208 / 261
高等部2年生
カリーナ元王妃捕獲大作戦!! 1/4
しおりを挟む
カリーナ王妃のそっくりさんに会うべく、5人で例の一軒家へと向かう。
「カリーナ元王妃は、“本当”に病で亡くなっているんだよな?」
「そう聞いてるよ、としか私も言えない。ただ、死因は感染症だったから、一部の人しか看取れなかったと聞いている」
歩きながら、ミネルがオーンに確認している。
「……まぁ、仮に生きてたとしても80代か。オーンが見たのは若い時の王妃。どちらにせよ、考えにくいな」
何となくだけど、ミネルが想像している事が分かる。
「《癒しの魔法》には、死者の蘇生ができる禁断の魔法があるみたいなんだ。禁断の魔法を使って蘇ったとか……はあり得ないかな?」
以前、エレと行った特別図書館で読んだ本。
みんなも知ってるかもしれないけど、その時に得た知識をそのまま伝える。
「もしくは……」
私に続き、カウイが口を開く。
「留学中に読んだ本の中には、他者から生命エネルギーを奪い取る事で自身の細胞を活性化させる──つまり、若返る魔法というのがあったよ。これもまた禁止されている魔法だけどね」
「よく他国の禁断の魔法を知る事ができたな」
ミネルが素朴な疑問をカウイに投げかける。
この国では特別図書館に入れる人しか知りえない情報だもんね。
「留学先では禁断の魔法に関する書籍も自由に読めたよ」
「国によって全然ルールが異なるんだな」
エウロが感心したように頷いている。
「そういえば、私とオーンの報告しかしていないけど、ミネルとエウロ、カウイの方はどうだったの?」
「ああ、そうか。突然の事で話していなかったな。結論から言うと、似顔絵を見せても『見た事がある』と答えた人間はいなかった」
歩みを止める事なく、ミネルが話し続ける。
「だが、その中で疑わしい人物が1人だけいた」
「俺はミネルに言われるまで、全然気がつかなかったけど……」
「お前は人を信じすぎだ。疑う事を覚えた方がいい」
ミネルの助言? に、エウロが苦笑しながら、顎をポリポリとかいている。
「疑わしい人物にだけジュリアという名前を伝えたが、何の反応も示さなかった。この点については嘘をついているように見えなかったから、もしかすると名前を名乗っていないか、偽名を使っているのかもしれない」
名前はともかく、ジュリアを知っている可能性は高いという事かな?
自分の報告を終えたミネルが、今度はカウイの方へと目を向けた。
「カウイはどうだった?」
ミネルからの問い掛けに、カウイがゆっくりと首を横に振っている。
「残念ながら、知ってそうな人はいなかったよ」
「話している所申し訳ないけど──着いたよ」
オーンが立ち止まり、少し離れた場所に建つ一軒家を指差す。
考えるように一瞬だけ間を置いた後、ミネルが口を開いた。
「ひとまず僕とアリア、エウロの3人で行く。警護の人たちには、バレない距離でついてきてもらおう」
あれ? オーンとカウイは?
