一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます

Teko

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高等部 1年生

本音の女子会(後編)

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とりあえず、和解した……のかな?
険しい表情を解いたセレスが、今度は少しだけ呆れた表情を見せる。

「大体アリアは無鉄砲だし、この私にすぐ心配を掛けるし、10回に9回は失敗する子なのよ。嫉妬する貴方がおかしいのよ!」

んんっ? セレスさん? 私の事をそんな風に思ってたの??
思わぬ方向に話がいってません??

セレスの話を聞いたルナがそっと呟いた。

「アリアは失敗した事ないし」
「ルナ、目が泳いでるわよ。アリアに好かれようと嘘をつくのはおやめなさい」

セレスの指摘にルナが目線を逸らした。

「10回に7回かな」
「妥当なところね」

……妥当なんだ。それでも多いな。

「私とアリアは、お互いの悪い所も知ってる上で親友なのよ。まぁ、私においては悪い所がないのだけれど」

マイヤにそれを伝えたかったが為に私をディスったのね。

…………あるよ。セレスにもダメなとこあるよー。そういうとこだよーー!
セレスは少しも気にする事なく話を続ける。

「で、肝心のマイヤのお母様は?」

急にケイアさん(マイヤの母)の話題が出たからか、マイヤの表情が強張っている。
私が答えた方がいいかな?

「多分……これから来ると思う。今日は私もマイヤも顔を合わせないという話になってるんだ」
「そう」

私が答えている間にマイヤの表情が元に戻る。
2週間ほどケイアさんに会っていないとはいえ、まだまだ心の整理がついてないよね。


……親の事もそうだけど、マイヤってヒロインじゃないような気がしてきた。
ヒロインにしては性格が、ね。うん、なかなかね。

「どうしたの? アリアちゃん?」

無意識にマイヤをじっと見ていたらしい。

「いや、何かに飛びぬけてる人って性格は面倒くさいんだなって思って」

しみじみ言うと、一瞬にして場の空気が凍った。
あれ? どうしたのかな?? すかさず、セレスが反応する。

「アリア! それってまさか私も含まれてるんじゃないでしょうね!?」

あっ、しまった。正直に言いすぎた!

「ご、ごめん。含まれてる」
「私のどこが面倒くさいのよ!」

あっ、まずい。さらに怒ってしまった。

「ご、ごめん。いや、セレスだけじゃないよ? 幼なじみ全員だよ??」
「なんのフォローにもなってないわよ! どう考えてもマイヤより面倒じゃないわ!!」
「……ちょっと待ってよ」

マイヤが静かに反抗する。

「悪いけど、セレスちゃんよりは普通よ!」
「貴方、性格変わりすぎよ!! ルナだってそう思うでしょ?」

セレスがルナに同意を求めた。

「……マイヤ? どこか変わった?」

えっ! まさかの返し!!
ルナは今までマイヤをどう見てたの?

「ルナちゃん、私に興味がなさすぎよ! さっきの訂正するわ。ルナちゃんよりは普通よ!」
「マイヤよりは性格いい」

すぐにルナが切り返した。
や、やってしまった。私の余計な一言が発端となって、なぜか私以外の3人が言い合いになってしまった。

……でも(私が原因で)言い合いにはなってるけど、なんかいいな。
入学式の時に初めて4人で食事をした時より、仲良くなった気がする。

何よりマイヤが生き生きして見える。……まあ、生き生きし過ぎのような気もするけど。
しばらく眺めていると、突如何かを思い出したようにセレスが私の方を向いた。

「ところで……アリア、オーンの事はどうするの?」

…………へっ!?
思わず、飲んでいた紅茶を吹き出してしまった。

「ケホ、ケホ……ど、どうするって?」
「オーンから聞いたわよ。アリアに気持ちを伝えたって」

な、なにぃーー!! オーン言ったの!?

「元婚約者の私には伝えておきたかったって報告してくれたのよ」
「そ、そうだったんだ」

ずっとオーンに告白された事をセレスに言うべきかどうか迷ってた。
……知ってたんだ。
普通に話してるけど、オーンの告白をセレスはどう思ってるんだろう? なんか聞くのが怖いな。

「アリア! よく聞きなさい!!」

セレスがくいっと紅茶を一口飲んだ。

「私はオーンの事を本当になんっとも思っていないわ! だ、か、ら、私の事は気にせずに考えなさい!!」

もしかして、この事を伝える為に今日は来てくれたのかな?
お礼を伝えると、真面目な表情から一変、セレスが含み笑いをした。

「……で、どうするのよ?」
「あっ、私も聞きたい」

マイヤも興味津々だ。
あなた、この間まで『オーンくんが好きなの』って言ってなかった??

「正直……」
「正直?」

セレスとマイヤが声をハモらせ、前のめりになっている。

「ここ最近、色々ありすぎて考える暇がなかった」

ごめん! オーン!!
今日でセレスの事もスッキリしたから、ちゃんと考えるからね!

