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高等部3年生
アリアの好きな人 1/4
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幼なじみ達のコンテスト参加も無事……? に決まったある日。
学校へと向かいながら、ケリーがふいに尋ねてくる。
「アリアさんは、コンテストに出場しないんですか?」
……最近、毎朝ケリーに会っている気がする。
それに今日のケリーの服装……私とほぼ同じだ。
最初は『すごい偶然!!』と盛り上がっていたけど、ここまでくると、さすがに真似をされている事に気づいてきた。
この私でも気づくくらい、ケリーの行動はどんどんとエスカレートしている。
──最初の頃は、会うたびに質問攻めだった。
「アリアさんが好きな食べ物は何ですか?」
「アリアさんが普段している事って何ですか? 趣味は?」
この時は「私に興味を持ってくれてるんだな」とか「色々と知ろうとしてくれてるんだな」とか思って、気楽に考えていた。
けれど、暫く経つと、徐々に質問内容が細かくなってきた。
「もしアリアさんがこういう境遇になったら、なんて言いますか?」
「こういう相談をされたら、どうやって返しますか?」
友人に相談されて困っているのかな? と思って、私なりにアドバイスしたけど……内容はバラバラだし、あまりにも質問の量が多かった。
不思議に思い、それとなくケリーに聞いてみた。
「私の意見をよく聞くけど……周りから相談される事が多いの?」
「えっ!? あっ……はい。参考までにアリアさんの意見を聞きたくて……」
随分と歯切れの悪い返事だ。
「私の意見は参考までにして、ケリーの感じた事、思った事を伝えた方が相談した相手も嬉しいんじゃない?」
「……私じゃダメなんです」
……どういう意味だろう?
ケリーの言いたい事がよく分からず、心の中で首を傾げる。
「どうして?」
「……いえ、その……色々と教えてくださって、ありがとうございました」
どこか気まずそうにはぐらかされてしまい、それ以上は聞けない雰囲気になってしまった。
持ち物もそうだ。
私の持っている物、身につけている物を見ると「どこで買ったんですか?」と質問される事が多い。
購入場所を伝えると、後日「私も可愛いと思ったので買っちゃいました」と言って、身につけている。
好みや趣味が同じ事もあるとは思うけど……毎回、同じ物を買う事に違和感はある。
それに……たまに気になる発言もする。
「アリアさんなら、そう言うと思いました」
「アリアさんなら、きちんと話を聞いてくれると思ってました」
ケリーはよく“アリアさんなら”と口にする。
どういったものかまでは分からないけど、ケリーの中には私に対する強いイメージがあるようだ。
ケリーに限らず私もだけど、知り合いはもちろん、顔しか知らないような人に対しても勝手なイメージを持つ事はある。
だけど、ケリーは私に対する理想像のようなものがあるのか、他の人よりもかなり強い気がする。
しかも──
「アリアさんなら、誰に対しても平等ですよね」
「アリアさんなら、困っている人を放っておけないですよね」
「アリアさんなら、我慢しますよね」
正直『どこの神?』、『どこの仙人?』と驚いてしまうくらい立派なイメージだ。
うーん……私のどこをどう見て、そんなイメージがついちゃったんだろう??
“ケリーの中の私”と、“実際の私”は違う。
それを伝えても「そんな事ありません!」と即座に否定されてしまう。
どんどん“ケリーの中の私”が一人歩きしているような……。
どうしたものかと悩みつつも、それ以外は特に気にするような事もない。
疑問は残るけど、突き放したいわけでもないしなぁ。
「──私にコンテストは大役すぎるというか……」
「自分の事になると過小評価だね、アリアは」
多少の気まずさを覚えながらもケリーに返事をしていると、突然、後ろから穏やかな声が聞こえてきた。
「カウイ、おはよう」
「おはよう」
カウイが静かに微笑み、そっと私の横に並んだ。
「俺個人としては、アリアには出場してほしくないかな? みんなも同じ事を思っているかもしれないけど。……ああ、ケリーさんもおはよう」
「……おはようございます、カウイさん」
『なんで?』と私が尋ねるよりも早く、カウイとケリーが挨拶を交わしている。
……聞くタイミングを逃しちゃった。
私とケリーが一緒にいる機会が多い事もあってか、幼なじみたちとケリーも自然と顔見知りになった。
聞くところによると、ケリーは私がいない時も積極的にみんなへ話し掛けているらしい。
驚く事に、他人への関心が薄いあのルナでさえ、ケリーの事はちゃんと覚えている。
とはいえ『話し掛けてくる人がいる』程度にしか言ってなかったので、あまり会話らしい会話はしていないのかも……。
ちなみにミネルは『馴れ馴れしい』と怒っていた。
……そういえば、前にセレスが言ってたな。
『アリアの事をよく聞かれるわよ。あの子……話し方や口癖、顔に出やすい所までアリアと同じなのよね……』
……うーん、ケリーは何がしたいのかな?
