130 / 261
高等部 1年生
ジュリアの謎(後編)
しおりを挟む
私……じゃない。すでに土地は譲ってもらって学校を作ったし。
それにヤン爺ちゃんにはもう自分の家以外、土地はないはず……。
……んー、気になる。
この後、ヤン爺ちゃんに会いに行こう。
改めてスレイさんに別れを告げ、エレ、カウイと一緒に“ヴェント”でヤン爺ちゃんの家へと向かった。
それにしても“キレイな女性”で私の事?? って思ってくれるスレイさん。
なんて素敵な人なんだ!!!
いい気分のままヤン爺ちゃんの家に着き、“ヴェント”を降りた。
カウイがヤン爺ちゃんの家を見つめている。
「アリアから話を聞いてたけど、会うのは初めてだな」
そっか!
カウイが留学しているときに学校を作ったから、ヤン爺ちゃんと会う機会がなかったのか!!
私が「カウイの事は話してるから大丈夫だよ~」と話しながら、我が家のように扉を開けた。
「……ノックは?」
カウイが驚いている。
「ああ、ヤン爺ちゃんの家に入る時は勝手に入っていいの~」
私が笑顔で答える。
ヤン爺ちゃんが『アリアはいつでも勝手に入れ』って言ってくれてるし。
「ヤン爺ちゃーん」
「……おお、アリアか」
驚くこともなく、ヤン爺ちゃんが笑顔で返事をした。
ええと、まずはカウイを紹介しよう。
「ヤン爺ちゃん、今日はカウイを連れてきたの」
「ああ、話に聞いてた幼なじみの子か」
「うん」
ヤン爺ちゃんの前までカウイが歩いていく。
「カウイです。よろしくお願いします」
頭を下げたカウイをヤン爺ちゃんがジーっと見ている。
「ほぅ~、アリアの周りはかっこいい男性が多いんじゃな。ただ!」
ヤン爺ちゃんの目がキラッと光った。
「かっこいいだけでは、アリアは譲らんからな! わしが認めた男じゃないとダメだ!!」
……ヤン爺ちゃんに男性を紹介するとすぐにこれだ。カウイは幼なじみだよ。
「はい、肝に銘じておきます」
カウイが頬を緩めた。
……どういう意味だろう!?
不思議に思っていると、エレがヤン爺ちゃんに向かって言った。
「えっ? 僕は?? ヤン爺ちゃんに認められてないの??」
ウルウルとした瞳でヤン爺ちゃんに訴えている。
「エレは別格じゃ」
「嬉しいなぁ! 僕の事は認めてくれてるんだぁ」
少しだけ声を大きくしたエレが、カウイに向かってニコリと微笑み掛ける。
ん、なんだろう。この踏み込みにくい雰囲気。
……それにヤン爺ちゃん、鼻の下伸びてるよ。
って、違った。そろそろ、本題に入ろう!!
「ヤン爺ちゃん! スレイさんから『土地を譲ってほしい』っていう人が来たって聞いたんだけど」
「ん? ……ああ!」
ヤン爺ちゃんがポンと手をたたいた。
「そうそう、2~3週間前にキレイな女性が来たぞ」
「そう、それ!」
私が興奮気味に言う。
「急にやって来て『学校を作らなきゃいけないから、土地を譲ってほしい。お金ならいくらでもある』とな。失礼な女性じゃった」
その時の事を思い出したのか、ヤン爺ちゃんが少し怒りながら説明している。
「『土地はない、帰れ』と言ったんだが、おかしな事を言い出してな。『まぁ、最初断られるのは分かってますから、また来ます』と、それで帰って行った」
──えっ!?
「そ、それで?」
「宣言通り、また来たんじゃ。また来られても困るから『土地はアリアに譲って、もう学校を作った』と説明してやった。そしたら──」
そ、そしたら??
「えらく驚いておった。『そんなはずない、私が作るはずよ!』と訳の分からない事を言っておったわ」
……その女性って。
「ヤン爺ちゃん、その女性の名前は聞いた?」
私の予想が合っていれば……。
「ああ、“ジュリア”と言っていた」
──やっぱり!!!
カウイも“ジュリア”という名前を聞いて驚いている。
「ほ、他には何か言ってた?」
私の気迫に押されながらも、ヤン爺ちゃんが質問に答える。
「ん~、『イベントが~なんたらこうたら~』って言ってたな」
以前、ジュリアが言っていた“ヒロイン”。
──そして、今回言ったジュリアの言葉。
本来、学校を作る事が“乙女ゲーム”のイベントだったとしたら?
“乙女ゲーム”のヒロインがジュリアで、そのイベントのためにヤン爺ちゃんに会いに来たんだとしたら?
そう考えると話の筋が通るし、ジュリアの言った言葉にもうなずける。
……ただ“乙女ゲーム” 「childhood friends」にジュリアというキャラはいない。
んー、行き詰ってしまった。
考え過ぎという事も有りえるけど、そのわりにはジュリアがヤン爺ちゃんに会いに来たタイミングと、ジュリア達が対決を申し込んできたタイミングが良すぎるな。
もしかして、イベントをつぶした私への恨みだったりして。
あはは、そんな筈ないか。
……いや、待てよ。本当に? そんな筈はないと言い切れる!?
