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高等部 1年生
身分違いの恋の話(後編)
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協力できるならしたい! 出しゃばりたい!!
けど、その前にナツラさんに確認しなきゃいけない事がある。
「ナツラさんも結婚の意思が有ると考えていいですか?」
ナツラさんが私に向かって、こくんと頷いた。
「勇気を出してお話してくださったと思いますので、できる限りのアドバイスや協力はしたいという気持ちです」
んー、だけど……言いづらくても、言わなきゃな。
「ナツラさん。今まで当たり前のように与えられていた物、してもらっていた事を“与えてもらえない”、“自分の力で行わなければならない”という覚悟はありますか?」
私もナツラさんの立場になった場合、きっと同じ事がいえる。
きっとスレイさんの家にメイドさんはいない。お抱えのシェフだって、運転手だっていない。
人間、一度味わった生活水準を下げるのは、なかなか難しい。
それが産まれた時から当たり前に与えられているものなら、なおさらだ。
『大丈夫です』と言っても実際に体験してみたら、つらいという事はあるかもしれない。
でもやってもいない段階で戸惑い、迷いがあるなら……きっと難しいだろう。
「えっと……」
ナツラさんが返答に困っている。
「必ずしもそうとは限りません。でも親に認めてもらえなくても一緒になると覚悟を決めている場合、その可能性もあると考えるべきです」
ああ。2人の間に水を差すような事を言ってるなぁ、私。
ずっと暗い表情だったナツラさんが、私を見て静かに微笑んだ。
「言いづらい事を言わせてしまい、申し訳ございません。スレイが私の為に『努力は惜しまない』と言ってくれました。私もスレイと一緒になれるなら、同じ気持ちです」
スレイさんが嬉しそうな表情をしている。
自分で聞いた事だけど、さ。不安だったから、本当に良かったぁ。
感動のシーン過ぎて、私も泣きそう。
「じゃあ、2人とご両親も幸せになれる方法を一緒に考えましょう。2人で考えるよりも4人で考えた方がきっと良い方法が見つかります!」
2人の顔がぱぁっと明るくなった。
あっ、許可なくカウイも巻き込んじゃった。
チラッとカウイの様子をうかがう。私の方を見て、柔らかな表情をしている。
うっ。色気が溢れ出てるな。でも良かった、大丈夫そう。
「私たちの関係を認めてくれる人がいるとは思わなくて」
ナツラさんが泣きながら、お礼を言っている。
今度は感動の涙かな? それくらい切羽詰まってたって事だよね。
カウイが穏やかな口調で2人に助言をする。
「スレイさんがナツラさんの家に挨拶に行ってから、対策を練った方がいいかもしれません。まだご両親にお会いしていないようですし」
そっか。まずは会ってからだよね!
会ってみたら『いい青年じゃないかー!』って、なるかもしれないしね。
カウイの提案通り、まずはスレイさんがナツラさんのご両親に挨拶をしてから、今後、どのようにしていくか決める事になった。
カフェを出て、カウイとスレイさんが前を歩き、私とナツラさんが後ろを歩く。
ナツラさんが歩きながら、私に話し掛けた。
「さっきは『私たちの関係を認めてくれる人がいるとは思わなくて』って言いましたけど、もしかしたらアリアさんなら認めてくれるんじゃないかと思ってました」
えっ! そうなの?
「……理由を聞いても?」
「ええ」とナツラさんが頷く。
「一般の方も通える学校──“エンタ・ヴァッレ”の提案者はアリアさんだって聞いてたからです。実際、建設の手伝いをしていた時、住民の方と楽しそうにお話しているアリアさんの姿を何度も見かけました」
ヤン爺ちゃんのお陰って言うのもあるけど、学校の建設をきっかけに知り合いがものすごく増えたもんな。
「実は……あまりにも楽しそうな姿を見て、隔たりととか関係なく、私も色々な方とお話をしてみたくなったんです」
私、そんなに楽しそうだったんだ。自分では気がつかないものだね。
「そんな矢先、スレイが建築に使う工具を探しているのを見かけたんです。私の近くに工具があり、思い切って話し掛けたんです。今思えば、一生分の勇気を使った気がします」
ほぅ~。それが2人の出会いというわけですね。
「あまりにも輝いた笑顔でお礼を言われて、きっとあの時から私は好きになってたのだと思います」
ナツラさん……照れているようで、惚気てますね。
誰にも話した事がないって言ってたから、今まで惚気る事もできなかったのかな。
……って、普通に聞いてたけど、私の影響で2人の運命を変えてない!? 大丈夫??
