一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます

Teko

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高等部2年生

反撃編 始まる(後編)

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お父様との会話と、私の考えを一通りみんなに話し終える。

「お父様達でも難航しているような事を、私達だけでやれるのかは分からない。それに……とても危険な事だと思う」

ジュリアが躊躇ちゅうちょなく私を消そうとしたくらいだから、親であるジメス上院議長も相当な危険人物だと思うし。

「ただ、みんなと一緒なら何でも出来るような気もするんだよね」

私がニッと笑うと、カウイが私に向かって口元を緩めた。

「ジュリアさんの封じ込めた魔法を元に戻す事ができる人は、おそらくアリア本人以外にいない。そう考えると、アリアが狙われる可能性はあると思っていた。被害が大きくなる前に、こちらから仕掛けるのは賛成だよ」

さっきまで微笑んでいたカウイの眼差しが鋭くなっている。

「……それにアリアの望みは叶えてあげたい。むしろ、何でもしてあげたい」

厳しい表情が崩れ、またしてもドキッとするような笑顔を浮かべてみせる。
立ち上がったまま話を聞いていたセレスが、悔しそうにカウイを見た。

「カウイに先に言われてしまったけど……私の方が先に“やるわ”と思っていたわ!」

セレスがカウイに向かって、力強く話している。

「アリアと一緒に何かをするのは、他の誰でもない、私の役目よ! アリアは私がきちんと見ていてあげないとダメなんだから!!」

後半……完全におかんのセリフになっている。
熱く語るセレスを何とも言えない気持ちで眺めていると、突然、ルナが私の両手をぎゅっと握り、頷いた。

「アリアと一緒に成し遂げるのはセレスじゃないし。私と兄様だし。そして、アリアは兄様とけっ……」

兄様とけっ? ……“けっ”て、何!?

「──じゃなかった。大丈夫、アリア。私と兄様がアリアを助ける。そして守る」

ルナって、たまに発言がイケメンになるよね。
そして、相変わらず、セレスとルナは言い合いになっちゃうよね。

事前に話していたミネルとエレはやると言ってくれてるから、後は……エウロとオーン、マイヤか。

エウロが少し戸惑いながらも「俺は……」と口を開く。

「ジュリアさんの親が逆恨みをしてアリアに危害を加えなければいいと思っていたけど……」

エウロやカウイ、ルナの発言だけで、私の事をずっと心配してくれていた事が伝わってくる。

「多分、みんなも同じだろう? やるならみんなで。……アリアが話した通り、みんなと一緒なら不思議と出来る気がするんだよな」

覚悟を決めたのか、エウロが清々しく笑ってみせた。
近くに座っていたマイヤも、みんなの意見に賛同するかのように小さく頷く。

「か弱い私が役に立てるか分からないけど……今度は参加させてもらおうかな」

マイヤが「うふっ」と可愛らしく目尻を下げた。


……今度は?
何の事かと疑問に思っていると、マイヤの言葉の意味に気がついたカウイが代わりに答える。

「そうだね。留学中は直接関わる事が出来なかったからね」

あっ、そっか。
学校建設の時、2人はいなかったんだ。

一人納得していると、マイヤがふいに遠くを見つめ出した。

「それに、ジュリアさんは逃さないつもりだったから……ふふっ」

可愛らしく笑ってはいるけど、少しだけ不穏な気配を感じる。


……オーンは? 王子という立場がある。
父親であるサール国王は『改革には賛成だけど、上院と一緒に変えていきたい』という考えを持っている。

私がやろうとしている事は、もしかするとサール国王の考えとは違うものかもしれない。

「私は“必定王令”を使ってでも、ジメス上院議長を離職させるべきだと思っている。今回の件で、私は初めて……」

いつも柔らかな表情のオーンが、僅かに目を伏せた後、凛と前を見据えた。

「なぜ、“今”私が王ではないのだろう……と思っている。私は父……サール国王とは違う王に…… いや、違う国を作る」

オーンがジッと私を見つめた。
なぜか目を反らしてはいけない気がする。

「……余談だったね。私も賛成だよという事を伝えたかったんだ」

オーンがいつもの穏やかな表情へと戻る。
その事に安心し、ホッと息をはいた。

リーセさんはずっと黙っているけど、今の話を聞いてどう思ったのかな?
うかがうように目を向けると、私に気づいてくれたのか、ゆっくりと口を開いた。

「こちらから仕掛ける、か……なるほど。うん、ますます惚れてしまうね。もちろん、私も協力するよ」

惚れてしまう……私? 
なんて、モテ期が来たからって調子に乗りました。

でも誰にだろう? 妹に惚れるという意味なら、ルナかな?

