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高等部 1年生

カウイの告白(前編)

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カウイ視点の話になります


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魔法祭から2週間──
予想に反し、事態は何も進んでいない。

なぜなら魔法祭以来、ジュリアさんが登校していないからだ。
先生方もジュリアさんの行為について真相を確かめようと、家まで行ったそうだが『原因不明の高熱により会える状況ではない』と言われ、一向に会わせてもらえないらしい。

取り急ぎ、ジュリアさんの両親に事情を説明したところ『そんな事をしていたなんて知らなかった。もし知っていたら絶対に止めていました』と答えたそうだ。

今回の件はあくまでジュリアさんの単独行動であり、両親は関与していないというのが学校側で確認できた内容だと説明された。

警護の緊急招集については、学校側ではなく、俺たちの両親がジュリアさんの父親──ジメス上院議長を問いただした。

「上院の数名が何者かに襲われる事件が発生した。状況的に国を脅かす人間が現れたと判断した為、緊急で招集させていただいた。何分、急な出来事だったもので……皆さんへの報告も後回しになってしまったんですよ」

これが、ジメス上院議長の回答だった。

冷静に考えて、アリアが拘束された日に偶然そんな事が起きるだろうか? 
すぐにみんなで調べたけど……実際に事件は起きていた。

いや、きっと事件を起こしたのだ……と思う。

今も親たちは証拠集めに動いている。
父は実際に上院の人たちを襲った犯人を捕まえ、ジメス上院議長との繋がりを見つけると話していた。

ジメス上院議長が、今までどんな事をしてきたのかは分からない。
ただ、父の『今度こそ証拠を見つける』と言葉から、どういう人物かなんて容易に推察できる。

証拠を決して残さない、用意周到なジメス上院議長。
……現時点で何かしらの処分を下すのは難しいのかもしれない。

そんなすっきりとしない気持ちのまま、あっという間に過ぎた2週間だった。


そういえば、ジュリアさんが話していた『魔法が使えなくなった』という言葉。
ミネルが『調べたら手がかりが見つかると思ったが……何も見つからなかった』と言っていた。

俺自身もそんな話は聞いた事がない。
アリアも身に覚えがないと話していたし……ジュリアさんの勘違い?

どちらにせよ、ジュリアさんに会う事ができない今、確認するすべもない。
……色々と八方塞がりだ。


魔法祭後、アリアの体調が順調に回復した事だけが、唯一良かった事かな。

『すっかり元気だから安心してね』と笑顔で言っていたアリア。
そのアリアと、これから会う約束をしている。

改めてアリアに自分の気持ちを伝えようと思い、俺の方から誘った。
どこか返事に戸惑っているようだったから、何で呼ばれたか、さすがのアリアも薄々気がついているだろうな。


本当はアリアから『婚約を解消してもいいかな?』と言われた時、気持ちを伝えようか迷った。
でも、オーンからの告白で心に余裕がないアリアを、自分がさらに困らせる事になるような気がして、『好き』という言葉をグッと飲み込んだ。


それからも、いつ気持ちを伝えようか、ずっと迷っていた。
そんな時、偶然にも話の流れで告白する事ができた。
残念ながらアリアには伝わらなかったけれど、あの出来事は間違いなく、アリアが俺の気持ちに気づくキッカケをくれたんだ。
だからこそ、前のように流れで言った告白ではなく、きちんとした形で想いを伝えたい。


今日は学校が休みという事もあり、一緒にお昼を食べる事になった。

アリアが創立に携わった学校、“エンタ・ヴァッレ”。
一緒に学校を見学した帰りに立ち寄ったカフェで待ち合わせをしている。

前に行った時は食事をしなかったので、アリアが『今度は食事もしたいね』と言ってたからだ。


──早めに着いちゃったな。

約束の時間にはまだ早いけれど、外で待つよりは……とカフェに入る。

空いた席を探すように店内を見渡していると……あれ? アリアがもう来ている。
話し掛けようとアリアにそっと近づく。

「ア……」

アリアの様子に、思わず沈黙する。

これは……どう見ても緊張している。
いつもより姿勢もよく、背筋を真っ直ぐに伸ばしたまま、何か考えているようだ。

何を考えているのかは……表情を見ただけで、大体想像がついてしまった。

『今日カウイに告白されるのかな? ……いや、違うかもしれない。ここまで構えておいて、違ってたら恥ずかしいな』

……とか、かな?

「──アリア」
「あっ、えっ、カウイ。は、早いね! ……って、なんで笑ってるの?」

自分でも知らぬ間に、笑みがこぼれていたらしい。

「ううん。ごめんね。待った?」
「い、いや。私が早く着いちゃっただけだから、気にしないで」

まだ会ったばかりだというのに、アリアの緊張が痛いほど伝わってくる。
出来ればリラックスして、食事を楽しんでほしいんだけど。

テーブル席に向かい合って座り、メニューを開く。

「アリアは何を食べるか決めた? これとか美味しそうだね」

メニューを指差し、アリアに話し掛ける。

「そうだよね! 私もそう思ってたの」

さっきまで緊張していたアリアが、やけに楽しそうに、前のめりになって話している。

「でもこっちも美味しそうだから迷っちゃって。どうしようかなぁ」

パンケーキとサンドウィッチで迷っているようだ。

「じゃあ、俺がサンドウィッチを頼むよ。アリアはパンケーキの方を頼んだら? 一緒に食べよう。俺もアリアが言っていたパンケーキと迷ってたんだ」

ぱっと顔を上げたアリアが、キラキラとした瞳でこちらを見る。

「ありがとう、カウイ」

良かった。食べる方に夢中になってきたのかな? 
さっきまでの緊張が解けてる。

アリアが他人と一緒の物を食べる事に抵抗がないのは、エレくんの影響から?
それとも……小さい頃、一緒に遊んだり食事をしていたから?
……後者だと嬉しいけど。

注文から時間を置かず、料理は運ばれてきた。
食事中、俺もアリアもジュリアさんの事については触れなかった。
話題に出してしまうと、きっと楽しい食事が楽しくなくなってしまうから。

「そういえば……スレイさん、ナツラさんのご両親に認めてもらえたみたいだね~」

自分の事のようにアリアが嬉しそうに話している。

「そうみたいだね。安心したね」

スレイさんとナツラさんは、学校見学の日に出会った2人だ。

驚く事に、アリアの立てた計画は見事成功したらしい。
先日、2人そろって「無事に認めてもらう事ができました」とわざわざ報告に来てくれたのだ。

その後も色々な会話を楽しみながら、食事を続ける。
ちょうど終盤に差し掛かってきたところで、さてどうしようか、と少しだけ悩み始めた。

……どこで気持ちを伝えよう。
綺麗な庭園などに移動するという手もあるけど……アリアがまた緊張してしまうような気がする。

「この後、アリアは行きたい所とかある?」
「わ、私?」

「んー」とアリアが悩んでいる。

「ここから近い“エンタ・ヴァッレ”に行きたい気持ちはあるけど……連絡してないからなぁ」
「通るだけ通ってみる? 外からにはなってしまうけど、少しは様子が見れると思うよ」
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