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高等部 1年生
ジュリアの謎(前編)
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週末、スレイさんと会った。
すぐに《光の魔法》を試してもらった結果……弾かれてしまった。
やっぱり、ダメだったかぁ。
……はぁ~、オーンが調べてくれてるし、結果を待つしかないかぁ。
気持ちを切り替え、スレイさんにお礼を伝える。
「スレイさん、ありがとうございました」
「いえ、本当に弾かれるんですね」
事前に私から話を聞いていたスレイさんも驚いているようだ。
今日一緒に来たカウイとエレも、弾かれた光景を見て驚いている。
オーンも今までないって言ってたから、驚くのも無理はない。
「結果が分かったところで……さっきからずっと気になってたんですが、ナツラさんは?」
そう! 今日会う予定だったナツラさんがいないのだ。
待ち合わせしていた広場で、スレイさんと会うやいなや「事情があって、ナツラは来られません」とだけ言われた。
スレイさんの表情が暗かったから、ずっと気になってたんだよね。
「ナツラの両親に挨拶をしに行った話は、ナツラから聞いてますよね?」
はい、聞きました。私が頷く。
「ナツラの母親は認めてくださったのですが……父親からは認められず、私と会う事を禁止されているんです」
──!! 反対されちゃったのかぁ~!!
「最近では外出も禁止されているようで……寮と家の行き来しかさせてもらえないようです」
うぅー、そこまでとは!
何か良い方法を考えないと!!
私とスレイさんのやり取りを聞いていたエレが、そっと口を開いた。
「アリアからお二人の話は聞いています。あと、その場にカウイさんがいた事も……」
その話をした時に『僕も誘ってほしかったな』と可愛く言われちゃったからねぇ。
あんなに可愛い瞳で言われたら、一緒に連れて来ちゃうよね。
「僕も何かお力になれればと思いまして」
なんて、心優しい弟!
『みなさーん、この天使が私の弟なんですよー』と全人類に伝えたい!!
……じゃなかった。落ち着こう。
スレイさんが頭を下げ、エレにお礼を伝えている。
「ナツラさんのお父様は、どういった方なのですか?」
エレがスレイさんに尋ねている。
すると、スレイさんに代わってカウイが話し始めた。
「ナツラさんのご両親について、反対される事も想定して調べておいたよ」
い、いつの間に!!
「ナツラさんの父上は、自分の利益になる人に弱い傾向があるようです」
へぇ~。まぁ、上流階級の世界ではよくいるタイプの人ではあるな。
納得したようにエレが頷く。
「それなら──スレイさんがアリアやカウイさんと親しい事がナツラさんのご両親に伝われば、認めてもらえる可能性が高いかもしれませんね」
今度はカウイがエレの提案に頷いた。
「そうだね。エレくんの提案が一番効果的だと思う」
確かに……。ただ、どうやって伝えるかだよねぇ。
──そうだ!
「お母様に頼もう!」
うん。我ながら、いい案!!
「ナツラさんのご両親が参加する社交場に、お母様にも参加してもらおう!」
この手の話は、お母様も大好物なはず。
きっと喜んで協力してくれる。
そうすればきっと──
注) ここからはアリアの妄想です
まずはお母様の方から、ナツラ父さんに声を掛ける。
不思議に思うナツラ父さん。
『な、なんで上院の方が、わしに声を!?』
そこで、お母様から魅惑の一言。
『娘のナツラさんは、スレイさんの婚約者ですよね? 実は私の娘がスレイさんと仲良くしてもらってるんです』
『なんですとー!!』と驚くナツラ父さん。
『スレイさんは博識な方なんですね。娘もスレイさんといると、とても勉強になると言っています。これからも末永くお願いしますね』
お母様が『ふふふ』と微笑む。(ここ重要!!)
『スレイ君……上院の方達からそんな風に言われるような凄い子だったのかぁぁぁ』
お母様が『あっ、そうだ!』と何かを思い出したようにナツラ父さんに問い掛ける。
『あら? 間違えたかしら? まだ婚約者ではなく、お付き合いでした?』
ナツラ父さん、ここで決定的なセリフを言う。
『いやぁ。まだ婚約者ではないのですが、わしも彼を息子のように可愛がってましてぇぇ~。近日中に正式な婚約者になる予定なんですよ。はっはっは』
めでたし、めでたし。
注)妄想終了
うん、いい! すごくいい!!
