一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます

Teko

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高等部 1年生

特訓、調査、たまに休んで、また特訓(後編)

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安心したのも束の間、冷たい空気がお母様から流れているのを感じる。
そーっとお母様を見ると、氷の微笑とはまさにこのこと!!

「アリア、食後の運動をしましょう。早速、始めますよ」

完全にヤル気スイッチが入っている!

……お父様は??

「アリア」
「は、はい?」

なんか口元は笑ってるけど、眼が笑っていない。

「学校での同級生のやり取りに親が口を挟むことではない事は、重々理解しているつもりだよ」

は、はい。
お父様、怒ってらっしゃる??

「その代わり、私たち家族は全面的に協力するから、なんでも言いなさい」

おおっと。
お父様も謎スイッチが入っている!!


私って大切にされてるなぁ、ほんと。
理不尽な扱いを受けた事は多々あるけど、周りの人に恵まれてるからプラマイゼロ。
いや、むしろプラスかも!!


……あれ? だとしたら、ジュリアの事も調べてもらえるのでは??

「お父様、1つお願いが!!」
「何かな? なんでも言いなさい」

そのセリフは娘をダメ(我がまま)にしますよ、お父様。

「ジュリアの今まで起こった出来事、幼なじみたちとの仲など……分かる範囲でいいんです。経歴というより、日常生活について調べてもらえませんか?」

私のお願いが意外だったのか、お父様が首を傾げている。

「そんな事でいいのかい?」
「はい! 試合でのヒントになると思うんです」

不思議がってはいるものの『試合でのヒント』と聞いて、お父様が快く承諾してくれた。
良かった! きっと私が調べるよりも早く情報が手に入る!!


……と、喜べたのは一瞬だけ。
お母様の宣言通り、その日はみっちりと鍛えられ、他の事を考える余裕なんて全く起きなかった。



──そして、2日後。
やはり、お父様の仕事は早かった。

学校が終わって寮に戻ると、お父様から私宛に手紙が届いていた。


『ジュリア嬢の幼少期にメイドとして勤めていた方とお話ができました。詳しい内容を送ります』

さすがです! ありがとうございます!


『その方はジュリア嬢が産まれてから、12歳になるまで勤めていた方らしい。ジュリア嬢は、小さい頃から手も掛からない優秀で優しい子だったと嬉しそうに話していたよ』

うん、優秀は分かる。
ただ優しい? 優しさ度“2%未満”の人に見えたけど。家では態度が違うのかな??

実際、0歳~9歳までの内容は、当たり障りのない内容だった。
──問題は10歳からだった。


『ただ10歳の頃から急に人が変わり、別人のようになったと。優秀な所は変わっていなかったが、高慢で思いやりが足りない人になってしまったと嘆いていたよ』

それって……。


『別人のように変わる前か後かは分からないけど、ジュリア嬢が「ジュリアになった」とやけに興奮気味だったらしい。後にも先にもあんなに興奮しているジュリア嬢を見た事がなかったので、鮮明に覚えてますと話していた』

やっぱり! ジュリアは私と同じ転生者!! ……かもしれない。


『ジュリア嬢のご両親は娘が可愛かったようで、ジュリア嬢が気に入らないメイドはどんどん辞めさせられたと話していた。今回、話を聞いた女性も辞めさせられた一人だったらしい』

同じ転生者だとしたら、同類だと思われたくないくらいヒドイ人だな。


……という事は、ジュリアは隠しキャラ?
でも『ジュリアになった』と言っていたという事は“乙女ゲーム”を知ってるって事だよね??
なんで知ってるのに私たちの事を知らなかったんだろう?

『私がアリアです』って言っても信用していなかったし。
なんか決定的なものがないというか。上手くピースがはまらないんだよなぁ。
う~ん……色々と疑問は残るけど、まずは対決の事を考えなくては!



──その日から、私の特訓の日々が始まった。

学校が終わった後に特訓。
たまにマイヤと一緒に特訓。
週末はお母様との練習試合。
そしてまた特訓……。

……これって、“格ゲー”でした?? と勘違いするほどに特訓、特訓、また特訓の連続。

お母様といえば、普段は『私は戦えませーん』という顔をしてるのに……悔しいくらいに強かった。
躊躇ちゅうちょなく、魔法も使ってきたし。


ジュリアについては、空いた時間を利用して私の方でも色々と調べてみた。
とはいえ、残念ながら、お父様以上にジュリアの情報を得る事はできなかった。
モヤモヤは残るけど……しょうがない! と気持ちを切り替える事にした。


ちなみに、オーンの練習相手は、エレの手腕により無事見つける事ができた。
エレの予想通り、クラスメイトの従兄弟はユーテルさんとユーテルさんの弟だった。
協力を断られるかと思っていたら、どうやらユーテルさんの弟はユーテルさんと仲が悪いようで、勝つことを条件に了承してくれたらしい。

エレもオーンに《雷の魔法》を使える人を紹介した時「勝つのは当然ですから、いいですよね?」とプレッシャーを掛けていた。
オーンはオーンで「うん、大丈夫だよ」と余裕の笑みを返していた。

プレッシャーをプレッシャーとも思わない自信。
んー、オーン健在!!



そして、魔法祭も近づいてきたある日──試合順が決定した。

---------------------------------------

第1試合 《風の魔法》 エウロ vs ライリー

第2試合 《知恵の魔法》 ミネル vs ソフィー

第3試合 《癒しの魔法》 マイヤ VS ネヴェサ

第4試合 《火の魔法》 カウイ vs ヌワ

第5試合 《土&緑の魔法》 ルナ&セレス vs イリ&リイ

第6試合 《光の魔法 VS 雷の魔法》 オーン vs ユーテル

第7試合 《水の魔法》 アリア vs ジュリア
---------------------------------------


あれれ??

「私が最後……って、な、なんで??」

魔法が使えない私は一番最初だと思っていたんだけど。
一緒に試合順を見に来ていたマイヤも首を傾げている。

「それはですねー、ジュリアさんの強い意向があったからです!」

マイヤと一緒に後ろをぱっと振り向く。
あ! メロウさん! ……いつも突然現れるなぁ。

「くじ引きか何かで決めようと思ってたのですが、ジュリアさんが突然やって来て、『メインの私を一番最後にして』と言われちゃいました。断ろうかと思ったのですが……私個人としてもアリアが最後の方が面白いんじゃないかと思って承諾しちゃいましたぁ」

メロウさんが自分の言葉にケラケラ笑っている。
楽しそうだなぁ……と眺めていたら、急に笑うのを止めた。

「面白いことに関する勘はするどい方なので、きっといい試合になります」

そう言って、また笑いながら去って行った。

冗談なのか本気なのか分からない人だなぁ。
でも、今回の試合。家族、幼なじみ達、友人……と色々な人が協力してくれた。


──絶っ対に負けられない!!!
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