一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます

Teko

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高等部 1年生

マイヤの作る“マイヤ”(2/4)

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──10歳、学校に通い始めた日。

すごい! オーンくんと同じクラス!!
早くもオーンくんは私の事を好きになるかもしれない。
うふふ。運すら私の味方なのね。

入学から1週間。オーンくんとミネルくん、エウロくんが一緒にお昼を食べに行こうとしている。
私も一緒にお昼を食べて、“マイヤだけは特別”ってみんなに知ってもらわないと。

「これから3人でお昼? 仲がいいんだね」

私が話し掛けると、エウロくんが答えた。

「ああ、俺が誘ったんだ。マイヤは?」

さすがエウロくん。予想した通り、聞いてくれた。

「それが……まだみんなのように親しくなった人がいないから、一人で食べに行こうかな? って思ってたの」
「そうなのか」

すかさず、オーンくんが声を掛けてくれた。

「……良かったら、僕たちと一緒に食べに行く?」
「えっ、いいの? 嬉しいな。ありがとう」

思惑通り! にっこりと微笑んだ。

昼食後、偶然セレスちゃん達と会った。
セレスちゃんは、私とオーンくんが一緒にお昼を食べたことが気に入らなかったらしい。
感情のままに私を責め立てた。

うふふ。セレスちゃんって、おバカさん。
オーンくんの評価は下るばかりだよ~。

と、思っていたのに……突然、予定外の出来事が起こった。
セレスちゃんがオーンくんをお昼に誘ったのだ。

「私たちは明日からお弁当を持ってきて、外で食べようと思ってます。それでもよろしいかしら?」

セレスちゃんの誘いにみんなが賛同し、幼なじみ達と一緒にお昼を食べる事になってしまった。
このままいけば、私とオーンくん、ミネルくん、エウロくんの4人でお昼を食べる日が続いたはずだったのに。
でも、結果的に一緒にお昼は食べる事にはなったから……大丈夫。


教室で話をしていた時、オーンくんの口からからアリアちゃんの名前が出てきた事があった。

「アリアって面白いよね」

名前が出てきたのは一度きりだったけど、その時のオーンくん、普段は見せないような顔で笑っていたな。



──11歳、ルナちゃんと同じクラスになった。
なんの利益もないクラスになっちゃった。

幼なじみと比べると、やっぱり他の男の子たちは劣って見えてしまう。
でも味方は多いに越したことはないし、何より“みんなに愛される可愛いマイヤ”にならないと。

相変わらず、ルナちゃんはいつも一人でいるなぁ。幼なじみとして、たまに話し掛けよう。
きっとみんなが“優しいマイヤ”として見てくれる。



──12歳、カウイくんと同じクラスになった。

カウイくんかぁ。
最近ちょっと変わったけど、まだまだ幼なじみの他の3人と比べると……頼りないよね。
それにルナちゃん同様、カウイくんってあまり話さないし。
“優しいマイヤ”だから、たまに話し掛けるくらいにしようかな?


ある日、いつものように幼なじみ達と一緒にお昼を食べていて、ふと気がついた。

あれ? アリアちゃんとルナちゃんが仲良くなってる。
ルナちゃんとアリアちゃんだから、私の計画に影響はないけど……。

なんで? 
ルナちゃんは、去年同じクラスになって話し掛けても全然話してくれなかったのに。
アリアちゃんとだけは話してる。
そういえば、同じクラスのカウイくんもアリアちゃんとだけはよく話す。セレスちゃんもアリアちゃんをよく気に掛けてる。

なんでかな? モヤッとする。
……きっと気のせい。気にする必要のない3人がアリアちゃんと仲良くなっても大丈夫。
私には関係ないもの。


そんな矢先、交換留学の話がきた。
誰も私を知らない国に行く。怖いし、行きたくないな。

両親に留学の話をするとお父様は「女の子だし、万が一の事があったら……」と乗り気ではなさそう。よかった。

……お母様は!?

「マイヤ、申し込みなさい。他国を知る事は将来──王妃になった時の強みになるわ!」

『怖いから行きたくない!』と思ったけど……言えない。
お母様の言ってる事はいつも正しいから。それにお母様は私の事を考えて言ってくれてるから。



──13歳目前、私は留学した。

留学先でも人気者でモテる私。他の女性達からは嫉妬の目で見られた。
そんな中、留学先で初めて同性で仲良くなった子がいた。

男の子に好かれていればいいやって思ってたけど、嬉しいな。
今までの私の考えは間違ってたのかな?