さっぱり分からない。
知らぬ間に難しい顔でもしていたのか、カウイが少し気遣うように声を掛けてきた。
「アリア、一緒に行こうか」
「う──」
「そうだ! アリアさん」
返事をしようとした瞬間、ケリーが遮るように私を呼んだ。
声の大きさに驚き、思わずどもってしまう。
「ど、どうしたの? ケリー」
「明日のお昼、一緒に食べませんか?」
明日……かぁ。
正直、断る理由はない。
……けど、すぐに『うん』と返事ができない自分がいるのも事実だ。
「そのお昼、私もご一緒していいかしら?」
返答に迷っていると、背後から私を助けるかのような声が聞こえてくる。
気づいたケリーがパッと表情を輝かせた。
「っマイヤさん! おはようございます!!」
「おはよう、ケリーさん」
にっこりと微笑みながら、マイヤが私たちの元へと歩いてくる。
「そろそろ、"ケリー”って呼んでください。マイヤさん」
「うふ。明日、ご一緒してもいい?」
可愛らしく首を傾げつつ、マイヤが改めてケリーに確認する。
今、ケリーの言った事をはぐらかしたような……?
「もちろんです!」
「ありがとう」
マイヤからの提案に、ケリーが嬉しそうに笑っている。
「ケリーさん、嬉しそうね」
「マイヤさんともご一緒できるのが嬉しくて……。顔に出てました? 私、顔に出やすい性格みたいで……」
「……ふぅん、そうなの。──あら?」
ふと、マイヤが何かに気がついたように声を上げる。
「ケリーさん。ご友人が呼んでるみたいよ。行ってきたら?」
「えっ、あっ、はい。それじゃあ、また明日」
学校へと向かいながら、ケリーがふいに尋ねてくる。
「アリアさんは、コンテストに出場しないんですか?」
……最近、毎朝ケリーに会っている気がする。
それに今日のケリーの服装……私とほぼ同じだ。
最初は『すごい偶然!!』と盛り上がっていたけど、ここまでくると、さすがに真似をされている事に気づいてきた。
この私でも気づくくらい、ケリーの行動はどんどんとエスカレートしている。
──最初の頃は、会うたびに質問攻めだった。
「アリアさんが好きな食べ物は何ですか?」
「アリアさんが普段している事って何ですか? 趣味は?」
この時は「私に興味を持ってくれてるんだな」とか「色々と知ろうとしてくれてるんだな」とか思って、気楽に考えていた。
けれど、暫く経つと、徐々に質問内容が細かくなってきた。
「もしアリアさんがこういう境遇になったら、なんて言いますか?」
「こういう相談をされたら、どうやって返しますか?」
友人に相談されて困っているのかな? と思って、私なりにアドバイスしたけど……内容はバラバラだし、あまりにも質問の量が多かった。
不思議に思い、それとなくケリーに聞いてみた。
「私の意見をよく聞くけど……周りから相談される事が多いの?」
「えっ!? あっ……はい。参考までにアリアさんの意見を聞きたくて……」
随分と歯切れの悪い返事だ。
「私の意見は参考までにして、ケリーの感じた事、思った事を伝えた方が相談した相手も嬉しいんじゃない?」
「……私じゃダメなんです」
……どういう意味だろう?
