!!」
レインズは残りの魔力を全て込めた、今までより大きめの火球を、
核が逃げないよう、その少し上めがけて投げつけると同時に、
その核めがけて突きを放つっ!
「うおおぉぉぉぉっっっ!!!!!!」
レインズの雄たけびが響く。
充分に下がっていた核めがけ、レインズの片手剣が吸い込まれるように伸びていく。
『届けっ!届けっ!!届けぇぇっっ!!!』
ーずぶぅっ!ー
手応えはほとんど無いが、レインズの剣先がスライムの水の体に突き刺さる。
後はその奥の核まで剣を突き通すだけっ。
「おおおぉぉぉぉっっっ!!!んなっ??!!」
レインズの雄たけびが驚嘆の声に変わる。
剣先が核へ刺さる寸前、巨大スライムの核は無情にも、
上方へと素早く移動したのだー。
刺突の直前の火球など気にも留めずに…。
『そうか、誘われたのか俺は…。』
剣も届かない上方でユラユラ揺れる核を、レインズは呆然と見つめる。
突き刺した剣を上方へ斬り上げても、核へは届かないだろう。
表情があるハズのないスライムが、自分を見下し嘲っているように見えた。
「ゆらゆらへらへら…笑ってんじゃねぇよ…。」
巨大スライムへ悪態を付いた刹那、
ーっドンッッッ!!ー
「がっ??!!」
全身に衝撃が走り、レインズが吹き飛ぶ。
巨大スライムの放つ巨大な水の塊の直撃を、零距離で受けたのだ。
「坊ちゃまぁぁぁっっっ!!!」
アレクシィの悲痛な声が辺りに響いた。
つづく
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