上 下
219 / 261
高等部2年生

打ち明ける決意(後編)

しおりを挟む
──ここで、ジュリア登場!
ジュリアの目立ちたがりで、自己顕示欲の強い性格をも考慮した完璧なシナリオ。

仮にジメス上院議長の計画を知らなかったとしても、ジュリアの性格上、救世主と言われて否定をする事はないだろう。
むしろ救世主と崇められ、調子に乗ったに違いない。

みんなも私と同じ事を考えているのか、さっきより顔が歪んでいる。

「どうしようもない性格ね」

セレスがボソッと呟いた。


『ジュリアはちょうど魔法を封じ込められた時期に、救世主として現れました』

と、カリーナ元王妃は話していた。

これは私の勝手な予想だけど、本当は魔法が使えるタイミングで登場させる予定だったんじゃないかな?
詠唱せずに魔法を使う姿を見せれば、救世主の信憑性が増すもんね。

……そう考えると、微妙なタイミングで登場したんだな。

街の人たちの前に立ったジュリアが、力強く宣言をする。


『私はこの国の為にグモード王とカリーナ王妃を復活させます。けれど、暗殺されたグモード王の復活には時間が必要です……そこで、まずはカリーナ王妃を復活させます!!』


突拍子もない発言に、最初は半信半疑だった民衆。
ところが、宣言から数日後──カリーナ元王妃が街の人たちの前に姿を現した。

これによって街全体が大いに盛り上がり、ジュリアが“本物の救世主”だと信じ切ってしまった。
民衆の心を1つにまとめた所で、ジュリアが自分の魔法について説明したらしい。


『私は詠唱せず、魔法を使う事ができます』


驚きはしたものの、街の人たちはすぐにジュリアの言葉を信じた。
それほどまでにカリーナ元王妃の復活は大きかったに違いない。

話しながら、突然、ジュリアが悲しい表情を浮かべる。


『──ただ、今は魔法を使う事ができません。私の事を面白く思っていないサール国王が、 自分の部下である“アリア”という人物を使い、私の魔法を封じ込めたのです』


な、なんて事だ。
私はこの街において、悪の手先みたいな扱いになっているらしい。

オーンと訪れたお店で出会った店員さんが、私の名前を聞いて驚いたのも頷ける。
悪の手先がいきなり目の前に現れたら……驚くのも無理はない。

うーん……今後、この街で私が“アリア”という事は、内緒にしておいた方がよさそうだなぁ。
封じ込めた魔法を解く必要があるから殺されはしないだろうけど、危険な事には変わりないよね?

みんなも心配そうな表情で私を見ている。
結局、いつも心配を掛けてしまう。

カリーナ元王妃は、ジュリアが街に身を潜めている理由についても教えてくれた。

『救世主として現れたジュリアは、一部の民衆に『サール国王に命を狙われているので匿ってほしい』と告げ、そのままこの街へ住む事になりました』

あくまで‟サール国王は悪”だと言いたいわけだ。

『ただ、これは表向きの話です。本当の目的は学校で起こした問題が落ち着くまでの間、この街で身を隠すようジメスが指示したようです』

ああ、私を拉致して、幼なじみ達を脅迫した問題ね。

『ジュリアは当初、ジメスの計画全てを把握していたわけではなかったのだと思います』

単純に、人から尊敬されたり、興味を向けられるのが嬉しかったんだろうなぁ。

『ところが、身を隠している間にジュリアがジメスの計画を知ってしまったのです。話を聞いたジュリアは、国が自分ものになると喜んでいました』

うわぁー、喜びそうー。

『ジメスはジュリアが自分の計画を人に話すのを恐れ、今は人と関わらない暮らしをさせています』



「──これが未だにジュリアが表舞台に出てこない理由みたい。それと──」

少し間を置き、ジメス上院議長の執事ノレイさんについても話をする。

「ノレイさんは幼少の頃、家族が亡くなって路頭に迷っている所をジメス上院議長に助けられたみたい。恩を感じているからこそ、あそこまでジメス上院議長に尽くしてるのかもしれない、と言ってたよ」