とりあえず、リーセさんも協力してくれるのは嬉しい!
私とルナが喜んでいる中、周りが複雑そうな表情をしている。

んんっ? みんな嬉しくないの?
ミネルが何か諦めたような表情を浮かべている。

「本来なら断りたいが、今回ばかりは味方が多い方がいいからな。よし、これからどうするか……決めていこう」

あっ! そうだ!!
「はいっ!」と挙手をすると、そのまま話し始める。

「ソフィー達にも協力を仰げないかな?」

ジュリアの幼なじみ達にすべてを話すかは決めていないけど、彼女たちの親は上院の保守派だ。
味方につける事ができれば、保守派を内部から崩す事が出来るんじゃないかと思っている。

すると、私の発言を聞いたセレスが、もの凄い形相で私の前まで近づいてきた。

「なぜ、“ソフィー”と呼び捨てなの!?」

ん? ああ、なるほど。

「ソフィーが『ソフィーと呼んでください』と言ってくれたから」

驚いたと言わんばかりに目を見開くと、セレスが私の肩をガシッと掴んだ。

「なぜ、そういう流れになったの?(元) 別館メンバーは無用な干渉はしない約束だったはずよ!?」

セレスの圧が……すごい。

「ああ、それは私から話し掛けたから」

私の言葉にみんなが驚いている。
……というか、呆れている??

私がジュリアに監禁された時、助けてくれたソフィー。
ジュリアから酷い目にあわされてないか、ソフィーの親は大丈夫か……ずっと気になっていた。
偶然にも同じ授業を取っていたから、声を掛けに行ったんだよね。

私が話し掛けた時はソフィーも驚いていたけど、どこか嬉しそうな顔をしていた。

『ふふ。わたくしの心配をしてくださったのですね。アリア様から話し掛けた……という事は、今後、普通に話し掛けて構いませんね?』

と聞かれたから、承諾もしちゃったし。
ジュリアが登校していない事もあり、ソフィー自身に被害はない事も教えてくれた。

「よりにもよって、厄介そうな人と……」

困惑した表情でオーンが呟いている。

「ソフィーの親も上院には残っているけど、ジメス上院議長の傘下と言っていいのか……グループからは外されたらしいよ。ユーテルさん達の親は、ジメス上院議長のグループのままみたい」

普通に考えれば大変な状況だけど、ソフィーは気にする様子もなく話を続ける。

わたくしがアリア様を助けた話ですが、ジュリア達は知ってると思います。ただ、ジュリアは試合後から高熱を出して事情を聞けない状態の筈ですので、わたくしにも父にも処分は下さないのだと思います。さらに今は失踪しているみたいですし』

処分は出来ないけど、傘下からは外す。
ソフィーの父親は、理由もなく外された事に困惑しているようだ。

『私はこのような結果になって、良かったと思います』

静かに微笑んでいたソフィーが印象的だった。
みんなに私とソフィーの会話を伝え終えたところで、再び話を元に戻す。

「で、どうかな?」
「で、どうかな? じゃなくってよ! 信頼出来る人物かどうか分からないわ」

興奮気味にセレスが話す。

「自分の親をまたジメス上院議長の傘下に戻す為に、裏切る可能性だってあるわ!」

そっかぁ。ソフィーは大丈夫な気がしているけど、親の事までは分からないよねぇ。


「そうとは限らないかもよ?」

みんなが一斉にリーセさんの方へと顔を向ける。

「ソフィー嬢の親は、ジメス上院議長の傘下の中でも右腕に近い存在だった。周りから見れば、そんな人物が理由もなく、いきなり切られたんだ。他の保守派の人たちからすれば、いつ自分たちが同じように見限られてもおかしくない、と動揺している筈だよ」

にこやかに微笑みながら、リーセさんが会話を続ける。

「私は……この国や他国の情報を管理する人間だよ? 私をうまく利用すればいい」

そういえば、そうだった!
それで今回“エンタ・ヴェリーノ”の記録を取る為に異動してきたんだった。

「でも……情報を漏らすのはまずいですよね?」
「国家機密に関わらないような情報──たとえば、上院の近況について話すぐらいなら、何も悪い事ではないよ」

グレーゾーンは多少ありそうな気もするけど……心強い!

サール国王が私の魔法について『情報管理局には報告するが、トップの信頼できる人間以外には伝えない』と話していた。

リーセさんは、情報管理局の人。
トップではないはずだけど、有望で信頼できる人だから、私の魔法の話も知っていたのかな。


──あっ!!
もしかして、異動の理由は“エンタ・ヴェリーノ”の記録だけではなくて……《聖の魔法》も関係している!?

チラッとリーセさんの顔を見る。
私の方へ目を向けると、リーセさんは人差し指を唇に当て、片方の口角だけを器用に上げてみせた。

“内緒”と、いう事かな?
でもやっぱり! そうなんだ!!

みんなの意見がまとまったところで、ミネルがその場を仕切るように周りを見渡した。

「全員“やる”という事で意見はそろった。──作戦を立てるぞ」

ジメス上院議長も、まさか上院の──革新派の子供たちが何かしてくるとは思わないはず。

ついに、私たちの反撃が始まる!
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