ジュリアについて、もう少し詳しく調べた方がよさそうだ。
それにヤン爺ちゃんにはもう自分の家以外、土地はないはず……。
……んー、気になる。
この後、ヤン爺ちゃんに会いに行こう。
改めてスレイさんに別れを告げ、エレ、カウイと一緒に“ヴェント”でヤン爺ちゃんの家へと向かった。
それにしても“キレイな女性”で私の事?? って思ってくれるスレイさん。
なんて素敵な人なんだ!!!
いい気分のままヤン爺ちゃんの家に着き、“ヴェント”を降りた。
カウイがヤン爺ちゃんの家を見つめている。
「アリアから話を聞いてたけど、会うのは初めてだな」
そっか!
カウイが留学しているときに学校を作ったから、ヤン爺ちゃんと会う機会がなかったのか!!
私が「カウイの事は話してるから大丈夫だよ~」と話しながら、我が家のように扉を開けた。
「……ノックは?」
カウイが驚いている。
「ああ、ヤン爺ちゃんの家に入る時は勝手に入っていいの~」
私が笑顔で答える。
ヤン爺ちゃんが『アリアはいつでも勝手に入れ』って言ってくれてるし。
「ヤン爺ちゃーん」
「……おお、アリアか」
驚くこともなく、ヤン爺ちゃんが笑顔で返事をした。
ええと、まずはカウイを紹介しよう。
「ヤン爺ちゃん、今日はカウイを連れてきたの」
「ああ、話に聞いてた幼なじみの子か」
「うん」
ヤン爺ちゃんの前までカウイが歩いていく。
「カウイです。よろしくお願いします」
頭を下げたカウイをヤン爺ちゃんがジーっと見ている。
「ほぅ~、アリアの周りはかっこいい男性が多いんじゃな。ただ!」
ヤン爺ちゃんの目がキラッと光った。
「かっこいいだけでは、アリアは譲らんからな! わしが認めた男じゃないとダメだ!!」
……ヤン爺ちゃんに男性を紹介するとすぐにこれだ。カウイは幼なじみだよ。
「はい、肝に銘じておきます」
カウイが頬を緩めた。
……どういう意味だろう!?
不思議に思っていると、エレがヤン爺ちゃんに向かって言った。
「えっ? 僕は?? ヤン爺ちゃんに認められてないの??」
ウルウルとした瞳でヤン爺ちゃんに訴えている。
「エレは別格じゃ」
「嬉しいなぁ! 僕の事は認めてくれてるんだぁ」
少しだけ声を大きくしたエレが、カウイに向かってニコリと微笑み掛ける。
ん、なんだろう。この踏み込みにくい雰囲気。
……それにヤン爺ちゃん、鼻の下伸びてるよ。
って、違った。そろそろ、本題に入ろう!!
「ヤン爺ちゃん! スレイさんから『土地を譲ってほしい』っていう人が来たって聞いたんだけど」
「ん? ……ああ!」
ヤン爺ちゃんがポンと手をたたいた。
「そうそう、2~3週間前にキレイな女性が来たぞ」
「そう、それ!」
私が興奮気味に言う。
「急にやって来て『学校を作らなきゃいけないから、土地を譲ってほしい。お金ならいくらでもある』とな。失礼な女性じゃった」
その時の事を思い出したのか、ヤン爺ちゃんが少し怒りながら説明している。
「『土地はない、帰れ』と言ったんだが、おかしな事を言い出してな。『まぁ、最初断られるのは分かってますから、また来ます』と、それで帰って行った」
──えっ!?
「そ、それで?」
「宣言通り、また来たんじゃ。また来られても困るから『土地はアリアに譲って、もう学校を作った』と説明してやった。そしたら──」
そ、そしたら??
「えらく驚いておった。『そんなはずない、私が作るはずよ!』と訳の分からない事を言っておったわ」
……その女性って。
「ヤン爺ちゃん、その女性の名前は聞いた?」
私の予想が合っていれば……。
「ああ、“ジュリア”と言っていた」
──やっぱり!!!
カウイも“ジュリア”という名前を聞いて驚いている。
「ほ、他には何か言ってた?」
私の気迫に押されながらも、ヤン爺ちゃんが質問に答える。
「ん~、『イベントが~なんたらこうたら~』って言ってたな」
以前、ジュリアが言っていた“ヒロイン”。
──そして、今回言ったジュリアの言葉。
本来、学校を作る事が“乙女ゲーム”のイベントだったとしたら?
“乙女ゲーム”のヒロインがジュリアで、そのイベントのためにヤン爺ちゃんに会いに来たんだとしたら?
そう考えると話の筋が通るし、ジュリアの言った言葉にもうなずける。
……ただ“乙女ゲーム” 「childhood friends」にジュリアというキャラはいない。
んー、行き詰ってしまった。
考え過ぎという事も有りえるけど、そのわりにはジュリアがヤン爺ちゃんに会いに来たタイミングと、ジュリア達が対決を申し込んできたタイミングが良すぎるな。
もしかして、イベントをつぶした私への恨みだったりして。
あはは、そんな筈ないか。
……いや、待てよ。本当に? そんな筈はないと言い切れる!?
ジュリアについて、もう少し詳しく調べた方がよさそうだ。
10
お気に入りに追加
4,954
あなたにおすすめの小説

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
素材採取家の異世界旅行記
木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。
可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。
個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。
このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。
この度アルファポリスより書籍化致しました。
書籍化部分はレンタルしております。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる