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高等部3年生
エウロの決断(と、後悔)
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ミネルと別れ1人“ヴェント”に乗り込むと、時計を取りに行った。
本当はカウイも一緒に取りに行くって言ってくれてたけど、ミネルの家を何時に出られるか分からなかったから断ったんだよね。
それに……今、カウイと2人で会うのは少し恥ずかしい。
無事に時計も受け取ったし、このまま帰ろうかな。
それとも寄り道でもしようかな?
目的もなくふらふら街を歩いていると、見知った赤髪が目に入った。
「──エウロ!!」
大声で名前を呼ぶと、エウロがバッと振り返った。
「アリア! 偶然だな!!」
満面の笑みを浮かべたエウロが、手を振りながら私の元へ歩いてくる。
「どうしたんだ?」
「明日のプレゼントを取りに来たんだけど……エウロは? あっ! ドレス!?」
さっきミネルが話してたもんね。
「よく分かったな。これからドレスを取りに行って、ミネルの家に行くんだ」
やっぱり!!
これは、事前にドレスを見るチャンス!!
「私もドレスを見たいから、一緒に行ってもいい?」
「あ、ああ! もちろん!!」
嬉しそうにエウロが答える。
お店に向かって並んで歩き始めたところで、エウロが私の手元を見た。
「持つよ」
「えっ、あ、ありがとう」
エウロの気遣いに甘え、持っていた時計を渡す。
「エウロ、自分で取りに来たんだね。執事の方とか、メイドさんに頼まなかったんだ」
「それは……アリアもだろ?」
そっか。そうだった。
「大切な2人の婚約パーティーだからな。少しでも自分で何かしたくて。それに……」
それに?
気になって隣を見上げると、エウロと目が合った。
「アリアは何でも自分で行動するから、移ったのかもしれない」
エウロがにこっと笑う。
つられて、私もにこっと笑い返す。
「本当だ。移っちゃうね」
「……だろう?」
2人で笑い合いながら、注文したドレスについて話をする。
「そういえば、マイヤのサイズはどうやって調べたの?」
「ん? ああ、セレスが知ってたぞ?」
セレスの事だから、前もって調べてくれたのかな?
『私に不可能はないのよ!』と、高笑いをしているセレスの姿が頭に浮かぶ。
エウロと楽しく会話をしている内にお店に着いたので、さっそく中に入る。
マイヤのドレスを見せてもらおうと思っていたら……親切な店員さんがすでに箱の中へと仕舞っていた。
そっか。そうだよね……。
来る事を知っていたら、包んでおいてくれるよね。
見れないのは残念だけど、仕方がない。
「……ドレスも受け取ったし、お店を出ようか」
「いいのか?」
エウロが複雑そうな表情をしている。
私が『ドレスを見たい』と意気込んでたから、気にしてくれたのかな?
「うん。よく考えたら、今見てしまったら明日の感動が減っちゃうだろうし……見なくて良かったのかもしれない」
「そうか」
エウロがにっこり笑い、私の頭にポンと手を置いた。
……エウロの癖だ。
無事にドレスを受け取った後は、“ヴェント”を止めている場所まで一緒に行く事になった。
途中、会話が止まったタイミングで、エウロから声を掛けられる。
「アリア……」
ん? エウロがもごもごしている。
「まだ先の話だけど、2か月後に行われる武術の大会に出る予定なんだ」
「そうなんだ! エウロは武術が得意って話してたもんね」
「ああ……」
歯切れが悪い? 何か考えているのかな??
私も気にはなってたけど、武術となるとさすがに力の差が歴然だから参加は止めておいた。
エウロは出る予定なんだ。
ミネルは……出なさそう。
オーンとカウイは、どうするのかな?
そういえば、リーセさんが昔優勝した剣術の大会はいつあるのかな?
せっかくだから剣術の方は参加したいなぁ。
大会について色々と話している間に、目的地へと到着した。
エウロが持っていたドレスを運転手に渡しながら、私に尋ねてくる。
「アリアが受け取ったプレゼントも一緒にミネルの家に持っていくか?」
「うん、お願い」
私の言葉に頷くと、エウロがプレゼントの時計も運転手へと渡す。
そのまま“ヴェント”に乗り込むのかと思っていたら、なぜかエウロが私の近くへとやって来た。
「──アリア!」
「うん?」
エウロが緊張した面持ちで私を見つめている。
「大会の日だけど、見に来て……俺を応援してくれないか?」
エウロが私の両手をぎゅっと握りしめた。
「もし優勝したら……いや、絶対に優勝する!!」
握りしめた手が、さっきよりも強くなっている。
「優勝したら、アリアにプロポーズをする!!!」
…………へっ!?
プ、プロポーズの予告!!?
「その時、プロポーズの返事を聞かせてくれ!!」
-------
※ここから、エウロ視点に変わります。
アリアに別れを告げた後、そのままミネルの家へと向かった。
”ヴェント”を走らせながら、さっきのやり取りを思い出す。
ついに言った! 言ってしまった!!
興奮気味の俺だったが、ふとある事に気がつく。
……あっ!?
