一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます

Teko

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高等部2年生

アプローチ ( ダンス )の時間 ~エウロ、そして~

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「うん……」

私が言うのもなんだけど、大丈夫かな?
これから戦いに挑むような気合の入りようだけど……。

エウロの緊張が伝わる中、ダンスの輪に入って踊り始める。

踊りも……緊張しているのか、少しぎこちない。
だけど──

「エウロも私と同じでダンスが苦手だって話してたよね? それなのに普通に踊れるなんて……」
「『踊れるなんて?』……なんだ?」

私の言葉に、エウロが少し興奮気味に聞き返してくる。

「さすがだなぁと思って」
「……そっか、そうだよなぁ」

んん? 少し落ち込んでいる?

「アリアなら、そう言うよなぁ。俺はまだまだだな」

んん? まだまだ??


「アリアをドキドキさせれないなんて、まだまだだ」


……それを面と向かって言われると、ドキドキしちゃうのですが……。
戸惑っていると、エウロがきょとんとした顔で私を見つめてきた。

「どうした? 俺、何か変な事を言ったか?」

さらに無自覚ですか。

「ううん、変な事は(多分)言ってないよ」
「そうか、良かった。もっと上手くアリアをリードして踊る予定だったんだけどなー」

エウロが肩を落としている。
……そうだったんだ。

「ぎこちなさはあるけど、ちゃんとリードできてるよ?」
「アリアが驚くくらいのダンスを見せたかったんだ!」

驚くくらいのダンスって、どんなダンスなんだろう?

エウロが少しテンパってるからかな?
多分、無意識に何でも話しているエウロが少し面白くもあり、可愛くも見える。

「エウロは向上心が高いよね。いつも現状で満足していない気がする」
「そうか?」

エウロの問いに、こくりと頷く。

「うん。実は幼なじみの中で一番向上心が高いのかも。それって、すごく素敵な事だよね」
「えっ!?」
「えっ!?」

そんなに驚かれるとは思っていなかったので、私まで驚いてしまった。

「まさか想像していた事を言われるとは思っていなかった」
「想像?」

私が聞き返すと、エウロが「うんうん」と何かに納得している。

「いや、こっちの話だから気にしなくていいんだ。……俺、もっと頑張るから!」
「うん!?」

明るいエウロの声につられて、つい返事をしてしまった。
だけど……一体、何を頑張るんだろう?

途中からは緊張も解け、無事に踊り終える事が出来た。

エウロと楽しく会話をしながら戻っていると、壁沿いにリーセさんが立っているのが目に入った。
誰かを待っているようにも見える。

「どうしたんですか? リーセさん?」
「ああ、ルナを待っているんだ」

ああ、ルナ?
そういえば姿を見かけないけど、どこに行ったのかな?

「どうやら、もう少し時間が掛かりそうでね。もしよければ、ルナを待っている間、私と踊ってくれるかい?」

リーセさんが優しく口元を緩める。

「あっ、はい。エウロ、行ってくるね」
「なんて自然な誘い方なんだ……」

エウロがなぜか感心したように、リーセさんを見つめている。

そのままエウロと別れ、リーセさんにエスコートされながら広間の中央へと向かう。
上手くリードされながら踊っていると、リーセさんがゆっくりと口を開いた。

「ルナがね……『アリアと踊れるのが男性陣ばかりでずるい』とずっと話していてね」
「は、はぁ?」

突然どうしたんだろう?
珍しくリーセさんが、口を濁している。

「『準備が終わるまで、兄様は必ずアリアと踊ってて』と言われたんだ」
「ああ、なるほど。それでダンスを申し込んでくれたんですね」

ルナの準備って、何だろう?

「ごめん、ごめん。誤解される言い方をしてしまったね。ルナに頼まれなくてもアリアにはダンスを申し込んでいたよ」

申し訳なさそうに肩をすくめつつ、リーセさんが柔らかく目を細める。

「あ、ありがとうございます。それで、ルナはどうしたんですか?」
「ああ、うん。ルナが信じられない計画を思いついてね」
「は、はぁ??」

信じられない計画……?
困惑する私に対し、リーセさんは苦笑いを浮かべている。

「うーん、アリアならきっと笑ってくれると思うんだけど……」
「あのー、先ほどから何の話をしているのか……」

状況がさっぱり呑み込めずに首を傾げていると、ふいにリーセさんが私の奥へと目を向けた。

「──あっ、きた」

きた??

