一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます

Teko

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高等部2年生

賽は投げられた 2/4

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「それ以上は逃げられる可能性がある」

確かに……。
こちらの動きに気づかれてしまった場合、証人を消されたり、情報自体を揉み消されたりする可能性が高い!
絶対に逃がさない為にも、ここからは時間との勝負だ!!

「私たちだけではさすがに限界がある。アリアの親達にも協力を仰ごう。それと、念には念を……ソフィーさん達にも頼もう」
「……その方が良さそうだな」

少しだけ不満そうな表情を浮かべたミネルがオーンに同意する。
ミネルの事だから、親の力を借りずにやりたかったのかもしれない。

「──そうだ!」

ふと思い出し、みんなの注意を引くように声を上げる。
増税の件で言おうと思っていた事があった!

「税金の件だけど、さっき言ったように街の人達に協力をお願いできないかな?」

ジメス上院議長の悪行の数々についてはともかく、税金の件については色々と不可解な点がある。
そもそも、お父様が全く気がついていないという状況がおかしい。

つまり、国に納められている税の金額も、提出、管理している書類なども本来あるべき正規の金額なんだと思う。
そうじゃないと、お父様達が異変に気がつくはずだ。


……となると、多めに徴収しているお金はどこへ? という疑問が生じた。

この国に住む人間はみんな、自分の住んでいる街を通して国に税金を払ってる。

もちろん、徴収された税金の中には国だけでなく街に払う分も含まれていて、決められた金額をそれぞれに分配しているはずだ。

国へ支払う分については基本的に金額が一定だけど、街に支払う分については人口や土地の状況によって必要額が異なる為、街ごとに徴収額を決める事を許可されている。

普通に考えて、街で多めに集めたお金が国に納める前にジメス上院議長へと流れているのだろう。

もしかすると……上院で税の管理に関わっている人たちも貰っている?

うーん、その可能性もある。
共犯者にすれば、外部に漏れる確率はぐっと減るからね。

この街──“シギレート”の人たちに協力してもらえば、過剰徴収分の金額が分かるはずだ。
その金額と一致する何かしらの証拠を見つける事ができれば、間違いなく有利になる!

「アリアの予想は、当たっていると思うよ」

思った事を素直に伝えると、近くにいたリーセさんが優しく微笑んだ。
言わずもがな、分かっていたのかもしれない。

「リオーンさん(アリア父)達にも協力してもらえれば、1週間と掛からずに調べられると思う」

リーセさん! なんて頼もしい!!

「そして、大体の証拠が集まった時点で、私たちが税の件を調べている事をジメス上院議長に気づかせよう」
「ええ!?」

リーセさんからの突然の提案に、驚きのあまり声が出る。

「なんでですか?」

「私たちの動きを知る事で、ジメス上院議長は多少なりとも焦るはずだ。何とかして証拠を消そうとするに違いない。逆を言えば、そちらに集中してもらった方が“シギレート”で動きやすいんじゃないかな?」

「確かに……」

「仮に街の人たちの力を借りたとしても、ジメス上院議長が気づく可能性は格段に低くなる。そんな余裕は無くなるからね」

余裕たっぷりに、リーセさんがにっこりと笑っている。

上手くいくかどうかは別にして、リーセさんの言うようにジメス上院議長の目が他に向いている方が、間違いなく動きやすい。

「そうしよう。決定で」

さすがルナだ。悩む素振りすらなく、真っ先に賛同を示している。
リーセさんの事となると返事が早い!

雰囲気的に他のみんなもリーセさんの提案に賛成みたいだ。
そんな中、オーンがカリーナ元王妃を見た。

「明日、カリーナ様の存在を知っている方たちに真実を話して頂けますか?」
「……ええ、もちろんです」

2人の間に何とも言えない微妙な空気が流れている。
オーンとしては色々と複雑だよなぁ。

すると、何か思い出したかのようにマイヤが口を開いた。

「そういえば、行方不明の人たちはどうするの? 1週間で見つけ出して、《光の魔法》で浄化させるのは難しくない? それともジメス上院議長の件が片付いてから見つけ出すの?」
「集める事はできます」

えっ! そうなの!?
みんなで一斉にカリーナ元王妃の方を見る。

「立場上、ジメスとノレイは行方不明の方たちと会う事ができないので、彼らは私の命令も聞くように操られています。私が招集を掛ければ、全員が集まるでしょう」

そうなんだ!
なんとありがたい!!

「人によっては、この街に来るまで数日掛かるかもしれませんが……」
「それは問題ありません。まずは、この街に集めてほしいのですが、お願いできますか?」

オーンの言葉にカリーナ元王妃が頷いた。

「そちらはどうにかなりそうだな」
「そうだね」

ミネルとオーンが頷き合っている。

みんなで相談した結果、行方不明者についてはカリーナ元王妃がこの街へと呼び寄せ、来た人たちから順番に《光の魔法》を使って浄化させることになった。

オーン……忙しくなりそう。

「執事のノレイさんは?」
「ああ、そちらも調べる必要があるな」

穏やかな口調で問うカウイに、ミネルが当然とばかりに答えている。
なるほど。

『家族が亡くなって路頭に迷っている所をジメス上院議長に助けられた』という違和感だらけの話を調べるのね。

「確信はまだないが……結果次第では、こちら側についてくれるかもしれない」

そうかもしれない。
けど、ノレイさんはジメス上院議長の事を信頼しているし、小さい頃からずっと仕えていた人でもある。

もし家族が亡くなった原因にジメス上院議長が関わっていたとしたら?
それはそれで、ノレイさんに伝えるのは酷な気もする。

……と、思ってしまう私は甘いのかもしれない。

「きっとノレイさんも気がついてると思いますよ」

エレがボソッと呟いた。
気がついてる? 何に??

「自分の家族が亡くなった理由にジメス上院議長が関わっているかもしれないという事を。その上で一緒にいるのだと思います」

えっ! なんで!?
予想もしていなかったエレの言葉に驚いてしまう。

「まぁ、何となくですが……気持ちは分かるような気がします。もちろん、調べる必要はあると思いますが、味方になってくれるかは分かりません。《闇の魔法》を使う者同士はお互いのオーラが見えないので、仮に『協力します』と言われても嘘かどうか見抜けませんし……」

エレの話を聞いたオーンが、難しい表情をしている。

「……調べてから、考えようか」
「そうだな。《知恵の魔法》で“ナレッジ”を見れば、恐らくノレイの家族の記録があるはずだ。この件は……父にも相談してみる」

そうだよね。
まずは事実関係を調査しないと、味方にできそうかどうかすらも分からない。

ノレイさんの件については、ミネルに任せる事になった。


「それじゃあ、明日……いや、もう今日だね」

オーンが横目で時計を見ている。
いつの間にか日付が変わっていたんだ。長い時間、話していたからなぁ。


「朝になったら、各自動き出そう。──さて」

そこでオーンが話題を変え、カリーナ元王妃を見た。

どうしたんだろう?
周りを見ると、みんなもカリーナ元王妃を真剣な眼差しで見つめている。

「アリアについてお聞きしたい」
「教えて頂きたいのですが、アリアは元の世界に戻る可能性はあるのかしら?」
「アリアを残す方法を教えて」
「アリアが元の場所へ戻らないという確証がほしい。そこで──」
「カリーナ様が願ってアリアちゃんが来たとしたら、願わなければ、アリアちゃんは戻らないのですか?」
「えーと、アリアとこれからも一緒に過ごす事はできますか?」
「ずっとアリアがここにいてくれるのか……それが難しいなら、俺も一緒に行く事はできますか?」
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