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高等部2年生
ダブルデートかと思いきや2回目デート
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──!?
「あっ、ミネルくんもかな?」
──!??
「な、なんで……」
「知ってるかって?」
こくんこくんと何度も頷く。
オーンの事は知られているけど、カウイやミネルの事まで知られているなんて!!
「カウイくんは分かりやすいし、ミネルくんとは2人で出掛けた話を聞いてたから(もっと言うなら、エウロくんの事も知ってるよ)」
そ、そうなんだ。
カウイが分かりやすいとうより、マイヤが鋭い気がするけど……これは相談するチャンスなのでは!?
意を決して、ずっと悩んでいた事を相談してみる。
「3人が私を好きという……夢みたいな事が起きてるんだけど」
私の言葉を聞き、マイヤがニヤニヤし始めた。
「3人はお互いに私の事を好きと言う事は知らないと思うんだ」
「…………」
一瞬マイヤが斜め上を見たのが気になるけど、話を続ける。
「その事を知ったら、3人の友人関係が崩れちゃうかと思うと、どういう態度を取ればいいのか困ってて」
自分から話し始めた事ではあるけど、何かこう……“いい女”発言をしてるようで妙に抵抗がある。
一通り話し終えたところで、マイヤが楽しげに口を開いた。
「アリアちゃんが心配するような事は、1つもないから大丈夫(なぜならアリアちゃん以外は、みんな知ってるから)」
マイヤ……私を気にさせまいと言ってくれてるのかな?
「それにしても……周りにかっこいい人が多いんだから、誰か1人くらい好きになってもおかしくないのに」
「それを言うなら、マイヤもじゃない?」
私がツッコむと、マイヤがぐっと口をつぐんだ。
「わ、私の場合は色々あったから、頭が回らなかったのよ」
ああ、ケイアさん(マイヤの母)の事か。
そういう意味だと、私もそうなのかもしれない。
私を好きになる事はないと思い込んでいたから、知らず知らずのうちに恋愛対象から外していたのかも。
「んー、もう面倒だから話すけど、オーンくん達はお互いにアリアちゃんが好きな事を知ってるよ(もっと言うならエウロくんも)」
えーーーー!!!
「だから、一切心配する必要はないよ」
マイヤが“知ってて当然”というように話している。
「アリアちゃんが幼なじみの誰かを好きになった時は、友人関係が壊れる可能性はあると思うけど(そもそも友人関係なのかも分からないけど)」
えっ!? えーーーー!!!
「その事を気にして、遠慮をするのだけは止めてあげてね」
穏やかに、それでいて少しだけ真剣な表情でマイヤが話す。
「(もう少しだけ、まだ誰も選んでほしくない気持ちもあるけど)みんなが真剣にアリアちゃんを想っている事を知っているから、時が来たら遠慮はせずに正直な気持ちを伝えてほしい」
……うん、そうだね。マイヤの言う通りだ。
「ありがとう、マイヤ」
マイヤの真摯な言葉に感謝し、お礼を伝える。
その途端、マイヤの表情が含みのある笑い方へと変わった。
「心配する事はないと思うよ。むしろ、アリアちゃんから積極的に誘った方がいいと思うよ?」
「な、なんで!?」
なるべく波風を立てたくないのに、私から誘うの!?
提案の意図が分からず慌てて問いただすと、マイヤが諭すように答える。
「みんなで一緒にいても、今までの関係と変わらないでしょう? 関係や意識を変える為に、アリアちゃんから行動に移すのはいい案だと思うけど」
な、なるほど。そうかもしれない。
「ところで、アリアちゃんは誰が好みの顔なの?」
……ん? 好みの顔?
みんなイケメンだから、あまり考えた事がなかったなぁ。
「マイヤはいるの?」
「顔だけなら、エウロくんかな。今日会うライリーくんも好みだけど」
偶然だけど、どちらも《風の魔法》を使う。
マイヤは爽やかな人が好みの顔なのかな?