これ以上に完璧な計画はあるだろうか? ……いや、ない!!!
最初は打算的な考えで認めたとしても、最終的にはスレイさんの良さを知って認めてくれるはず!!
そう考えると、きっかけは何だっていい。
妄想部分をかなり端折って、私の計画を3人に話す。
話を聞いたカウイが、閃いたように口を開いた。
「それなら……俺のお母様にもお願いしよう。その方がより作戦は成功するんじゃないかな」
おお、確かに!!
それにホーラさん(カウイの母)も喜んで協力してくれそう。
私たち(ほぼ私)が盛り上がっている中、スレイさんが申し訳なさそうに言った。
「さすがにそこまで協力していただくのは……悪いというか」
「そんな事ないですよ」
スレイさんは気がついていないんだな。
「今日スレイさんは、私の為に《光の魔法》を使ってくれましたよね?」
「えっ、ああ、はい」
戸惑いながらもスレイさんが返事をする。
「私のお願いも“そこまで協力していただくのは悪い”内容でしたが、スレイさんは嫌な顔を一つせずに『試してみましょう』って言ってくれました。そして週末にも関わらず、こうやって会いに来てくださいました」
まぁ、スレイさんとナツラさんの近況報告を聞くという理由もあったけど……。
スレイさんが普通にしてくれた事を私もしているだけなんだけど、な。
「それと同じです。ただ『助けたい、協力したい』と自分が思っただけです。だから悪いと思う必要は全くないです。それに私のお母様は、むしろ楽しんで協力してくれると思います」
私の言葉にカウイも頷き、同意する。
スレイさんが深々と私たちに頭を下げた。
「お言葉に甘えさせていただきます。……いずれ、自分の力で認めてもらえるような人物になります」
うん。スレイさんなら、きっとそうなる!!
別れ際、スレイさんが思い出したように私に言った。
「そういえば……ヤン爺さんが『この前、キレイな女性が土地を譲ってほしいと訪ねてきた』と話してましたが、アリアさんの事じゃないですよね?」
すぐに《光の魔法》を試してもらった結果……弾かれてしまった。
やっぱり、ダメだったかぁ。
……はぁ~、オーンが調べてくれてるし、結果を待つしかないかぁ。
気持ちを切り替え、スレイさんにお礼を伝える。
「スレイさん、ありがとうございました」
「いえ、本当に弾かれるんですね」
事前に私から話を聞いていたスレイさんも驚いているようだ。
今日一緒に来たカウイとエレも、弾かれた光景を見て驚いている。
オーンも今までないって言ってたから、驚くのも無理はない。
「結果が分かったところで……さっきからずっと気になってたんですが、ナツラさんは?」
そう! 今日会う予定だったナツラさんがいないのだ。
待ち合わせしていた広場で、スレイさんと会うやいなや「事情があって、ナツラは来られません」とだけ言われた。
スレイさんの表情が暗かったから、ずっと気になってたんだよね。
「ナツラの両親に挨拶をしに行った話は、ナツラから聞いてますよね?」
はい、聞きました。私が頷く。
「ナツラの母親は認めてくださったのですが……父親からは認められず、私と会う事を禁止されているんです」
──!! 反対されちゃったのかぁ~!!
「最近では外出も禁止されているようで……寮と家の行き来しかさせてもらえないようです」
うぅー、そこまでとは!
何か良い方法を考えないと!!
私とスレイさんのやり取りを聞いていたエレが、そっと口を開いた。
「アリアからお二人の話は聞いています。あと、その場にカウイさんがいた事も……」
その話をした時に『僕も誘ってほしかったな』と可愛く言われちゃったからねぇ。
あんなに可愛い瞳で言われたら、一緒に連れて来ちゃうよね。
「僕も何かお力になれればと思いまして」
なんて、心優しい弟!
『みなさーん、この天使が私の弟なんですよー』と全人類に伝えたい!!
……じゃなかった。落ち着こう。
スレイさんが頭を下げ、エレにお礼を伝えている。
「ナツラさんのお父様は、どういった方なのですか?」
エレがスレイさんに尋ねている。
すると、スレイさんに代わってカウイが話し始めた。
「ナツラさんのご両親について、反対される事も想定して調べておいたよ」
い、いつの間に!!