踊りながら、リーセさんの視線の先を追う。
その先には髪を後ろで1つに束ね、黒のタキシードに黒の蝶タイをつけた人が立っていた。


──えっ!!
ま、まさか、あれって……ル、ルナ!?

いや、まさかじゃなく、ルナだ!!
んん? さっきまで、キレイなドレスを着ていたよね??

「……ルナが来たから、行こうか」
「あっ、はい?」

踊るのを止め、2人でルナの所まで歩いて行く。
ルナを見に来たのか、いつの間にか幼なじみ達も集まっていた。

「ルナ、どうしたのよ? その格好は!?」

呆れた表情で、セレスがルナに話し掛けている。

「アリアと踊ろうと思って、2着持ってきた」
「ほ、本当に踊るの? 男性のパートを?」

マイヤは驚きすぎて、“表の顔”を完全に忘れている。

「うん、完璧だし」

一見無表情に見えるルナだけど、(私から見ると)得意げな顔をしている。

うん!
遠目でも思ったけど、スタイルがいいからタキシード姿も似合ってる!

「ルナは、何でも着こなすね」

笑顔で褒めると、ルナが(分かりにくいけど)嬉しそうに頷いた。

「アリアなら、そう言ってくれると思った。私も兄様とは踊り終わったから、後はアリアだけ。アリア、私とも踊って」

なるほど。
リーセさんの歯切れが悪かった理由はこれかぁ。

すごい! こんな事、全然思いつかなかったよ!
ルナって……発想が面白い!!

「あはは。踊ろう、踊ろう」

ルナの手を取り、歩き出す。
すると、ルナが一度足を止め、後ろにいる幼なじみ達を見た。


「アリアと最後に踊るのは、“私”だから」


ルナの口角が微妙に上がった(ように見えた)。

後ろから、ミネルとオーンの声が聞こえてくる。

「あいつを参加させたのが間違いだった(家に閉じ込めておけば良かった)」
「……これがルナの作戦だとしたら、やられたね(アリアの印象に残るのがルナになってしまう)」

エレとミネルの妹ウィズちゃんの可愛い声も聞こえてくる。

「ちなみに最初に踊った……アリアの初めては“僕”ですから」
「じゃあ、ウィズは最後、あーちゃんに抱きつきます(兄さまを巻き込んで抱きつくので、任せて下さい)」
「……させないよ」

驚いているエウロと冷静なカウイの声も聞こえる。

「えっ? あ、あれは、ルナなのか!?」
「気がつかないなんて、エウロらしいね」

心底悔しそうなセレスと、呆れ返ったマイヤの声も聞こえる。

「悔しいわ! こんな手があったなんて!! ……知らない男性と踊るより、“心の友”と踊る方が……!! 」

「もう何からツッコんでいいのか、分からないわ。ここで悔しがるセレスちゃんもおかしいわよ。何より誰もルナちゃんの行動について、ツッコまないのがおかしいわよ(そして、エウロくんは、いつもずれてるのよ!!)」


本日何度目かのダンスホールへと戻り、早速ルナと踊り始める。

背が高い上にあまりにも堂々としているせいか、周りはルナが女性だと気づいていないらしい。
顔の整ったキレイな男性と思っているのかな??


いや、そんな事より……な、なんと完璧なダンス!
リードも完璧です!!

「面白い事を考えたね、ルナ」
「うん。ミネルより……じゃなかった。ミネル達より、私と兄様の方がアリアを好きだし。仲もいいし」

ミネルの強調が強い(笑)

「それなのに踊れないのはズルいと思って(邪魔したかったし)」

そう言って、少し拗ねるルナが可愛い。

「あはは。貴重な体験というか、私もルナと踊れて嬉しい。友だちと踊るのも楽しいね!」
「うん、私も楽しい」

ルナがくしゃっと顔を綻ばせた。
私の大好きな笑顔だ。


それにしても、まさかラストに踊る人がルナになるとは……。
予想外の結末ではあったけれど、パーティーは何とか無事? に終了した。
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