「ただ頼りたいのはオーンくんみたいなタイプなんだよね」
マイヤの口調が徐々に盛り上がっている。
「将来性を考えるならミネルくんかな。将来、絶対にお金に困らないという保証があるから!」
……そっか。良かった。
自分の意志で色々考えれるようになったんだな。
安心する私を余所に、マイヤは活き活きと語り続けている。
「アリアちゃんに接する姿を見ると……甘えるならカウイくんかなぁ」
結局、盛り上がったマイヤの話をずっと聞いてる内に、目的地である“エルスターレ”へと着いた。
私的にも、マイヤに話す事で少しスッキリしたかも。
相談して良かったな。
“ヴェント”から降り、マイヤと一緒に待ち合わせ場所へと向かう。
数分と掛からずに目的地へ到着すると、そこには既にリーセさんとライリーさんが待っていた。
「お待たせしました」
2人の前でマイヤが丁寧に会釈をする。
「いえ、時間通りですよ。それに女性を待たせるわけにはいきませんから」
特に気にした様子を見せる事もなく、ライリーさんが笑顔で挨拶をしている。
マイヤに気を遣わせないスマートな返事。
第一印象(ではないけど)はとてもよい!!
それぞれが挨拶を終えると、ライリーさんが口を開いた。
「これから、どうしましょうか?」
ライリーさんの言葉にリーセさんが時計を見た。
「2人ずつ分かれようか。3時間後、ランチを食べ終えたぐらいのタイミングでここに集合して、残った時間は4人で出掛ける……というのはどうかな?」
──えっ!?
「いいですね。そうしましょう」
ライリーさんがリーセさんの提案に同意する。
「じゃあ、行こうか。アリア」
リーセさんが私の肩を抱く。
そして、ライリーさんとマイヤに軽く手を振ると、ゆっくり歩き始めた。
えっ? ええっ!?
……そもそも、マイヤが2人だけだと緊張するからダブルデートになったんだよね?
という事は、すぐ二手に分かれるのは困るよね!?
「あのリーセさん。ライリーさんに気を遣ったのかもしれませんが、マイヤが……」
「マイヤ? 大丈夫そうだけど?」
リーセさんがチラッと後ろに目を向ける。
……へっ!?
急いで後ろを振り返ると、マイヤがこちらに向かって笑顔で手を振っている。
……全く緊張しているようには見えない。
あの時の『緊張するの』と言ったマイヤはどこへいったの?
もしかして、私がいなくても良かったんじゃない!?
頭の中を疑問符だらけにしながら歩いていると、リーセさんが私の肩からそっと手を離した。
「さて、私たちは2回目のデートでも始めようか。アリアは“手”と“腕”どちらがいい?」
手と腕?
私が質問の意味について悩んでいると、リーセさんが笑った。
「そうだなぁ……この前は腕だったから、手にしようか。アリア、右手を出して?」
言われるがままに右手を出すと、リーセさんが私の手を優しく握った。
「よし、行こうか」
どこか嬉しそうにリーセさんが歩き出す。
リーセさんは私と手を繋いでる事など、微塵も気にしていない様子。
私の方はというと……さっきからドキドキしっぱなしなんですけど!?
繋いだ手を眺めつつ、思った事をそのまま声に出して尋ねる。
「リーセさんは、誰にでもこういう事をするんですか?」
隣を見上げると、リーセさんがきょとんとした顔をしている。
「“こういう事”というのは、手を繋いでる事かな?」
「は、はい」
戸惑いながらも返事をすると、少しだけ寂しそうにリーセさんが肩をすくめた。
「私が誰とでも手を繋ぐような男だと?」
──あ、しまった!
失礼な事を言っちゃった!!
「いえ! そういう風には思っていません!」
慌てて否定する私の姿に、リーセさんがクスッと笑ってみせた。
思ってはいないけど……そうではないとしたら、なんでだろう?
私の中で考えられる選択肢は2つ。
1番、私をルナ(妹)のように可愛がってくれている。
2番、もしかすると私の事が好き?
うーん。気に入ってくれてるとは思うけど……好き?
リーセさんがいつも余裕な表情をしているからかな?
……ピンと来ない。
「アリア、覚えておいて」
「はい?」
私の眼をジッと見つめると、リーセさんが優しく微笑んだ。
「私が手を繋いだり、腕を組んだりするのは、妹のルナとお付き合いしたいと思っている女性だけだよ」
ま、まさかの2番!? 本当に??
気になるけど、真実を確かめるのは……無理だ。
『リーセさんは、私の事が好きなんですか?』と、心の中では聞けるのに直接聞けない私。
私の動揺を知ってか知らずか、リーセさんが「ふふっ」と声を立てて笑った。
「さて、どこを見ようか」
何事もなかったかのようにリーセさんがお店を見渡している。
あまりにも普通に言うから、からかわれているのかな? とついつい疑ってしまう。
「……リーセさんが動揺する事って、あるんですか?」
「動揺? うーん……」
過去の出来事を思い出そうとしているのか、 リーセさんが頭を悩ませている。
すぐに出てこないという事は、今までそういった経験がないのかな?
