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高等部 1年生

マイヤの作る“マイヤ”(3/4)

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マイヤ視点の話です。

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気がつくと卒業式が終わり、私は家路についていた。
いつの間に帰って来てたのかな? 全く記憶がないや。こんな事は初めて。

オーンくん、もしかしてアリアちゃんの事が好きなのかな?
でも、オーンくんは誰にでも優しいから、まだ分からない。

カウイくんはアリアちゃんを好きかもしれない。だけど、婚約者だから好きになる事に決めたのかも。
うん、きっとそう。もし私が婚約者だったら、私を好きになってたに決まってる。

だから大丈夫! ……だよね?



──高等部の入学式。

やっぱりアリアちゃんのいる場所にみんなが集まっている。
寮生活を始める前、お母様から強く言われた事があった。

「マイヤ、分かってるわね? 高等部での学校生活が重要ですからね。必ずオーンくんと婚約者になりなさい」

なんでかな? お母様は私の事を思って言ってくれてるのに……その時の事を思い出すと頭がズキズキする。


その日の夜はアリアちゃん達と一緒に夕食を食べる事になった。

“マイヤ”なら……待ち合わせより早めの時間に行くよね?
そう考えて、約束していた時間よりも早くレストランへ向かう。
イスに座ると、すぐにアリアちゃんが現れた。

……アリアちゃんって好きな人いるのかな?
会話の中でさり気なく、聞き出せないかな?

どうすれば良いか考えながら、アリアちゃんと言葉を交わす。

「交換留学は楽しかった?」
「カウイくんも留学して良かったって言ってたよ。カウイくん、どんどん背も高くなってね。2年目かな? ものすごいモテてたよ」

言った後で、チラッとアリアちゃんの様子をうかがう。

「へぇ~、そうだったんだ。確かに久しぶりにカウイに会って驚いたよ」

……カウイくんの事は好きではない? 好きならモテたって聞いたら不安に思うよね。
他の3人の誰か??
私が尋ねる前に、今度はアリアちゃんが質問してきた。

「マイヤもカウイに負けないくらいモテたでしょ?」
「私なんて……全然モテなかったよ」
「えっ! そうだったの!? 国の違いでモテる基準も変わるのかなぁ?」

そ、……そんなはずないでしょ!!
謙遜に決まってるでしょ! ど~う考えたってモテたわよ!!
正直にモテたと言うのは“マイヤ”じゃないだけなの!!

何を真に受けてるのよ!
そこは「マイヤならモテたに決まってるよ」が正解よ!!
……アリアちゃんはいつも、私が『こう返してくるだろう』と思う言葉を返してくれないから、イラッとする。
でも、イラッとするのは“マイヤ”じゃない。我慢、我慢。

その後、カウイくんがイジメから庇ってくれた話をした。これで『カウイくんはマイヤが好き』って勘違いするかも。
実際ところ、留学中にカウイくんとあまり話はしていない。
だけど、彼女に間違えられたのも、イジメられたのも、助けてくれたのも嘘ではないもの。


さて、次はアリアちゃん達が言ってた“学校を作った”話でもしようかな。
留学中もオーンくんと仲が良かった事をアピールしておこう。

「オーンくん、学校での出来事とか細かく教えてくれたんだ。だから、留学中もアリアちゃんたちと一緒にいるような気分になれて寂しくなかったよ」
「そうだったんだ。なんか留学中も考えてくれてたなんて嬉しいな。それにしても、オーンってマメなんだね」
「……どうなのかな?」

オーンくんって……マメなんだね??
違ーーう!! 全然、私の意図が伝わってない!!
そこは『オーンくんがマイヤとだけは連絡を取り合ってる』って思うところでしょう!!

慌てて、カウイくんとオーンくんは手紙のやり取りをしていなかった事も伝える。
これでようやく、私の思惑通り“マイヤは特別”って思ってくれたかも!?

本来の目的はアリアちゃんの好きな人を引き出す事だったのに。
セレスちゃんとルナちゃんが合流しちゃったから、まったく聞けなかった。
……アリアちゃん、疲れる。



──初登校の日。

アリアちゃんの誘いで一緒に登校する事になった。
早めに待ち合わせ場所に着くと、すでにセレスちゃんがいた。

そういえば、セレスちゃんとオーンくんはどうして婚約を解消したのかな?
オーンくんがアリアちゃんを好きで解消した? まさかね。

万が一、万が一よ。
オーンくんがアリアちゃんを好きだと仮定して──その事をセレスちゃんに伝えたら?
きっとセレスちゃんはアリアちゃんに怒るよね?
アリアちゃんはセレスちゃんと今までのように付き合えなくなるし、オーンくんとも付き合いづらくなる!!

「……セレスちゃん。オーンくんと婚約解消したって聞いたよ」
「えぇ、それが何か?」
「その、言いづらいんだけど、オーンくんってアリアちゃんの事が……好きなのかも」

断定して言ってないから、嘘はついてないよね? あくまで私の予想だもの。

「それが何か?」
「えっ!?」
「それで、貴方は私にどういう言葉を求めているのかしら?」

もしかして……知ってるの?
セレスちゃんって、オーンくんが好きだったよね?
それなのに……オーンくんはアリアちゃんを好きかもしれないんだよ?
アリアちゃんが抜け駆けしたのかもしれないんだよ? 腹が立たないの? 怒らないの??

「アリアに話したら許しませんから」

──!!
逆にセレスちゃんを怒らせてしまった。

「ご、ごめんね。セレスちゃん、私の勘違いだよね」

なんで? 私の時はイジメられたのに。
アリアちゃんは許されるの??

それからすぐにアリアちゃんが現れた。
セレスちゃんとアリアちゃんがいつも通り、楽しそうに会話をしている。

……本当にいつも通りなんだ。
アリアちゃんだけズルいよ。


学校に着き、上級生から自分のクラスを教えてもらう。
私はBクラスだった。

「オーンさん、エウロさん、ミネルさんはBクラス。カウイさんはDクラスです」

──えっ! 3人も私と同じクラス!?
やっぱり! 私は“優秀な男性”──オーンくんと結婚する運命なんだ!!
うん、きっと……きっと大丈夫。


初日の授業が終わり、帰る支度をする。
……偶然を装ってオーンくんと一緒に帰れないかな?
そっと後を追うと、オーンくんはAクラスを覗いていた。

Aクラスはアリアちゃんのいるクラス。
──何か嫌な予感がする。

クラスの子に声を掛けた後、オーンくんは教室から離れた。
校舎の外には出たけれど寮には帰らず、誰かを待っているらしい。
しばらくすると、アリアちゃんがやって来た。2人は何か会話をした後、その場からいなくなった。

今ので……確信に変わっちゃった。
オーンくんの好きな人は、本当にアリアちゃんなんだ。
あんな風に誰かを待つオーンくんの姿なんて見た事なかった。にこやかに接してくれるけど、話し掛けるのはいつも私からだったもの。


……このままじゃ、お母様の期待に応えられない。どうしよう。
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