一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます

Teko

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高等部2年生

未来への勧誘(前編)

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……まずい! 非常にまずいっ!!

私の顔に出てしまう性格が災いし、ミネルにキスの事がバレてしまった。
あの後もしつこく詰め寄られてしまい、どうなる事かと思った。

偶然にもエレと出会えた事で、ミネルとの会話は中断されたけど……。

本当に危なかった。
エレのお陰で、キスの相手がエウロという事は気づかれずにすんだ。

あの時の話を蒸し返されるのは、エウロにとって本意じゃないと思う。
何より、事故みたいなキスが原因で、エウロが罪悪感を持ってしまうのも嫌だ。

とはいえ、ミネルの性格上、絶対に相手を探し出すはずだ。
こうなった以上、エウロにはミネルにバレた事を正直に伝えよう。
先回りして……謝罪しよう。



──そして、次の日。
エウロには昨日のうちに手紙を書き、受ける授業を聞いておいた。
早速、空いた時間を利用してエウロが授業を受ける教室へと向かう。

隠れて待っていると、エウロが友人と楽しそうに話しながら歩いてきた。

「エ、エウロ!」

きょろきょろと周りを警戒しつつ、エウロに声を掛ける。

「ああ、アリア。どうした?」

笑顔でエウロが私に近づいてくる。

「……少しだけ、2人で話していい?」

不思議そうな表情を見せながらも、エウロが「ああ」と頷いた。
一緒にいる友人にも「先に行っててくれ」と声を掛けている。

「ごめんね。授業前に」
「いや、いいけど……どうした?」

もう一度、周りをきょろきょろと見渡す。

──よし! いない!!
誰にも聞こえないように話さなければならない。

「エウロ、ごめん。耳を貸してほしいんだけど……」

私の様子を見たエウロが、私の身長に合わせてかがんだ。
エウロの耳元で、そっとささやく。

「ごめん。ミネルに私がエウロとキスした事が……多分、いや、確実にバレた」
「ええっ!」

かがんでいたエウロが、驚きのあまり身体を起こした。

「ええと、その、テスタコーポの……時のが……今?」

そうだよね。今更だよね。
エウロに対し、謝罪の気持ちしかない。

「あれはお互いに事故として気にせず終わらせていたはずなのに……ごめんね」

胸の前で両手を合わせて、エウロに必死で謝る。
でも! これだけは伝えておかなきゃ!!

「相手がエウロだという事は話してないから。もしミネルから聞かれたら……何とか誤魔化して!」

誤魔化しきれなかった私が言うのもどうなんだ……という感じではあるけど。
改めて申し訳ない気持ちになっていると、ふいにエウロが口を開いた。

「俺は別にバレても構わないけど……」

へっ!? 予想外の答え!!
驚きつつエウロを見ると、確かに困っているような顔はしていない。

というより、気のせいじゃなければ口角が上がって……え? 笑ってる??

「エウロ、どうしたの?」

私の言葉にエウロが少し慌てた様子を見せる。

「な、なんでだ!?」
「顔が笑ってるように見えるから」

私の指摘に、エウロがさらにあたふたし始めた。

「いや、その、大丈夫だ。そ、そうだ」

何が大丈夫なのか分らないけど……エウロの方こそ大丈夫なのかな?

「アリアにお願いがあったんだ」
「何?」

お願い? ひょっとして、権利の事かな??
エウロだけ権利を使っていないもんね。

「実はテスタコーポの2年代表を正式に引き受けたんだ。それで、作業が多いから補佐をつけていいと言われたんだけど、アリアやらないか?」
「やりたい!」

少し食い気味で返事をしてしまった。

「言うと思った」

エウロが無邪気な顔で笑った。

そっかぁ、またテスタコーポに関われるんだ。
エウロの補佐として……って、どんな仕事かも分からないけど……。

「ところで、補佐って何をするの?」

私の言葉にエウロが「あはは」と笑っている。

「やっぱり……何も知らないで『やりたい』って返事をしたんだな」

勢いで返事をしちゃったからね。

「テスタコーポの準備期間中、俺と一緒にグループの割り振りや進捗管理、問題のチェックとか……雑用を中心に行うんだ」
「進捗管理? チェック??」

エウロが「ああ」と答えた後、チラリと教室を見た。

──あっ! 次の授業か!!