ケリーの言いたい事がよく分からず、心の中で首を傾げる。
「どうして?」
「……いえ、その……色々と教えてくださって、ありがとうございました」
どこか気まずそうにはぐらかされてしまい、それ以上は聞けない雰囲気になってしまった。
持ち物もそうだ。
私の持っている物、身につけている物を見ると「どこで買ったんですか?」と質問される事が多い。
購入場所を伝えると、後日「私も可愛いと思ったので買っちゃいました」と言って、身につけている。
好みや趣味が同じ事もあるとは思うけど……毎回、同じ物を買う事に違和感はある。
それに……たまに気になる発言もする。
「アリアさんなら、そう言うと思いました」
「アリアさんなら、きちんと話を聞いてくれると思ってました」
ケリーはよく“アリアさんなら”と口にする。
どういったものかまでは分からないけど、ケリーの中には私に対する強いイメージがあるようだ。
ケリーに限らず私もだけど、知り合いはもちろん、顔しか知らないような人に対しても勝手なイメージを持つ事はある。
だけど、ケリーは私に対する理想像のようなものがあるのか、他の人よりもかなり強い気がする。
しかも──
「アリアさんなら、誰に対しても平等ですよね」
「アリアさんなら、困っている人を放っておけないですよね」
「アリアさんなら、我慢しますよね」
正直『どこの神?』、『どこの仙人?』と驚いてしまうくらい立派なイメージだ。
うーん……私のどこをどう見て、そんなイメージがついちゃったんだろう??
“ケリーの中の私”と、“実際の私”は違う。
それを伝えても「そんな事ありません!」と即座に否定されてしまう。
どんどん“ケリーの中の私”が一人歩きしているような……。
どうしたものかと悩みつつも、それ以外は特に気にするような事もない。
疑問は残るけど、突き放したいわけでもないしなぁ。
「──私にコンテストは大役すぎるというか……」
「自分の事になると過小評価だね、アリアは」
多少の気まずさを覚えながらもケリーに返事をしていると、突然、後ろから穏やかな声が聞こえてきた。
「カウイ、おはよう」
「おはよう」
カウイが静かに微笑み、そっと私の横に並んだ。
「俺個人としては、アリアには出場してほしくないかな? みんなも同じ事を思っているかもしれないけど。……ああ、ケリーさんもおはよう」
「……おはようございます、カウイさん」
『なんで?』と私が尋ねるよりも早く、カウイとケリーが挨拶を交わしている。
……聞くタイミングを逃しちゃった。
私とケリーが一緒にいる機会が多い事もあってか、幼なじみたちとケリーも自然と顔見知りになった。
聞くところによると、ケリーは私がいない時も積極的にみんなへ話し掛けているらしい。
驚く事に、他人への関心が薄いあのルナでさえ、ケリーの事はちゃんと覚えている。
とはいえ『話し掛けてくる人がいる』程度にしか言ってなかったので、あまり会話らしい会話はしていないのかも……。
ちなみにミネルは『馴れ馴れしい』と怒っていた。
……そういえば、前にセレスが言ってたな。
『アリアの事をよく聞かれるわよ。あの子……話し方や口癖、顔に出やすい所までアリアと同じなのよね……』
……うーん、ケリーは何がしたいのかな?
さっぱり分からない。
知らぬ間に難しい顔でもしていたのか、カウイが少し気遣うように声を掛けてきた。
「アリア、一緒に行こうか」
「う──」
「そうだ! アリアさん」
返事をしようとした瞬間、ケリーが遮るように私を呼んだ。
声の大きさに驚き、思わずどもってしまう。
「ど、どうしたの? ケリー」
「明日のお昼、一緒に食べませんか?」
明日……かぁ。
正直、断る理由はない。
……けど、すぐに『うん』と返事ができない自分がいるのも事実だ。
「そのお昼、私もご一緒していいかしら?」
返答に迷っていると、背後から私を助けるかのような声が聞こえてくる。
気づいたケリーがパッと表情を輝かせた。
「っマイヤさん! おはようございます!!」
「おはよう、ケリーさん」
にっこりと微笑みながら、マイヤが私たちの元へと歩いてくる。
「そろそろ、"ケリー”って呼んでください。マイヤさん」
「うふ。明日、ご一緒してもいい?」
可愛らしく首を傾げつつ、マイヤが改めてケリーに確認する。
今、ケリーの言った事をはぐらかしたような……?
「もちろんです!」
「ありがとう」
マイヤからの提案に、ケリーが嬉しそうに笑っている。
「ケリーさん、嬉しそうね」
「マイヤさんともご一緒できるのが嬉しくて……。顔に出てました? 私、顔に出やすい性格みたいで……」
「……ふぅん、そうなの。──あら?」
ふと、マイヤが何かに気がついたように声を上げる。
「ケリーさん。ご友人が呼んでるみたいよ。行ってきたら?」
「えっ、あっ、はい。それじゃあ、また明日」
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