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高等部 1年生
間違った正義はカッコ悪い(前編)
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あれから数日が経過し、私とカウイには警護がつく事になった。
12名の警護員の方々とは、事前に打ち合わせを兼ねて挨拶する機会があった。
もちろん12名全員が一度に警護につくわけではなく、基本2名体制とのこと。
24時間体制なので、交代しながら警護につくと教えてくれた。
リーダーの“ララ”さんは、なんと女性!
女性でリーダーなんて、かっこいいし憧れる!!
ララさんが全員を順番に紹介した後、いくつかの注意事項を説明してくれた。
最後に──
「このメンバー以外、警護につく事は絶対にありません。『臨時で警護につく事になりました』という警護員が現れても、決して信用しないでください」
“絶対”、“決して”という言葉に『怪しいと思ったら信用するな』という力強いメッセージを感じる。
迷惑を掛けない為にも絶対に守らないと!!
「分かりました。今日からよろしくお願いします」
深々と頭を下げ、こうして私(とカウイ)の警護つき生活が始まった。
マイヤといえば……あれから、いつもと変わらない可愛い笑顔で声を掛けてくれる。
……特にエウロについて触れてくる事もない。
私が余計な事を言って口出しするのも変だし、相談してくれるなら力になりたいな。
とりあえず週末、カウイと約束している“お互いの両親に婚約解消を伝えに行く”というミッションをクリアしなければ!!
理由を聞かれたら、なんて言おうかなぁ~。
週末になり、少し緊張しながらもカウイの家に赴いた。
カウイが事前に婚約解消の話をしていてくれたみたいで、特に理由を聞かれる事もなかった。
「残念だけど、仕方ないわね。アリアさんが娘になったら化粧の仕方とか教えがいがあったんだけど、ふふ」
ホーラさん(カウイの母)が艶やかに笑ってみせる。
その後「まぁ、まだ分からないものね? ふふ」という含みのある言い方が、また妖艶さを際立たせていた。
私の家も事前に伝えてあったので、スムーズに報告が終わった。
お母様が私に婚約者がいなくなる事を「大丈夫かしら?」と不安に思ってはいるみたいだけど……。
お父様は「アリアだから大丈夫だよ」と言ってくれた。
お母様は“アリアだから大丈夫かしら”。
お父様は“アリアだから大丈夫だよ”。
夫婦でこうも意見が真っ二つに分かれるとは……。
安心され過ぎても調子に乗るだけだし、心配され過ぎても不満に思ったかもしれないし、私にとってはこの両親で良かったんだろうなぁと改めて思う。
帰り際、カウイがエレに「エレくんは上機嫌だと思ってたけど違うんだね」と声を掛けていた。
「ただの“婚約解消”だったらそうだったんですけど、ね。きっと理由がある“婚約解消”だと思うので」
…………ああ!
エレは婚約した時、私と遊べなくなると思って寂しがってたからなぁ。
カウイはその事を知ってたのかな?
それにしても婚約解消の理由を述べていないのに“理由がある婚約解消”だって気がつくなんて、エレって天使な上に……人の心も分かる天才なの!!?
感動からふと我に返ると、カウイとエレが私の方をジーッと見ていた。
「きっと見当違いの事をに考えてますね」
「そうだね、アリアだからね」
…………ん?
なんか2人もちょっとだけ呆れてない??
その後は寮へと戻るまでの間、エレとたっぷり話をして存分に癒やされた。
「エレといると癒やされるなぁ。やっぱり安らぎをもたらす魔法が使えるからかなぁ?」
私が言った一言に年相応の屈託のない笑顔を見せる。
この笑顔を見るだけでも、すっごく癒やされるなぁ。
1週間と経たない内に二ティと勝負して、オーンに告白されて、オリュンが脱走して狙われる事になって、婚約を解消して……。
色々とあり過ぎて、心身ともに疲れてたんだな、私。
オーンの事は誰にも話してないけど、オリュンの件はエレにも説明した。
予想通り、ものすごく心配してくれた。
残念な事に、私が調べようとしている“魔法から身を守る方法”はエレも聞いたことがないらしい。
「今年のテスタコーポ大会に参加して、“特別室図書館の使用権利”を手に入れて調べてみるよ」
エレが誇らしげな表情を見せた。
……本当に有言実行しそうだな。
週末明け──教室に入ると、クラスメイトのユラちゃんが「アリアー!」と目を丸くしながらやって来た。
な、なにごと!?
慌てた様子とは裏腹に、私の耳元に顔を近づけコソッと囁く。
「カウイくんと婚約解消したの?」
な、なんで知ってるの?