一人焦っている私の両手を、ナツラさんが満面の笑みでぎゅっと握った。
「出会えるきっかけを作って下さり、ありがとうございます。いつか伝えたいと思ってました」
そう思ってくれてるなら、良かった。この2人には絶対幸せになってほしい。
別れ際、ナツラさんが私に尋ねた。
「アリアさんが私の立場ならどうしますか?」
私なら……かぁ。
反対されたらって事だよね。
「親が『分かった、分かったから』と仕方なくても了承するまで、しつこく説得します。やっぱり親を無視して、家を出たり、反対を押し切って結ばれる事は最終手段にしたいです。後々『あの時、もっと彼の良さを伝えられていたら』とか後悔したくないので」
あとは……。
「タイプにもよりますが、母親を味方につけます」
ケイアさん(マイヤの母)みたいなタイプだと難しいけど。
「(上流階級の方は)出会いの場面など、ドラマチックで運命的な話に弱い人が多いと思うので、そこを攻めます!」
んー、後は……。
「スレイさん、特技は?」
「と、特技ですか? ええと、あっ! 俺の家系、あまりいない《光の魔法》が使えるんです。俺も使えるようになりました」
……へぇ~、魔法使えるんだぁ……って、へこんでいる場合じゃなかった!
「アピールポイントとしては、いいかもしれません」
アドバイスになったか分からないけど。
「ナツラさん! 一生分の勇気、後悔しない為にも、もう一度使ってくださいね!」
ナツラさんが、ふふっと口元を緩めた。
「はい!」
健闘を祈ります!!!
2人と別れた後、 カウイがそっと手を差し出した。
「アリア、手を繋がない?」
えっと……どうしたのかな?
「急にどうしたの?」
いつもエレと繋いでいる所為か、特に抵抗もなく、言われるがままに手を繋ぐ。
繋いでは見たものの……恥ずかしいかも。
「今日はデートのつもりだったから、最後くらいデートらしく手を繋ぎたいと思ってね」
へっ!!
今日って、デートだったの!?
「学校見学とか、普通のお出掛けとかじゃなく?」
「うん。俺はそのつもりだったよ」
そ、そうだったの!? デートってそういうものだったっけ??
デートと意識した途端、手汗が……。
どうしよう。手を繋いでしまった手前『やっぱり手を離しましょうか』とも言いづらい。
「そ、そうだ。今日カウイがいつもと違ったけど、何かあった?」
カウイがきょとんとした顔をしている。
あれ? 違った??
「いつ?」
「ナツラさん達と話してる時かな? いつもの穏やかな表情ではなかったというか……」
無表情だったから、どうしたのかな? って思ったんだよね。
「覚えてないけど、きっといつも通りじゃないかな?」
「えっ! そうだったの? いつもは優しい表情というか、和やかというか」
カウイが斜め上を見て考えている。
「ああ、それはきっとアリアだからだよ」
私だから?
「アリアの前だと自然と笑顔になるみたい」
面と向かって言われると、嬉しい反面、恥ずかしいかも。
「カウイって、人の喜ぶことをさらっと言える人だよね。人に気づかせない気遣いのできる人でもあるし」
あまりピンとこなかったのか、カウイが首を傾げている。自分では気がついてないのかな?
「ナツラさん達が話しづらそうにしている時、『この辺りでお茶でもしようかと思ってた』って言ったでしょ? 2人が気にしないよう、さりげなく話しやすい場所へ誘導してたから」
私の言葉に、カウイが嬉しそうに顔をほころばせた。
「アリアは人のいい所を探すのが上手だね。俺を優しいと思うのは、アリアが優しいからだよ。アリアが優しいから、同じように自分も優しくしたいって思うんだ」
私が優しい? カウイには全然負けるけど。
「ああ、それと。アリアの前だと自然と笑顔になるのは、アリアの事が好きだからだよ」
…………カウイと私との間に沈黙が流れる。
気のせいじゃなければ、今──好きって言った?
好きって? カウイの方を見ると、照れてる様子もなく、至って普通だ。
さらっと言ったよね? って事は、幼なじみ的な好きって事??
どっち? カウイの表情を見ても、全然分からなーーーい!!