あーーー! 間違えた!!
自分の失敗に、思わず頭を抱えてしまう。
『プロポーズの返事を聞かせてくれ』って……肝心のプロポーズをしていないじゃないか!
普通はプロポーズしてから、言うセリフだよな?
さらに俺は優勝しないと、アリアにプロポーズができないし、返事も貰えないじゃないか!!
緊張しすぎて……俺はなんという取り返しのつかない間違いを!!!
考えれば考えるほど情けなくなり、再び頭を抱え込む。
俺の言葉にアリアは『分かった』と言ってくれた。
他にも何か言ってたけど……緊張しすぎて全く耳に入ってこなかった。
あの場でプロポーズして『大会で優勝したら、返事を聞かせてくれ』と言った方が良かったか?
今からでもプロポーズをしに行くべきか?
いや、俺、そもそも優勝しないとプロポーズできないんだった!!
……どうやら俺は、色々と間違えたようだ。
身もだえる俺を見て、心配になったのだろう。
運転手が「大丈夫ですか?」と声を掛けてくれた。
「ああ、大丈夫だ。ありがとう」
……はぁっ。
人と会話をした事で少し落ち着いた。
そもそも、俺の気持ちはもうアリアに伝わっている。
大会後に告白の返事をもらうと考えれば、間違いじゃないはずだ。
……でもなぁ。
格好よく花束を渡して、プロポーズをしたい気持ちもある。
ああ! 戻せるものなら、時間を戻したい!!
……こんな事を考えている時点で格好よくないな、俺。
サウロ兄様のプロポーズやマイヤと一緒にいる姿を見ているから、俺もアリアと手を繋いだり、腕を組んだり……とか想像しちゃうんだよな。
『エウロがいないと寂しい』とかアリアが言って。
俺が『アリアのそういう所も可愛いな、はは』と余裕の笑みを見せる。
そして、優しくアリアを抱き締めキスをする……とかしたい。
※注)想像上のエウロは強気です。
日に日に、そう思う気持ちが強くなっちゃったんだよな。
……よし!
まずは明日の婚約パーティーを無事に成功させた後、どうするか考えよう!
──そして翌日。
兄様とマイヤに内緒で開いた婚約パーティーは大成功で終わった。
兄様は恥ずかしがってたけど、嬉しそうだった。
マイヤも嬉し涙を流すほど喜んでたな。
改めて、俺もアリアと兄様たちのような関係になりたいと強く思った!
ひとまず、優勝できなかった時の事は考えない!
必ず大会で優勝して、アリアにプロポーズする!!
そして、願わくば、俺にとって最高の返事をもらう!!!
本当はカウイも一緒に取りに行くって言ってくれてたけど、ミネルの家を何時に出られるか分からなかったから断ったんだよね。
それに……今、カウイと2人で会うのは少し恥ずかしい。
無事に時計も受け取ったし、このまま帰ろうかな。
それとも寄り道でもしようかな?
目的もなくふらふら街を歩いていると、見知った赤髪が目に入った。
「──エウロ!!」
大声で名前を呼ぶと、エウロがバッと振り返った。
「アリア! 偶然だな!!」
満面の笑みを浮かべたエウロが、手を振りながら私の元へ歩いてくる。
「どうしたんだ?」
「明日のプレゼントを取りに来たんだけど……エウロは? あっ! ドレス!?」
さっきミネルが話してたもんね。
「よく分かったな。これからドレスを取りに行って、ミネルの家に行くんだ」
やっぱり!!
これは、事前にドレスを見るチャンス!!
「私もドレスを見たいから、一緒に行ってもいい?」
「あ、ああ! もちろん!!」
嬉しそうにエウロが答える。
お店に向かって並んで歩き始めたところで、エウロが私の手元を見た。
「持つよ」
「えっ、あ、ありがとう」
エウロの気遣いに甘え、持っていた時計を渡す。
「エウロ、自分で取りに来たんだね。執事の方とか、メイドさんに頼まなかったんだ」
「それは……アリアもだろ?」
そっか。そうだった。
「大切な2人の婚約パーティーだからな。少しでも自分で何かしたくて。それに……」
それに?
気になって隣を見上げると、エウロと目が合った。
「アリアは何でも自分で行動するから、移ったのかもしれない」
エウロがにこっと笑う。
つられて、私もにこっと笑い返す。
「本当だ。移っちゃうね」
「……だろう?」
2人で笑い合いながら、注文したドレスについて話をする。
「そういえば、マイヤのサイズはどうやって調べたの?」
「ん? ああ、セレスが知ってたぞ?」
セレスの事だから、前もって調べてくれたのかな?
『私に不可能はないのよ!』と、高笑いをしているセレスの姿が頭に浮かぶ。
エウロと楽しく会話をしている内にお店に着いたので、さっそく中に入る。
マイヤのドレスを見せてもらおうと思っていたら……親切な店員さんがすでに箱の中へと仕舞っていた。
そっか。そうだよね……。
来る事を知っていたら、包んでおいてくれるよね。
見れないのは残念だけど、仕方がない。
「……ドレスも受け取ったし、お店を出ようか」
「いいのか?」
エウロが複雑そうな表情をしている。
私が『ドレスを見たい』と意気込んでたから、気にしてくれたのかな?