「記憶にないという事は、ないのかもしれないね」
リーセさん自身も同じ結論に至ったらしい。
はにかんだような表情を見せた後、そっと話題を変えてきた。
「アリアは、どこか行きたい場所はある?」
えーと……あっ!
「ルナお気に入りのクッキーを買いましょうか」
私の提案にリーセさんが微笑む。
「そうだね。ありがとう」
色々な会話をしつつ、リーセさんとクッキーが売っているお店へと向かう。
すると、ふと思い出したようにリーセさんが口を開いた。
「以前“エルスターレ”に来た時、アリアに『ルナと笑顔が似ている』って言われたんだ」
……そういえば、言ったかも。
初めて見た表情だったから、覚えている。
「家族にすら言われた事のないセリフだったから嬉しくて。……その時に思ったんだ。ルナの提案に本気で乗ってもいいかもしれないって」
ルナの提案??
私の不思議そうな顔を見たリーセさんが、軽く頬を緩める。
「ルナには話してあるから、今度ルナに聞いてごらん」
「は、はぁ」
リーセさんの発言に首を傾げながらも、ルナお気に入りのクッキーのお店へと入り、買い物を済ませる。
そのまま他の買い物を続けていると、リーセさんが街中に飾られていた時計へと視線を動かした。
「そろそろお昼でも食べようか」
「そうですね。何を食べましょうか?」
「…………」
……あれ? リーセさんの返事がない。
見上げると、リーセさんがどこか遠くを眺めている。
疑問に思いつつ目線の先を追うと、ライリーさんが走っている姿が見えた。
──ライリーさん!?
必死に周りを見渡し、焦った表情をしている。
……明らかに様子がおかしい。
「ライリーさん、どうしたんでしょう?」
「……ライリーさんの所へ行こう」
リーセさんもライリーさんの様子がおかしいと思ったんだ!
急いでライリーさんの方へ向かうと、すぐに私たちに気づき、足早に近づいてきた。
「ライリーさん、何かあったんですか?」
私の質問に、ライリーさんが息を切らしながら答える。
「一緒に歩いていたはずのマイヤさんが……いなくなったんです!」
「あっ、ミネルくんもかな?」
──!??
「な、なんで……」
「知ってるかって?」
こくんこくんと何度も頷く。
オーンの事は知られているけど、カウイやミネルの事まで知られているなんて!!
「カウイくんは分かりやすいし、ミネルくんとは2人で出掛けた話を聞いてたから(もっと言うなら、エウロくんの事も知ってるよ)」
そ、そうなんだ。
カウイが分かりやすいとうより、マイヤが鋭い気がするけど……これは相談するチャンスなのでは!?
意を決して、ずっと悩んでいた事を相談してみる。
「3人が私を好きという……夢みたいな事が起きてるんだけど」
私の言葉を聞き、マイヤがニヤニヤし始めた。
「3人はお互いに私の事を好きと言う事は知らないと思うんだ」
「…………」
一瞬マイヤが斜め上を見たのが気になるけど、話を続ける。
「その事を知ったら、3人の友人関係が崩れちゃうかと思うと、どういう態度を取ればいいのか困ってて」
自分から話し始めた事ではあるけど、何かこう……“いい女”発言をしてるようで妙に抵抗がある。
一通り話し終えたところで、マイヤが楽しげに口を開いた。
「アリアちゃんが心配するような事は、1つもないから大丈夫(なぜならアリアちゃん以外は、みんな知ってるから)」
マイヤ……私を気にさせまいと言ってくれてるのかな?
「それにしても……周りにかっこいい人が多いんだから、誰か1人くらい好きになってもおかしくないのに」
「それを言うなら、マイヤもじゃない?」
私がツッコむと、マイヤがぐっと口をつぐんだ。
「わ、私の場合は色々あったから、頭が回らなかったのよ」
ああ、ケイアさん(マイヤの母)の事か。
そういう意味だと、私もそうなのかもしれない。
私を好きになる事はないと思い込んでいたから、知らず知らずのうちに恋愛対象から外していたのかも。
「んー、もう面倒だから話すけど、オーンくん達はお互いにアリアちゃんが好きな事を知ってるよ(もっと言うならエウロくんも)」
えーーーー!!!