視線に気がついたカウイが私の方をジッと見つめ返す。
そして、くらっとするような笑顔を浮かべてみせた。
「そういう気持ちにさせてくれて、いつもありがとう」
けど、その前にナツラさんに確認しなきゃいけない事がある。
「ナツラさんも結婚の意思が有ると考えていいですか?」
ナツラさんが私に向かって、こくんと頷いた。
「勇気を出してお話してくださったと思いますので、できる限りのアドバイスや協力はしたいという気持ちです」
んー、だけど……言いづらくても、言わなきゃな。
「ナツラさん。今まで当たり前のように与えられていた物、してもらっていた事を“与えてもらえない”、“自分の力で行わなければならない”という覚悟はありますか?」
私もナツラさんの立場になった場合、きっと同じ事がいえる。
きっとスレイさんの家にメイドさんはいない。お抱えのシェフだって、運転手だっていない。
人間、一度味わった生活水準を下げるのは、なかなか難しい。
それが産まれた時から当たり前に与えられているものなら、なおさらだ。
『大丈夫です』と言っても実際に体験してみたら、つらいという事はあるかもしれない。
でもやってもいない段階で戸惑い、迷いがあるなら……きっと難しいだろう。
「えっと……」
ナツラさんが返答に困っている。
「必ずしもそうとは限りません。でも親に認めてもらえなくても一緒になると覚悟を決めている場合、その可能性もあると考えるべきです」
ああ。2人の間に水を差すような事を言ってるなぁ、私。
ずっと暗い表情だったナツラさんが、私を見て静かに微笑んだ。
「言いづらい事を言わせてしまい、申し訳ございません。スレイが私の為に『努力は惜しまない』と言ってくれました。私もスレイと一緒になれるなら、同じ気持ちです」
スレイさんが嬉しそうな表情をしている。
自分で聞いた事だけど、さ。不安だったから、本当に良かったぁ。
感動のシーン過ぎて、私も泣きそう。
「じゃあ、2人とご両親も幸せになれる方法を一緒に考えましょう。2人で考えるよりも4人で考えた方がきっと良い方法が見つかります!」
2人の顔がぱぁっと明るくなった。
あっ、許可なくカウイも巻き込んじゃった。
チラッとカウイの様子をうかがう。私の方を見て、柔らかな表情をしている。
うっ。色気が溢れ出てるな。でも良かった、大丈夫そう。
「私たちの関係を認めてくれる人がいるとは思わなくて」
ナツラさんが泣きながら、お礼を言っている。
今度は感動の涙かな? それくらい切羽詰まってたって事だよね。
カウイが穏やかな口調で2人に助言をする。
「スレイさんがナツラさんの家に挨拶に行ってから、対策を練った方がいいかもしれません。まだご両親にお会いしていないようですし」
そっか。まずは会ってからだよね!
会ってみたら『いい青年じゃないかー!』って、なるかもしれないしね。
カウイの提案通り、まずはスレイさんがナツラさんのご両親に挨拶をしてから、今後、どのようにしていくか決める事になった。
カフェを出て、カウイとスレイさんが前を歩き、私とナツラさんが後ろを歩く。
ナツラさんが歩きながら、私に話し掛けた。
「さっきは『私たちの関係を認めてくれる人がいるとは思わなくて』って言いましたけど、もしかしたらアリアさんなら認めてくれるんじゃないかと思ってました」
えっ! そうなの?
「……理由を聞いても?」
「ええ」とナツラさんが頷く。
「一般の方も通える学校──“エンタ・ヴァッレ”の提案者はアリアさんだって聞いてたからです。実際、建設の手伝いをしていた時、住民の方と楽しそうにお話しているアリアさんの姿を何度も見かけました」
ヤン爺ちゃんのお陰って言うのもあるけど、学校の建設をきっかけに知り合いがものすごく増えたもんな。
「実は……あまりにも楽しそうな姿を見て、隔たりととか関係なく、私も色々な方とお話をしてみたくなったんです」
私、そんなに楽しそうだったんだ。自分では気がつかないものだね。
「そんな矢先、スレイが建築に使う工具を探しているのを見かけたんです。私の近くに工具があり、思い切って話し掛けたんです。今思えば、一生分の勇気を使った気がします」
ほぅ~。それが2人の出会いというわけですね。
「あまりにも輝いた笑顔でお礼を言われて、きっとあの時から私は好きになってたのだと思います」
ナツラさん……照れているようで、惚気てますね。
誰にも話した事がないって言ってたから、今まで惚気る事もできなかったのかな。
……って、普通に聞いてたけど、私の影響で2人の運命を変えてない!? 大丈夫??