正直なところ、その話を聞いた際は『助けた人物がたまたま《闇の魔法》を使えたなんて事がある!? 』と、違和感しかなかったけど。

大事な部分だけを話したつもりだけど、それでも随分と時間が掛かってしまった。
聞き終えたオーンが、何かを考えるように手を口元にあてている。

「この街の人たちは、近々グモード王が復活すると信じているんだね」
「う、うん、そうみたい」

落ち着いた表情をしているけど、オーンとしては複雑な心境だろうな……。

「この街の人間が行動に移していないのは、ジメス上院議長が止めているからか?」
「恐らく……」

ミネルの言葉に私が頷く。

私の話を聞き終え、各々が何かを考えるような表情を浮かべている。
そんな中、ミネルが言葉を選ぶように、ゆっくりと私に問いかけてきた。


「──アリアの話を聞いて、みんな同じことを疑問に思ったはずだ。 隠す理由もないから代表して聞くが、なぜカリーナ元王妃は“アリアの魔法”の事を知っていたんだ? そして、なぜアリアにだけ話そうと思ったんだ?」

ミネルからの質問に、エウロが今気がついたとばかりに目を見開いている。

「あっ! そうだよな!!」
「……例外がいたか」

呆れたように呟きながらも、ミネルの視線は私に固定されたまま動いていない。

「まぁ、いい。──で、どうしてだ?」


……やっぱり、そうだよね。
周りを見渡しながら、みんなの表情を順番に確認していく。

みんなに話したとして、私やカリーナ元王妃、ジュリアが転生者だって信じてくれるかな?
……みんなは私のこと、どう思うのかな?


これを機に、みんなとの関係が変わってしまったらどうしよう……と不安がよぎる。

気持ちは正直だな。
この事が不安だったからこそ、最初に話さなかったのかもしれない。

けれど、みんなが疑問に思うであろう事も予想はしていた。
避けては通れない事が分かっている以上、真実を伝えなくてはならない。


「信じてもらえるか分からないけど……私とジュリア……それにカリーナ元王妃は別な世界から来た転生者なんだ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

転生幼女の愛され公爵令嬢

meimei
恋愛
地球日本国2005年生まれの女子高生だったはずの咲良(サクラ)は目が覚めたら3歳幼女だった。どうやら昨日転んで頭をぶつけて一気に 前世を思い出したらしい…。 愛されチートと加護、神獣 逆ハーレムと願望をすべて詰め込んだ作品に… (*ノω・*)テヘ なにぶん初めての素人作品なのでゆるーく読んで頂けたらありがたいです! 幼女からスタートなので逆ハーレムは先がながいです… 一応R15指定にしました(;・∀・) 注意: これは作者の妄想により書かれた すべてフィクションのお話です! 物や人、動物、植物、全てが妄想による産物なので宜しくお願いしますm(_ _)m また誤字脱字もゆるく流して頂けるとありがたいですm(_ _)m エール&いいね♡ありがとうございます!! とても嬉しく励みになります!! 投票ありがとうございました!!(*^^*)

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~

沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。 ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。 魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。 そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。 果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。 転生要素は薄いかもしれません。 最後まで執筆済み。完結は保障します。 前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。 長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。 カクヨム様にも投稿しています。

チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ
ファンタジー
 私は死んだ。  はずだったんだけど、 「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」  神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。  なんと幼女になっちゃいました。  まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!  エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか? *不定期更新になります *誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください! *ところどころほのぼのしてます( ^ω^ ) *小説家になろう様にも投稿させていただいています

お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」 「はぁ?」 静かな食堂の間。 主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。 同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。 いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。 「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」 「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」 父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。 「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」 アリスは家から一度出る決心をする。 それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。 アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。 彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。 「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」 アリスはため息をつく。 「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」 後悔したところでもう遅い。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

処理中です...