「だから、一切心配する必要はないよ」
マイヤが“知ってて当然”というように話している。
「アリアちゃんが幼なじみの誰かを好きになった時は、友人関係が壊れる可能性はあると思うけど(そもそも友人関係なのかも分からないけど)」
えっ!? えーーーー!!!
「その事を気にして、遠慮をするのだけは止めてあげてね」
穏やかに、それでいて少しだけ真剣な表情でマイヤが話す。
「(もう少しだけ、まだ誰も選んでほしくない気持ちもあるけど)みんなが真剣にアリアちゃんを想っている事を知っているから、時が来たら遠慮はせずに正直な気持ちを伝えてほしい」
……うん、そうだね。マイヤの言う通りだ。
「ありがとう、マイヤ」
マイヤの真摯な言葉に感謝し、お礼を伝える。
その途端、マイヤの表情が含みのある笑い方へと変わった。
「心配する事はないと思うよ。むしろ、アリアちゃんから積極的に誘った方がいいと思うよ?」
「な、なんで!?」
なるべく波風を立てたくないのに、私から誘うの!?
提案の意図が分からず慌てて問いただすと、マイヤが諭すように答える。
「みんなで一緒にいても、今までの関係と変わらないでしょう? 関係や意識を変える為に、アリアちゃんから行動に移すのはいい案だと思うけど」
な、なるほど。そうかもしれない。
「ところで、アリアちゃんは誰が好みの顔なの?」
……ん? 好みの顔?
みんなイケメンだから、あまり考えた事がなかったなぁ。
「マイヤはいるの?」
「顔だけなら、エウロくんかな。今日会うライリーくんも好みだけど」
偶然だけど、どちらも《風の魔法》を使う。
マイヤは爽やかな人が好みの顔なのかな?
「ただ頼りたいのはオーンくんみたいなタイプなんだよね」
マイヤの口調が徐々に盛り上がっている。
「将来性を考えるならミネルくんかな。将来、絶対にお金に困らないという保証があるから!」
……そっか。良かった。
自分の意志で色々考えれるようになったんだな。
安心する私を余所に、マイヤは活き活きと語り続けている。
「アリアちゃんに接する姿を見ると……甘えるならカウイくんかなぁ」
結局、盛り上がったマイヤの話をずっと聞いてる内に、目的地である“エルスターレ”へと着いた。
私的にも、マイヤに話す事で少しスッキリしたかも。
相談して良かったな。
“ヴェント”から降り、マイヤと一緒に待ち合わせ場所へと向かう。
数分と掛からずに目的地へ到着すると、そこには既にリーセさんとライリーさんが待っていた。
「お待たせしました」
2人の前でマイヤが丁寧に会釈をする。
「いえ、時間通りですよ。それに女性を待たせるわけにはいきませんから」
特に気にした様子を見せる事もなく、ライリーさんが笑顔で挨拶をしている。
マイヤに気を遣わせないスマートな返事。
第一印象(ではないけど)はとてもよい!!
それぞれが挨拶を終えると、ライリーさんが口を開いた。
「これから、どうしましょうか?」
ライリーさんの言葉にリーセさんが時計を見た。
「2人ずつ分かれようか。3時間後、ランチを食べ終えたぐらいのタイミングでここに集合して、残った時間は4人で出掛ける……というのはどうかな?」
──えっ!?
「いいですね。そうしましょう」
ライリーさんがリーセさんの提案に同意する。
「じゃあ、行こうか。アリア」
リーセさんが私の肩を抱く。
そして、ライリーさんとマイヤに軽く手を振ると、ゆっくり歩き始めた。
えっ? ええっ!?
……そもそも、マイヤが2人だけだと緊張するからダブルデートになったんだよね?
という事は、すぐ二手に分かれるのは困るよね!?
「あのリーセさん。ライリーさんに気を遣ったのかもしれませんが、マイヤが……」
「マイヤ? 大丈夫そうだけど?」
リーセさんがチラッと後ろに目を向ける。
……へっ!?
急いで後ろを振り返ると、マイヤがこちらに向かって笑顔で手を振っている。
……全く緊張しているようには見えない。
あの時の『緊張するの』と言ったマイヤはどこへいったの?
もしかして、私がいなくても良かったんじゃない!?
頭の中を疑問符だらけにしながら歩いていると、リーセさんが私の肩からそっと手を離した。
「さて、私たちは2回目のデートでも始めようか。アリアは“手”と“腕”どちらがいい?」
手と腕?