「ナツラさんの父上は、自分の利益になる人に弱い傾向があるようです」
へぇ~。まぁ、上流階級の世界ではよくいるタイプの人ではあるな。
納得したようにエレが頷く。
「それなら──スレイさんがアリアやカウイさんと親しい事がナツラさんのご両親に伝われば、認めてもらえる可能性が高いかもしれませんね」
今度はカウイがエレの提案に頷いた。
「そうだね。エレくんの提案が一番効果的だと思う」
確かに……。ただ、どうやって伝えるかだよねぇ。
──そうだ!
「お母様に頼もう!」
うん。我ながら、いい案!!
「ナツラさんのご両親が参加する社交場に、お母様にも参加してもらおう!」
この手の話は、お母様も大好物なはず。
きっと喜んで協力してくれる。
そうすればきっと──
注) ここからはアリアの妄想です
まずはお母様の方から、ナツラ父さんに声を掛ける。
不思議に思うナツラ父さん。
『な、なんで上院の方が、わしに声を!?』
そこで、お母様から魅惑の一言。
『娘のナツラさんは、スレイさんの婚約者ですよね? 実は私の娘がスレイさんと仲良くしてもらってるんです』
『なんですとー!!』と驚くナツラ父さん。
『スレイさんは博識な方なんですね。娘もスレイさんといると、とても勉強になると言っています。これからも末永くお願いしますね』
お母様が『ふふふ』と微笑む。(ここ重要!!)
『スレイ君……上院の方達からそんな風に言われるような凄い子だったのかぁぁぁ』
お母様が『あっ、そうだ!』と何かを思い出したようにナツラ父さんに問い掛ける。
『あら? 間違えたかしら? まだ婚約者ではなく、お付き合いでした?』
ナツラ父さん、ここで決定的なセリフを言う。
『いやぁ。まだ婚約者ではないのですが、わしも彼を息子のように可愛がってましてぇぇ~。近日中に正式な婚約者になる予定なんですよ。はっはっは』
めでたし、めでたし。
注)妄想終了
うん、いい! すごくいい!!
これ以上に完璧な計画はあるだろうか? ……いや、ない!!!
最初は打算的な考えで認めたとしても、最終的にはスレイさんの良さを知って認めてくれるはず!!
そう考えると、きっかけは何だっていい。
妄想部分をかなり端折って、私の計画を3人に話す。
話を聞いたカウイが、閃いたように口を開いた。
「それなら……俺のお母様にもお願いしよう。その方がより作戦は成功するんじゃないかな」
おお、確かに!!
それにホーラさん(カウイの母)も喜んで協力してくれそう。
私たち(ほぼ私)が盛り上がっている中、スレイさんが申し訳なさそうに言った。
「さすがにそこまで協力していただくのは……悪いというか」
「そんな事ないですよ」
スレイさんは気がついていないんだな。
「今日スレイさんは、私の為に《光の魔法》を使ってくれましたよね?」
「えっ、ああ、はい」
戸惑いながらもスレイさんが返事をする。
「私のお願いも“そこまで協力していただくのは悪い”内容でしたが、スレイさんは嫌な顔を一つせずに『試してみましょう』って言ってくれました。そして週末にも関わらず、こうやって会いに来てくださいました」
まぁ、スレイさんとナツラさんの近況報告を聞くという理由もあったけど……。
スレイさんが普通にしてくれた事を私もしているだけなんだけど、な。
「それと同じです。ただ『助けたい、協力したい』と自分が思っただけです。だから悪いと思う必要は全くないです。それに私のお母様は、むしろ楽しんで協力してくれると思います」
私の言葉にカウイも頷き、同意する。
スレイさんが深々と私たちに頭を下げた。
「お言葉に甘えさせていただきます。……いずれ、自分の力で認めてもらえるような人物になります」
うん。スレイさんなら、きっとそうなる!!
別れ際、スレイさんが思い出したように私に言った。
「そういえば……ヤン爺さんが『この前、キレイな女性が土地を譲ってほしいと訪ねてきた』と話してましたが、アリアさんの事じゃないですよね?」
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