はっ!! セレスとマイヤの顔が“無”になっている。
ルナは……いつも通り“無”だ。

「はぁ~、なんでアリアちゃんに負けたんだろ」

マイヤがため息をついている。
……言われ放題だな。

「じゃ、じゃあ。3人は好きな人いるの?」

私の質問にさっきまで興味なさそうだったルナが答える。

「アリアと兄様」

そういう意味じゃなかったんだけど……ありがとう、ルナ。
セレスが腕を組み、眉間にしわを寄せている。

「私もアリアではあるけど、異性だとまだ私に見合う人がいないかもしれないわ。そういう意味だと、私はルナと違ってアリアの名前しか挙げてないから……勝ちね!」

セレスがドヤ顔をしている。

「そんな事ないし。セレスの100倍好きだし」

……子どものケンカだ。

「素晴らしく底辺な会話をしてるわね」

マイヤが呆れながら聞いてきた。

「アリアちゃんて、オーンくん以外の3人の男性についてはどう思う? 恋愛対象として見れる?」

……3人って。エウロとカウイ、ミネルの事だよね?

「恋愛対象かぁ。考えた事なかったな」

『振られる相手を好きになってもなぁ~』って心のどこかにずっとあるんだよねぇ。だから考えた事もないんだよなぁ。

「……質問を変えるわ。高等部にいる間に4人は新たな婚約者ができる可能性があるのよ? オーンくんだって、いつまでもアリアちゃんの事が好きか分からないし(多分、好きだろうけど)。その時、誰に婚約者ができたらイヤ?」

う~ん。婚約者が出来たら、今までみたく気軽に会えなくなるのかなぁ?
だとしたら──

「4人に限らず、(幼なじみ)みんなに婚約者が出来たら寂しいかも」
「はぁ~、アリアちゃんて、ぜんぜっん恋愛脳になってないのね!」

なんだろう……マイヤに『まだまだお子様ね!』って言われた気分。

「……もし、もしもよ? アリアちゃんに好きな人が出来て、その人がセレスちゃんかルナちゃんを好きになったらどうする?」

確かに! 可能性としては大いにある!!

「えー! イヤな“もしも”だなぁ」

そうならない事を祈るしかないな。

「……友人をやめる?」
「んー、やめないんじゃない? 当分ショックで立ち直れないかもしれないけど、時が経てば別な人を好きになるかもしれないし。でも友人は時が経っても友人だから」

セレスが「まっ、当然ね」と満足げだ。ルナも(私から見ると)嬉しそうに笑っている。
あれ? なぜかマイヤも嬉しそう?? 

目が合うと、マイヤは“こほん”と咳払いし、立て続けに質問をしてきた。
……なんか尋問を受けてる気分。

「夏季休暇中は、幼なじみの誰とも会わないの?」
「ん? 今、会ってるよ」
「私たちじゃないわよ!」

怒られた。幼なじみって言ったじゃん。
マイヤ、短気になってない!?

「カウイには会うかな? 前に一緒に出掛ける約束をしてたんだ」
「へぇ~、カウイくんて意外と積極的なんだ」

マイヤがぽつりと呟いた。

「ん?」
「いや、いいの。気にしないで」
「ああ。後、ミネルとウィズちゃんにも会うかな? ウィズちゃんが私に会いたいんだって! 可愛いよね~」

マイヤが「ふ~ん」とほくそ笑んだ。なになに? 今の笑い??
間髪かんぱつ入れずに、ルナがつぶやく。

「卑怯な」
「えっ? 卑怯??」
「ううん。アリア、私と兄様にも会ってよ」

ルナだけじゃなく、リーセさんも!?

「いいけど……リーセさん忙しいんじゃない?」
「大丈夫」

本当に大丈夫なのかな? リーセさん働いてるんだよ??

「じゃあ、また稽古でもつけてもらおうかな?」

私の提案にルナが首を横に振っている。

「お出掛けしよう」

お出掛け? ルナが!?
そんな事を言うなんて珍しいな。でも楽しそう!!

「いいね! セレスとマイヤも一緒に行く?」

私が誘うと、マイヤがちらっとルナを見た。

「いえ、やめておくわ。珍しくルナちゃんが(来ちゃダメって)感情むき出しだから」
「私も(ルナとリーセさんと会っても楽しくなさそうだし)遠慮しておくわ。私はアリアと2人で会うから」

セレスが「ふふん」と誇らしげにルナとマイヤを見た。
……うん、ケンカを売るのやめようね。そしてそういう所だからね、セレス。

「セレスちゃんもルナちゃんも想像以上に子供だったんだね。買いかぶり過ぎてたみたい。……なんか肩の力が抜けちゃったなぁ」

マイヤが気の緩んだ表情をしている。
ああ、それはなんか分かる。最初は年齢の割に大人っぽいなぁって私も思ってたもんな。

だけど、それって──

「それを言ったらマイヤもだけどね。前も良かったけど、今の方が付き合いやすいよ」

私が言うと、マイヤが「……そう」とそっぽを向いた。
耳が赤い。照れてるのかな? やっぱりマイヤにはツンデレの素質があるな。

……うん。それは、それでいい!!


その後も4人での話は大いに盛り上がり、あっという間に夕方になった。
セレスとルナは「また来るわ」と名残惜しそうに帰って行った。
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