「2人は何かあった時の為に、ここで待機してくれ」
ミネルの指示に、オーンとカウイが静かに頷く。
みんなの動きを改めて確認すると、ミネルが私を見た。
「“魔法の色”が見えたと言ってたな? 本当はすぐにでも魔法を封じ込めてほしいが、こちらが怪しい行動をする事で何も話してくれない可能性もある。まずは様子を見る。だが、少しでも怪しい行動をしたら、すぐに魔法を封じ込めろ」
「分かった!」
勢いよく返事はしたけど……ジュリア以外の人の魔法を封じ込めた事がなかった。
やり方もよく分かっていないままなのに、上手く出来るんだろうか。
私の判断が遅れれば、ミネルとエウロにも被害が及ぶ。
失敗したら、どうしよう。
「余計な事は考えるな。アリアはその方が上手くいく」
私の不安を察してくれたのか、ミネルが横から声を掛けてくれる。
黙って頷くと、カウイが真剣な表情でミネルを見た。
「何分、待てばいい?」
「30分だ。もし家に招かれて、30分で出てこなかったら来てくれ」
「……分かった」
そう約束し、私とミネル、エウロが家に向かって歩き出す。
途中、エウロがミネルに尋ねた。
「どうして、このメンバーなんだ?」
そう言われれば、そうかも。
私が選ばれたのは魔法を封じ込める為だよね、きっと。
「オーンの場合は変装しているとはいえ、先ほどの話から顔を知られている可能性が高い。だから、避ける事にした」
なるほど。
「カウイは《火の魔法》だ。《水の魔法》とは相性が悪い」
家の近くまで来たところで、揃って足を止めた。
ミネルがさっきよりも小さい声でエウロに話し掛ける。
「エウロ。何かあれば、アリアを連れて逃げろ。一切、迷うな。それがお前を選んだ理由だ。いいな?」
淡々と話していたミネルの表情が、真剣なものへと変わっている。
戸惑いつつも、ミネルの気持ちに応えるようにエウロが返事をした。
「……分かった」
「い……」
『嫌だ』と、言い掛けた言葉をグッと飲み込む。
ただ『嫌だ』と言うだけなら簡単だ。
嫌だと否定するなら、それに見合う意見がないとダメだ。
みんなの無事を願うなら、私が魔法を封じ込めればいいだけの話だ。
もしくは逃げ出して、オーンとカウイに助けを求めた方が確実だ。
そう決意する私の隣で、エウロが柔らかい表情でミネルを見つめている。
「ミネルは、かっこいいな」
「よせ。そんな趣味はない」
不本意だと言わんばかりに、ミネルが険しい表情を浮かべる。
意味が伝わったのか、エウロが途端に慌て出した。
「い、いや、そういう意味じゃないぞ?」
「当たり前だ」
緊張した空気の中、2人のやり取りに思わず笑いそうになる。
でも、お陰で少しリラックスできたかも。
そこで一旦会話を止め、家の前まで移動する。
ドアの前に立ち、気持ちを整えたところでミネルが私とエウロを見た。
「名前を聞かれたら偽名を使えよ。さて、と。ドアをノックするぞ?」
「カリーナ元王妃は、“本当”に病で亡くなっているんだよな?」
「そう聞いてるよ、としか私も言えない。ただ、死因は感染症だったから、一部の人しか看取れなかったと聞いている」
歩きながら、ミネルがオーンに確認している。
「……まぁ、仮に生きてたとしても80代か。オーンが見たのは若い時の王妃。どちらにせよ、考えにくいな」
何となくだけど、ミネルが想像している事が分かる。
「《癒しの魔法》には、死者の蘇生ができる禁断の魔法があるみたいなんだ。禁断の魔法を使って蘇ったとか……はあり得ないかな?」
以前、エレと行った特別図書館で読んだ本。
みんなも知ってるかもしれないけど、その時に得た知識をそのまま伝える。
「もしくは……」
私に続き、カウイが口を開く。
「留学中に読んだ本の中には、他者から生命エネルギーを奪い取る事で自身の細胞を活性化させる──つまり、若返る魔法というのがあったよ。これもまた禁止されている魔法だけどね」
「よく他国の禁断の魔法を知る事ができたな」
ミネルが素朴な疑問をカウイに投げかける。
この国では特別図書館に入れる人しか知りえない情報だもんね。
「留学先では禁断の魔法に関する書籍も自由に読めたよ」
「国によって全然ルールが異なるんだな」
エウロが感心したように頷いている。
「そういえば、私とオーンの報告しかしていないけど、ミネルとエウロ、カウイの方はどうだったの?」
「ああ、そうか。突然の事で話していなかったな。結論から言うと、似顔絵を見せても『見た事がある』と答えた人間はいなかった」
歩みを止める事なく、ミネルが話し続ける。
「だが、その中で疑わしい人物が1人だけいた」
「俺はミネルに言われるまで、全然気がつかなかったけど……」
「お前は人を信じすぎだ。疑う事を覚えた方がいい」
ミネルの助言? に、エウロが苦笑しながら、顎をポリポリとかいている。
「疑わしい人物にだけジュリアという名前を伝えたが、何の反応も示さなかった。この点については嘘をついているように見えなかったから、もしかすると名前を名乗っていないか、偽名を使っているのかもしれない」
名前はともかく、ジュリアを知っている可能性は高いという事かな?