一人焦っている私の両手を、ナツラさんが満面の笑みでぎゅっと握った。
「出会えるきっかけを作って下さり、ありがとうございます。いつか伝えたいと思ってました」
そう思ってくれてるなら、良かった。この2人には絶対幸せになってほしい。
別れ際、ナツラさんが私に尋ねた。
「アリアさんが私の立場ならどうしますか?」
私なら……かぁ。
反対されたらって事だよね。
「親が『分かった、分かったから』と仕方なくても了承するまで、しつこく説得します。やっぱり親を無視して、家を出たり、反対を押し切って結ばれる事は最終手段にしたいです。後々『あの時、もっと彼の良さを伝えられていたら』とか後悔したくないので」
あとは……。
「タイプにもよりますが、母親を味方につけます」
ケイアさん(マイヤの母)みたいなタイプだと難しいけど。
「(上流階級の方は)出会いの場面など、ドラマチックで運命的な話に弱い人が多いと思うので、そこを攻めます!」
んー、後は……。
「スレイさん、特技は?」
「と、特技ですか? ええと、あっ! 俺の家系、あまりいない《光の魔法》が使えるんです。俺も使えるようになりました」
……へぇ~、魔法使えるんだぁ……って、へこんでいる場合じゃなかった!
「アピールポイントとしては、いいかもしれません」
アドバイスになったか分からないけど。
「ナツラさん! 一生分の勇気、後悔しない為にも、もう一度使ってくださいね!」
ナツラさんが、ふふっと口元を緩めた。
「はい!」
健闘を祈ります!!!
2人と別れた後、 カウイがそっと手を差し出した。
「アリア、手を繋がない?」
えっと……どうしたのかな?
「急にどうしたの?」
いつもエレと繋いでいる所為か、特に抵抗もなく、言われるがままに手を繋ぐ。
繋いでは見たものの……恥ずかしいかも。
「今日はデートのつもりだったから、最後くらいデートらしく手を繋ぎたいと思ってね」
へっ!!
今日って、デートだったの!?
「学校見学とか、普通のお出掛けとかじゃなく?」
「うん。俺はそのつもりだったよ」
そ、そうだったの!? デートってそういうものだったっけ??
デートと意識した途端、手汗が……。
どうしよう。手を繋いでしまった手前『やっぱり手を離しましょうか』とも言いづらい。
「そ、そうだ。今日カウイがいつもと違ったけど、何かあった?」
カウイがきょとんとした顔をしている。
あれ? 違った??
「いつ?」
「ナツラさん達と話してる時かな? いつもの穏やかな表情ではなかったというか……」
無表情だったから、どうしたのかな? って思ったんだよね。
「覚えてないけど、きっといつも通りじゃないかな?」
「えっ! そうだったの? いつもは優しい表情というか、和やかというか」
カウイが斜め上を見て考えている。
「ああ、それはきっとアリアだからだよ」
私だから?
「アリアの前だと自然と笑顔になるみたい」
面と向かって言われると、嬉しい反面、恥ずかしいかも。
「カウイって、人の喜ぶことをさらっと言える人だよね。人に気づかせない気遣いのできる人でもあるし」
あまりピンとこなかったのか、カウイが首を傾げている。自分では気がついてないのかな?
「ナツラさん達が話しづらそうにしている時、『この辺りでお茶でもしようかと思ってた』って言ったでしょ? 2人が気にしないよう、さりげなく話しやすい場所へ誘導してたから」
私の言葉に、カウイが嬉しそうに顔をほころばせた。
「アリアは人のいい所を探すのが上手だね。俺を優しいと思うのは、アリアが優しいからだよ。アリアが優しいから、同じように自分も優しくしたいって思うんだ」
私が優しい? カウイには全然負けるけど。
「ああ、それと。アリアの前だと自然と笑顔になるのは、アリアの事が好きだからだよ」
…………カウイと私との間に沈黙が流れる。
気のせいじゃなければ、今──好きって言った?
好きって? カウイの方を見ると、照れてる様子もなく、至って普通だ。
さらっと言ったよね? って事は、幼なじみ的な好きって事??
どっち? カウイの表情を見ても、全然分からなーーーい!!
視線に気がついたカウイが私の方をジッと見つめ返す。
そして、くらっとするような笑顔を浮かべてみせた。
「そういう気持ちにさせてくれて、いつもありがとう」
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