「アリア……明日の夕方は時間あるか?」
「うん、大丈夫だよ」
「各学年の代表者同士で集まるんだ。アリアも一緒に来ないか?」
「うん、行きたい」

すぐにエウロが、明日の打ち合わせ場所と時間を教えてくれた。

「じゃあ、補佐はアリアでお願いしておくな」
「うん、ありがとう。……あっ、そうだ。エウロって、け──」

咄嗟に権利の事を聞こうかと思ったけど、止めておいた。
無理やり使わせるものでもないしな。
さらに、私が出来る事なんて限られている。

「アリア? どうした?」
「ううん、なんでもない。それじゃあ、授業前にごめんね」
「ああ、またな」

お互いに手を振ると、それ以上は何も言わずに別れた。

結局、『バレても構わない』という返事だけもらって終わったな。
エウロが気にしないなら……まぁ、いっか。


それに、週末はデートの付き添いがある。
ライリーさんには悪いけど……マイヤを傷つけたりするような人じゃないよね??
どんな人か、私がきちんと見極めなきゃ!!

それにしても……エウロは授業に行ったけど、私は少しの間、時間が空くんだよなぁ。
次の授業まで、図書館で勉強でもしようかな?

決めると同時にその場を離れ、図書館へと向かった。
中に入ると空いていた奥の席へと座り、授業の予習を始める。

そういえば、キスがバレた事で焦って忘れていたけど、ミネルに告白の返事をしていなかった。

……いや、違う。
話そうとしたら『聞かない』って言われたんだ。

『聞かない』って……どうすればいいんだろう?
1人頭を悩ませていると、前の席からささやくような声が聞こえてきた。

「ここ、座ってもよろしいですか?」
「どうぞ」

反射的に答えつつ、どこか聞き覚えのある声にパッと顔を上げる。
向かいの席へと視線を動かすと、そこには見知った人物が立っていた。

──ソフィー!

歴史の授業よりも早く、まさか図書館で会えるとは!!
さらにソフィーから声を掛けてくれるなんて、絶好のチャンス!!

「……どうしました?」

私が凝視しすぎたのか、ソフィーがいぶかしげにこちらを見ている。
不要な誤解を与える前に質問しようとするも、いい言葉が思いつかない。

『お父さんはどんな人?』
『お父さん、私たちに協力しない?』

……うーん、どれも違う気がする。

「実は、ソフィーに聞きたい事があるんだけど……」

ひとまず声に出してはみたものの、このまま図書館で話すのもなぁ。
私の考えをすぐに察したのか、ソフィーが口を開いた。

「私もアリア様にお聞きしたい事があります。私の質問にも答えてくれるのでしたら、アリア様の質問にもお答えしますよ」

ソフィーが静かに微笑んだ。

「えっと、答えられる範囲ならいいけど……」

まさか逆に聞きたい事があると言われるとは思っていなかった。

「きっと答えられます。よろしければ、女性の幼なじみの方々にも同席していただけますか?」

女性の幼なじみの方々……セレス達にも!?
……うーん、セレス達も一緒となると学校では難しいかもなぁ。

「それなら、夜とか寮で話した方がいいよね?」

そうじゃないと、空いてる時間が揃わない気がする。

「そうですね。本日の夜で如何ですか?」

ソフィーが提案をする。

「分かったよ。セレス達にも声を掛けておくけど、来れない人がいたらごめんね」
「構いません。場所は……アリア様のお部屋でもよろしいですか?」

私の部屋……全然問題なし!

「うん、大丈夫!」

夜に会う約束をした後は、そのまま2人で一緒に勉強をした。

それにしても、私に聞きたい事ってなんだろう?
いや、セレス達も呼ぶという事は、私たち4人に聞きたい事なのかな??

そんな疑問を胸に夜を待った。
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