……すぐに、その考え自体が間違いだと分かったけれど。

仲の良かった子の好きな人が私を好きになった。
もちろん私は、告白されても断った。
きちんと正直に話せば分かってもらえるよね? ──そう思っていた。

仲の良かった子が、一瞬で私をイジメるリーダーになった。
えっ……? だって私はきちんと断ったよ? なんで? どうして??

イジメを受けた日──カウイくんが私の捨てられた勉強道具を持ってきてくれた。
汚れをパンパンと手で払い、拭いてくれた。

「はい」
「……ありがとう」

カウイくんはそれ以上何も言わなかった。カウイくんの優しさに涙が出そうだった。

……仲がいいと思ってたのに。もう、女の子なんて信用しない!
「私たちは何があっても親友だよね」って言ったって……こうやってすぐに裏切るんだ。


留学中は、男の子たちに守られながら過ごすと決めた。
「私の勉強道具が捨てられてたの。誰がやったか分からないけど……怖いな」って言えば、すぐに守ってくれた。

オーンくんと婚約者であるエウロくんには、定期的に手紙を送った。
2人は手紙を送る度、きちんと返事をくれた。
アリアちゃんから、たまに手紙が来る。……返信しないのは“私じゃない”し、短い文でも返せばいっか。

そういえば、エウロくんからの手紙にアリアちゃんが登場する事が多くなったな。
アリアちゃんと同じクラスになったからかな?
……またモヤッとする。でもアリアちゃんだから、恋愛には発展するとは思えない。
だから大丈夫。

この頃、カウイくんが急激な成長を遂げる。
こんなにも強く、かっこよく成長するなんて……予定外だな。こんな事なら、婚約者はカウイくんでも良かったかも。 
そうしたら、ひ弱なカウイくんが相手でも婚約者になってくれた“優しいマイヤ”って思われたかもしれないな。



──14歳、留学生活も最後の年を迎えた。
留学して良かった事は、私の一人勝ちの学校生活だったということ。
うふふ。でもさすがに2~3日置きに告白されると疲れちゃうな。

でも、モヤッとする事も増えた。
エウロくん同様、オーンくんの手紙にもアリアちゃんが登場してくることが多くなった。

なんで、みんなアリアちゃんの話をするのかな? 
アリアちゃんなんて、見た目も普通だし、いまだに魔法も使えない。勉強やその他の事だって私と比べたら劣ってるのに、な。
私と違って何も努力していないのに……なんでかな?


しばらくして、オーンくんとセレスちゃんが婚約を解消したとお母様から連絡があった。
やった! 思ってたより早かったけど、こちらが何もしなくても婚約を解消した!
やっぱり私の思った通りに事が進んでいる。
だから心配に思う必要はない。きっと大丈夫。



──2年間の留学生活を終え、中等部の卒業式。
久しぶりに行った学校は、私の知ってる学校と少し雰囲気が違っていた。

あっ、カウイくんがいる。近づいて声を掛ける。
挨拶を交わした後、カウイくんは誰かを探すようにキョロキョロと視線を動かした。

「……いた」

カウイくんが独り言みたいに呟く。

「えっ?」

私に見向きもせず、カウイくんが真っ直ぐに歩き出した。
進む先には、セレスちゃんとアリアちゃんがいた。急いでカウイくんの後を追い掛ける。
2人の近くまで行くと、アリアちゃんの言葉が耳に入った。

「ちょっとマイヤの事を考えてて……。元気かなぁ? って」

えっ? なんで私??
疑問に思いつつ様子をうかがっていると、すぐにカウイくんがアリアちゃんへ声を掛けた。

「マイヤかぁ……俺の事も少しは考えてくれた?」

口調が嬉しそう……?

「久しぶり、アリア。会いたかったよ」

──!! 
カウイくんて……もしかして……。
あっ。私も声を掛けなきゃ! 変に思われる。

「久しぶりだね。セレスちゃん、アリアちゃん」

2人に話し掛けながら、カウイくんの表情を見た。留学中の2年間、私には一度も見せなかった笑顔。
まさか、アリアちゃんが好きなの? なんで??

その後、エウロくんとミネルくん、オーンくんとも久しぶりに話をした。

あれ? みんな……なんか変わった?
雰囲気? 表情?? なんだろう。なぜか不安で胸がドキドキする。
それにアリアちゃんと話す時はみんな、私の時とは違った表情を見せている気がする。

そういえば、アリアちゃんがいる所にみんなが自然に集まったような……?
私が求めていた場所に“マイヤ”ではなく、“アリアちゃん”がいる。
……私、留学中も頑張ったよ? それなのになんでかな? どうしてかな??


その日の卒業式はそれから──まったく記憶がない。
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