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高等部2年生

ミネルの予定外の出来事

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空いている席に座り、授業が始まるのを待つ。
そういえば、私が考えている事をいつ相談しようかなぁ。

「アリアも歴史を選んでたんだな」

突然話し掛けられ、慌てて声のした方を見る。
すると、いつの間にかミネルが私の隣へと座っていた。

「ミネル!」
「声が大きい」
「ご、ごめん。ミネルに会いたいと思ってたタイミングで会えたから驚いてしまって」

ミネルと見つめ合い、数秒の沈黙が流れる。
「はぁ~」というため息が聞こえたかと思うと、机に両肘をついたミネルがうつむくように頭をかがめた。

「わざとだとしたら……マイヤを超えるぞ」

わざと? マイヤ?? 
意味が分からず首を傾げていると、ミネルがゆっくりと顔を上げた。

「で、どうしたんだ?」
「ええと……人がいるところでは話しづらい内容なんだよね」

私の真剣な表情を見たミネルが口を開いた。

「お昼なら大丈夫だが……前にみんなで集まったレストランの個室で話すか?」
「うん、ありがとう」

お昼にレストランで会う約束をし、何事もなかったように授業を受ける。
終わった後はそのままミネルと別れ、次の教室へと向かった。



──そして、昼休み

事前に予約したレストランの個室へと向かう。
私が席に着いてすぐにミネルも部屋へ入ってきた。

「急にごめんね」
「構わないが……まずは注文するか」

私の正面の席に座ったミネルがメニューを広げ、注文をする。
あまり待つ事もなく料理が運ばれてきたので、食事をしながら話す事にした。

「あのね……」

一息つき、本題へと入る。

「ジュリアさんの父親……ジメス上院議長を離職させたいけど、いい方法はないかな?」

私の発言に、水を飲んでいたミネルが「こほこほ」とむせた。

「だ、大丈夫? ミネル?」

咳が落ち着いたタイミングでミネルが呆れたように私を見た。

「……親たちが躍起やっきになっても証拠が見つからないジメス上院議長を、『お昼でも食べに行かない?』くらいのテンションで言ったな」
「はは、そうかな」

私としては悩んで話したつもりだったけど、軽く聞こえてしまったようだ。

魔法祭で起きた一連の事件や、ララさん達の緊急招集。

それだけじゃない。
ジュリアが私を監禁した時に手伝った人たちはみんな退学になった。
だけど、誰一人としてジュリアから指示されたとは言わなかった。

私たちは試合で起きた事を公にはしていない。
それでも大会関係者の人たちは当時の状況を知っている為、学校の生徒達も噂話レベルで起きた事を知っている。

すでに周知の事実だというのに誰も何も言わないなんて……どんな脅され方をしているのだろう。
それに学校の生徒たちもジュリア、正確にはジュリアの親が怖いのか、みんな試合の裏であった事は公の場では話していない。


だからこそ、強く、強く思った!
上の人ほど、裁くのが難しいのはおかしい!

その元凶がジメス上院議長なら、逃げれないくらいの証拠を見つけて離職させる!!
ジュリアにもきちんと自分の行った罪を償ってもらう!!!

それにジュリアと試合をした際、私に言った言葉。

『魔法を唱えなくても魔法での攻撃、防御が自由自在にできる。転生者の特権ね』

その言葉を信じるとしたら、私は転生者の特権で《聖の魔法》を使えるのかもしれない。

さらに、もう1つ。
魔法を唱えなくても魔法を使える事は『お父様だけが知っている』ともジュリアは話していた。

ジュリアの性格を考えると、他の人に自慢げに話しててもおかしくない。
それなのに自分の父親しか知らない。

もしかすると、ジメス上院議長に口止めされていたのではないだろうか?
そうだとしたら、過去にジュリアの魔法を利用した事があるのでは?

……と、考え出したらキリがなかった。

それに少なくともジメス上院議長は、今ジュリアが魔法を使えない事を知っているはずだ。

なぜ、使えないか……。

もしジュリアから使えない理由を聞いていたら、サール国王の助言は手遅れになる。
最悪、私が魔法を封じ込めれる事は、知られていると思っていた方がいいだろうな。


「他の……セレス達は何て話していた?」

ミネルの言葉で、はっと我に返る。

「……セレス?」
「なんだ、まだ話してないのか?」

ああ、そっか。
既にセレス達に相談していると思ったから聞いたのか。

「うん。前にミネルが『真っ先に僕に話して、巻き込め』って言ってくれた事があったから。まだミネル以外には相談してないよ」

お言葉に甘えて巻き込もうかと思って相談したんだけど、ダメだったかな?

「ミネルに相談して意見を聞いた後、みんなにも話そうと思ってたよ」

そう素直に伝えれば、ミネルが口に手を当て、何か考えるように目を伏せた。

……んー、顔を隠しているから『よし! やろうぜ!』(ミネルのキャラじゃないけど)と思ってくれてるのか、呆れてるのか……全く読めない!


「アリアのそういう所を好きになったんだろうな……僕は」


…………本日、私とミネルの間に2度目の沈黙が流れる。
沈黙している間、脳内でリプレイが走る。

『アリアのそういう所を好きになったんだろうな……』??
しかも、『僕は』って言った!?

へっ!!!

僕って、ミネルの事だよね? ミネルって、私がす、好きなの!?
さらにそういう所って、どういう所!?

混乱しながらも、ぱっとミネルに目を向ける。
ん? ミネルが……固まって……る?

うん、一旦落ち着こう。
ミネルから視線をそらすように下を向き、はぁ~っと大きく息を吐く。

吐き終わったタイミングで顔を上げると、再びミネルの方へ視線を動かす。
口に手を当てたまま、ミネルがぼそりと呟いた。

「いや、違う」

ん? 違う??
勘違いってこと???

ますます状況が呑み込めなくなり、頭が混乱してくる。
ミネルはというと、口元にあった手を下ろした後、真っ直ぐに私を見つめてきた。

「……いや、合っている。僕はアリアが好きだ」

ミネルがはっきりと私に告げる。

「ずっと一緒にいたい唯一の女性だと思っている」

どうしよう……頭がついていかない……。
ジメス上院議長の相談をしていたはずが、気づけばミネルに告白をされている。

「……こんな所でいう予定じゃなかった。話を戻すぞ、アリア!」

気持ちを切り替えるかのようにミネルが言う。

えっ、いや。戻していいの?
私が戸惑っていると、ミネルが改めて口を開いた。

「魔法祭での試合、アリアを1日好きにしていい権利があったな?」

呆然としたまま、こくりと頷く。

「週末、予定はあるか?」

ポカンとしたまま、首を横に振る。

「権利を使う。週末、2人だけで出掛けるぞ!」
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