自分の報告を終えたミネルが、今度はカウイの方へと目を向けた。
「カウイはどうだった?」
ミネルからの問い掛けに、カウイがゆっくりと首を横に振っている。
「残念ながら、知ってそうな人はいなかったよ」
「話している所申し訳ないけど──着いたよ」
オーンが立ち止まり、少し離れた場所に建つ一軒家を指差す。
考えるように一瞬だけ間を置いた後、ミネルが口を開いた。
「ひとまず僕とアリア、エウロの3人で行く。警護の人たちには、バレない距離でついてきてもらおう」
あれ? オーンとカウイは?
「2人は何かあった時の為に、ここで待機してくれ」
ミネルの指示に、オーンとカウイが静かに頷く。
みんなの動きを改めて確認すると、ミネルが私を見た。
「“魔法の色”が見えたと言ってたな? 本当はすぐにでも魔法を封じ込めてほしいが、こちらが怪しい行動をする事で何も話してくれない可能性もある。まずは様子を見る。だが、少しでも怪しい行動をしたら、すぐに魔法を封じ込めろ」
「分かった!」
勢いよく返事はしたけど……ジュリア以外の人の魔法を封じ込めた事がなかった。
やり方もよく分かっていないままなのに、上手く出来るんだろうか。
私の判断が遅れれば、ミネルとエウロにも被害が及ぶ。
失敗したら、どうしよう。
「余計な事は考えるな。アリアはその方が上手くいく」
私の不安を察してくれたのか、ミネルが横から声を掛けてくれる。
黙って頷くと、カウイが真剣な表情でミネルを見た。
「何分、待てばいい?」
「30分だ。もし家に招かれて、30分で出てこなかったら来てくれ」
「……分かった」
そう約束し、私とミネル、エウロが家に向かって歩き出す。
途中、エウロがミネルに尋ねた。
「どうして、このメンバーなんだ?」
そう言われれば、そうかも。
私が選ばれたのは魔法を封じ込める為だよね、きっと。
「オーンの場合は変装しているとはいえ、先ほどの話から顔を知られている可能性が高い。だから、避ける事にした」
なるほど。
「カウイは《火の魔法》だ。《水の魔法》とは相性が悪い」
家の近くまで来たところで、揃って足を止めた。
ミネルがさっきよりも小さい声でエウロに話し掛ける。
「エウロ。何かあれば、アリアを連れて逃げろ。一切、迷うな。それがお前を選んだ理由だ。いいな?」
淡々と話していたミネルの表情が、真剣なものへと変わっている。
戸惑いつつも、ミネルの気持ちに応えるようにエウロが返事をした。
「……分かった」
「い……」
『嫌だ』と、言い掛けた言葉をグッと飲み込む。
ただ『嫌だ』と言うだけなら簡単だ。
嫌だと否定するなら、それに見合う意見がないとダメだ。
みんなの無事を願うなら、私が魔法を封じ込めればいいだけの話だ。
もしくは逃げ出して、オーンとカウイに助けを求めた方が確実だ。
そう決意する私の隣で、エウロが柔らかい表情でミネルを見つめている。
「ミネルは、かっこいいな」
「よせ。そんな趣味はない」
不本意だと言わんばかりに、ミネルが険しい表情を浮かべる。
意味が伝わったのか、エウロが途端に慌て出した。
「い、いや、そういう意味じゃないぞ?」
「当たり前だ」
緊張した空気の中、2人のやり取りに思わず笑いそうになる。
でも、お陰で少しリラックスできたかも。
そこで一旦会話を止め、家の前まで移動する。
ドアの前に立ち、気持ちを整えたところでミネルが私とエウロを見た。
「名前を聞かれたら偽名を使えよ。さて、と。ドアをノックするぞ?」
10
お気に入りに追加
4,954
あなたにおすすめの小説

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる