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高等部3年生

最終話(前編)

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「魔法コンテストは残念だったね、アリア」
「ありがとう、カウイ。でも、平気だよ。私の中では満足してるから」

少しだけ気恥ずかしく思いながらも、横にいるカウイをチラリと見上げる。
私の視線に気がついたのか、カウイが優しく笑い掛けてきた。


「アリア、手を繋がない?」


……あれ? このセリフどこかで……あっ!

前に同じ事を聞かれた事があったんだ。
でも、その時は……カウイの気持ちを知ってたから、断ったんだっけ。

差し出されたカウイの手をじっと見つめる。
ゆっくりと手を握ると、カウイが心底嬉しそうに微笑んだ。

カウイの嬉しそうな顔を見ると、私まで嬉しくなっちゃう。
うん。誰がどう見ても……いい雰囲気!!


──そうです!
実は今日、カウイとお付き合いしてから“初めてのデート”なんです!!

“エンタ・ヴェリーノ学校祭”が終わり、やっと2人で会う時間を作る事が出来たんです!!!

そして今は、カウイに告白された日に行ったカフェへと向かって歩いている。
昼食について相談していた際、『また一緒に食べたいね』という話になったのだ。

少し離れた場所にあるので、当初は“ヴェント”で行くという話をしていた。
だけど、最終的にはどちらからともなく『会話をしながら、一緒に歩いて行きたいね』という……流れになった。

なにはともあれ、カウイと初めてのデートだ。
実のところ、かなり浮かれてはいるけれど……まずはぐっと気持ちを抑えて、謝罪から始めなくてはならない。

「あのね、カウイ……その、魔法コンテストの時、いい雰囲気を台無というか……カウイをぞんざいに扱ってごめんね」

改めて口にすると本当にひどい事をしてしまったな……。
キスをする流れも私が断ち切ってしまったし……。

申し訳なさから、どんどん声が小さくなっていく。

カウイはといえば、私の言葉にきょとんとした表情を浮かべている。
何の事か分かってないのかな?

「──ああ」

思い出したように声を上げると、カウイが頬を緩める。

「ううん、気にしてないよ。これから先、何度も──死ぬほどする事になるからね」
「っ!?」

……えっと、いや、うん。
その通りかもしれないけど、ね。

臆面もなく言われてしまうと、こっちが照れてしまう。

「そ、そういえば、カウイはナンバーワンコンテストの結果……残念だった?」

咄嗟に、カウイや幼なじみたちが出場した“エンタ・ヴェリーノ ナンバーワンコンテスト”へと話題を変える。

恥ずかしさから、ついつい話を逸らしてしまった。

「ううん? 全く。それとは比べ物にならないくらい、嬉しい出来事があったから」

カウイが幸せそうに私を見る。
うっ……結局、私が照れるような事を言われてしまった。


幼なじみたちが出場した“エンタ・ヴェリーノ ナンバーワンコンテスト”。

かなりの接戦だったらしいが、最終的に男性部門はオーンが選ばれ、女性部門はセレスが選ばれるという結果になった。

そして──その中でもナンバーワンに選ばれたのがオーンだった。

もちろん、オーンが王子だからという理由で選んだ人もいるかもしれない。
でもそれだけでなく、オーンの努力や人柄で選んでくれた人が多いんじゃないかなって思ってる。


ちなみに私が投票した人は……言わなくていいと言われたので、誰にも言っていない。
この件については、永遠の秘密にしよう!


あっ、そうだ。
カウイに聞きたいと思っていた事があったんだ。

「あのね、カウイ」
「うん?」
「私がカウイの事を好きだって、私が気持ちを伝えるまで気づかなかった……んだよね?」
「…………」

あれ? カウイが黙ってる。
聞こえなかったはずはないと思うけど?

様子をうかがう私の隣で、カウイが少しだけ間をおいた後、静かに口を開いた。

「……なんとなく、そうだと嬉しいなとは思ってた」

うううん? 
それは……どっち??

「気がついてた……の?」
「そうじゃないかな……くらいだけど」

少しだけ気まずそうにカウイが笑っている。
こ、これは、かなり気を使ってくれている!!

……という事は、えーー!!
バレてたの!!?

頑張って隠してたのに……って、はて? いつだろう??
思い当たる節といえば、カウイに好意を持っている女性と3人で帰った時かな?

「アリアのおでこにキスをした時があったよね?」

ん? ──ああ!
婚約したマイヤへ、お祝いのプレゼントを買いに行った時だ!!

「別れ際、アリアが今まで見せた事のないような表情で見つめてくるから……我慢できなくなってキスをしてしまったんだ」


…………えっ!?

「その時に“アリアは俺に好意を持ってくれているかもしれない”と思ったんだ」

ええっ!!?

「ただ確証はなかったし、自分の都合のいいように考えてしまっただけかもしれないと思って」

えええっ!!!?
そ、そんな前から、私の気持ちはカウイに漏れていたの!?

それってつまり……私が自分の気持ちに気がつくよりも先に、カウイの方が気づいてたということ??

「そっか……そうだったんだ」

顔を見ただけで気持ちを悟られてしまう私のような人間が、隠しきれると思っていた事自体が大間違いだった。

だけど、もう少し……せめて告白までは隠しておきたかった……。

「さっきも話した通り、確証はなかったから……嬉しい気持ちは本当だよ」

カウイ……優しい。
必死にフォローをしてくれている。

「ありがとう、カウイ」
「俺の方こそ、ありがとう。アリアが表情で気持ちを伝えてくれる分、俺は言葉と態度で気持ちを伝えていくからね」

そう言って立ち止まると、カウイがそっと私にキスをした。


──へっ!!

えっ! 待って!!
今……カウイとキスしたよね!?

思わず硬直する私に、カウイが申し訳なさそうに眉尻を下げる。

「ごめん。アリアに聞いてからの方が良かったよね」

ううん! そうじゃない!!
カウイなら、いつでもOK!! ……じゃなかった!!!

「もう一度! お願いします!!」
「それは……嬉しいお願いだ」

カウイが幸せそうに顔を綻ばせる。

「よろこんで」

そう言って、ぎゅっと私を抱き寄せた。
私もカウイの背中に手を回す。

しばらく抱き締め合った後、ゆっくりと先ほどよりも長いキスをした──
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