私が質問の意味について悩んでいると、リーセさんが笑った。
「そうだなぁ……この前は腕だったから、手にしようか。アリア、右手を出して?」
言われるがままに右手を出すと、リーセさんが私の手を優しく握った。
「よし、行こうか」
どこか嬉しそうにリーセさんが歩き出す。
リーセさんは私と手を繋いでる事など、微塵も気にしていない様子。
私の方はというと……さっきからドキドキしっぱなしなんですけど!?
繋いだ手を眺めつつ、思った事をそのまま声に出して尋ねる。
「リーセさんは、誰にでもこういう事をするんですか?」
隣を見上げると、リーセさんがきょとんとした顔をしている。
「“こういう事”というのは、手を繋いでる事かな?」
「は、はい」
戸惑いながらも返事をすると、少しだけ寂しそうにリーセさんが肩をすくめた。
「私が誰とでも手を繋ぐような男だと?」
──あ、しまった!
失礼な事を言っちゃった!!
「いえ! そういう風には思っていません!」
慌てて否定する私の姿に、リーセさんがクスッと笑ってみせた。
思ってはいないけど……そうではないとしたら、なんでだろう?
私の中で考えられる選択肢は2つ。
1番、私をルナ(妹)のように可愛がってくれている。
2番、もしかすると私の事が好き?
うーん。気に入ってくれてるとは思うけど……好き?
リーセさんがいつも余裕な表情をしているからかな?
……ピンと来ない。
「アリア、覚えておいて」
「はい?」
私の眼をジッと見つめると、リーセさんが優しく微笑んだ。
「私が手を繋いだり、腕を組んだりするのは、妹のルナとお付き合いしたいと思っている女性だけだよ」
ま、まさかの2番!? 本当に??
気になるけど、真実を確かめるのは……無理だ。
『リーセさんは、私の事が好きなんですか?』と、心の中では聞けるのに直接聞けない私。
私の動揺を知ってか知らずか、リーセさんが「ふふっ」と声を立てて笑った。
「さて、どこを見ようか」
何事もなかったかのようにリーセさんがお店を見渡している。
あまりにも普通に言うから、からかわれているのかな? とついつい疑ってしまう。
「……リーセさんが動揺する事って、あるんですか?」
「動揺? うーん……」
過去の出来事を思い出そうとしているのか、 リーセさんが頭を悩ませている。
すぐに出てこないという事は、今までそういった経験がないのかな?
「記憶にないという事は、ないのかもしれないね」
リーセさん自身も同じ結論に至ったらしい。
はにかんだような表情を見せた後、そっと話題を変えてきた。
「アリアは、どこか行きたい場所はある?」
えーと……あっ!
「ルナお気に入りのクッキーを買いましょうか」
私の提案にリーセさんが微笑む。
「そうだね。ありがとう」
色々な会話をしつつ、リーセさんとクッキーが売っているお店へと向かう。
すると、ふと思い出したようにリーセさんが口を開いた。
「以前“エルスターレ”に来た時、アリアに『ルナと笑顔が似ている』って言われたんだ」
……そういえば、言ったかも。
初めて見た表情だったから、覚えている。
「家族にすら言われた事のないセリフだったから嬉しくて。……その時に思ったんだ。ルナの提案に本気で乗ってもいいかもしれないって」
ルナの提案??
私の不思議そうな顔を見たリーセさんが、軽く頬を緩める。
「ルナには話してあるから、今度ルナに聞いてごらん」
「は、はぁ」
リーセさんの発言に首を傾げながらも、ルナお気に入りのクッキーのお店へと入り、買い物を済ませる。
そのまま他の買い物を続けていると、リーセさんが街中に飾られていた時計へと視線を動かした。
「そろそろお昼でも食べようか」
「そうですね。何を食べましょうか?」
「…………」
……あれ? リーセさんの返事がない。
見上げると、リーセさんがどこか遠くを眺めている。
疑問に思いつつ目線の先を追うと、ライリーさんが走っている姿が見えた。
──ライリーさん!?
必死に周りを見渡し、焦った表情をしている。
……明らかに様子がおかしい。
「ライリーさん、どうしたんでしょう?」
「……ライリーさんの所へ行こう」
リーセさんもライリーさんの様子がおかしいと思ったんだ!
急いでライリーさんの方へ向かうと、すぐに私たちに気づき、足早に近づいてきた。
「ライリーさん、何かあったんですか?」
私の質問に、ライリーさんが息を切らしながら答える。
「一緒に歩いていたはずのマイヤさんが……いなくなったんです!」
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