「うん。よく考えたら、今見てしまったら明日の感動が減っちゃうだろうし……見なくて良かったのかもしれない」
「そうか」
エウロがにっこり笑い、私の頭にポンと手を置いた。
……エウロの癖だ。
無事にドレスを受け取った後は、“ヴェント”を止めている場所まで一緒に行く事になった。
途中、会話が止まったタイミングで、エウロから声を掛けられる。
「アリア……」
ん? エウロがもごもごしている。
「まだ先の話だけど、2か月後に行われる武術の大会に出る予定なんだ」
「そうなんだ! エウロは武術が得意って話してたもんね」
「ああ……」
歯切れが悪い? 何か考えているのかな??
私も気にはなってたけど、武術となるとさすがに力の差が歴然だから参加は止めておいた。
エウロは出る予定なんだ。
ミネルは……出なさそう。
オーンとカウイは、どうするのかな?
そういえば、リーセさんが昔優勝した剣術の大会はいつあるのかな?
せっかくだから剣術の方は参加したいなぁ。
大会について色々と話している間に、目的地へと到着した。
エウロが持っていたドレスを運転手に渡しながら、私に尋ねてくる。
「アリアが受け取ったプレゼントも一緒にミネルの家に持っていくか?」
「うん、お願い」
私の言葉に頷くと、エウロがプレゼントの時計も運転手へと渡す。
そのまま“ヴェント”に乗り込むのかと思っていたら、なぜかエウロが私の近くへとやって来た。
「──アリア!」
「うん?」
エウロが緊張した面持ちで私を見つめている。
「大会の日だけど、見に来て……俺を応援してくれないか?」
エウロが私の両手をぎゅっと握りしめた。
「もし優勝したら……いや、絶対に優勝する!!」
握りしめた手が、さっきよりも強くなっている。
「優勝したら、アリアにプロポーズをする!!!」
…………へっ!?
プ、プロポーズの予告!!?
「その時、プロポーズの返事を聞かせてくれ!!」
-------
※ここから、エウロ視点に変わります。
アリアに別れを告げた後、そのままミネルの家へと向かった。
”ヴェント”を走らせながら、さっきのやり取りを思い出す。
ついに言った! 言ってしまった!!
興奮気味の俺だったが、ふとある事に気がつく。
……あっ!?
あーーー! 間違えた!!
自分の失敗に、思わず頭を抱えてしまう。
『プロポーズの返事を聞かせてくれ』って……肝心のプロポーズをしていないじゃないか!
普通はプロポーズしてから、言うセリフだよな?
さらに俺は優勝しないと、アリアにプロポーズができないし、返事も貰えないじゃないか!!
緊張しすぎて……俺はなんという取り返しのつかない間違いを!!!
考えれば考えるほど情けなくなり、再び頭を抱え込む。
俺の言葉にアリアは『分かった』と言ってくれた。
他にも何か言ってたけど……緊張しすぎて全く耳に入ってこなかった。
あの場でプロポーズして『大会で優勝したら、返事を聞かせてくれ』と言った方が良かったか?
今からでもプロポーズをしに行くべきか?
いや、俺、そもそも優勝しないとプロポーズできないんだった!!
……どうやら俺は、色々と間違えたようだ。
身もだえる俺を見て、心配になったのだろう。
運転手が「大丈夫ですか?」と声を掛けてくれた。
「ああ、大丈夫だ。ありがとう」
……はぁっ。
人と会話をした事で少し落ち着いた。
そもそも、俺の気持ちはもうアリアに伝わっている。
大会後に告白の返事をもらうと考えれば、間違いじゃないはずだ。
……でもなぁ。
格好よく花束を渡して、プロポーズをしたい気持ちもある。
ああ! 戻せるものなら、時間を戻したい!!
……こんな事を考えている時点で格好よくないな、俺。
サウロ兄様のプロポーズやマイヤと一緒にいる姿を見ているから、俺もアリアと手を繋いだり、腕を組んだり……とか想像しちゃうんだよな。
『エウロがいないと寂しい』とかアリアが言って。
俺が『アリアのそういう所も可愛いな、はは』と余裕の笑みを見せる。
そして、優しくアリアを抱き締めキスをする……とかしたい。
※注)想像上のエウロは強気です。
日に日に、そう思う気持ちが強くなっちゃったんだよな。
……よし!
まずは明日の婚約パーティーを無事に成功させた後、どうするか考えよう!
──そして翌日。
兄様とマイヤに内緒で開いた婚約パーティーは大成功で終わった。
兄様は恥ずかしがってたけど、嬉しそうだった。
マイヤも嬉し涙を流すほど喜んでたな。
改めて、俺もアリアと兄様たちのような関係になりたいと強く思った!
ひとまず、優勝できなかった時の事は考えない!
必ず大会で優勝して、アリアにプロポーズする!!
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