まだお互いの家族しか知らないのに……。
私が返事をしない内に、ユラちゃんが小さな声で話を続ける。
「もう聞いてると思うけど、エウロくんとマイヤちゃんも婚約解消したみたいだよ。アリアの幼なじみが全員婚約解消したから、みんな色めき立ってるみたい」
えっ! エウロとマイヤも婚約解消したの!!?
聞いてないし、知らなかった!
私も正式に婚約を解消したのは週末だったという事もあって、幼なじみたちにも『カウイと婚約解消した』とは伝えていない。
その事を考えると2人の婚約解消を知らなかったのはいいとして……マイヤがエウロを意識してる? と思った途端に婚約解消!?
…………謎すぎる。
またまたまた私の予想は外れていたらしい。
それよりも……ユラちゃんが言った『みんな色めき立ってるみたい』っていうセリフ。
みんなって、学校の生徒の事だよね?
な、なんで? みんな知ってるの??
「ねぇ、ユラちゃん。私とカウイが婚約を解消したって、どこで知ったの?」
「校内で噂になってて……だから本当なのかな? って思って」
噂の出どころまでは知らないらしい。ただ2組同時の婚約解消という事もあり、校内中の噂になっていると言っていた。
事実だから知られてもいい事だけど、なんで校内中の噂なの!?
遅れて来たサイネちゃんも教室へ入るなり、興奮気味に私に話し掛けてきた。
「アリア! 好きな人ができたの!?」
「…………へっ!?」
私って、いつの間に好きな人ができてたの!?
……はっ!! あまりの驚きに一瞬『そうなのかな?』と錯覚してしまった。
「いや、できてないけど。急になんで?」
「アリアの婚約解消を目撃した人がいるみたいで、アリアが『好きな人ができたから婚約を解消してほしい』ってカウイくんに言ってたって」
んー、半分事実で、半分事実無根だなぁ。
婚約解消の話をした時、周りに人がいたような感じはしなかったけど……?
それで知られて噂になってるってことか。
サイネちゃんが「それで……」と浮かない表情をしている。
「いや、ごめん。なんでもない」
どうしたのかな?
なんでもないって顔じゃないけど……。
この時はまだ知らなかった。
まさか、事実無根の噂が嫌がらせを受けるキッカケになろうとは……。
12名の警護員の方々とは、事前に打ち合わせを兼ねて挨拶する機会があった。
もちろん12名全員が一度に警護につくわけではなく、基本2名体制とのこと。
24時間体制なので、交代しながら警護につくと教えてくれた。
リーダーの“ララ”さんは、なんと女性!
女性でリーダーなんて、かっこいいし憧れる!!
ララさんが全員を順番に紹介した後、いくつかの注意事項を説明してくれた。
最後に──
「このメンバー以外、警護につく事は絶対にありません。『臨時で警護につく事になりました』という警護員が現れても、決して信用しないでください」
“絶対”、“決して”という言葉に『怪しいと思ったら信用するな』という力強いメッセージを感じる。
迷惑を掛けない為にも絶対に守らないと!!
「分かりました。今日からよろしくお願いします」
深々と頭を下げ、こうして私(とカウイ)の警護つき生活が始まった。
マイヤといえば……あれから、いつもと変わらない可愛い笑顔で声を掛けてくれる。
……特にエウロについて触れてくる事もない。
私が余計な事を言って口出しするのも変だし、相談してくれるなら力になりたいな。
とりあえず週末、カウイと約束している“お互いの両親に婚約解消を伝えに行く”というミッションをクリアしなければ!!
理由を聞かれたら、なんて言おうかなぁ~。
週末になり、少し緊張しながらもカウイの家に赴いた。
カウイが事前に婚約解消の話をしていてくれたみたいで、特に理由を聞かれる事もなかった。
「残念だけど、仕方ないわね。アリアさんが娘になったら化粧の仕方とか教えがいがあったんだけど、ふふ」
ホーラさん(カウイの母)が艶やかに笑ってみせる。
その後「まぁ、まだ分からないものね? ふふ」という含みのある言い方が、また妖艶さを際立たせていた。
私の家も事前に伝えてあったので、スムーズに報告が終わった。
お母様が私に婚約者がいなくなる事を「大丈夫かしら?」と不安に思ってはいるみたいだけど……。
お父様は「アリアだから大丈夫だよ」と言ってくれた。
お母様は“アリアだから大丈夫かしら”。
お父様は“アリアだから大丈夫だよ”。
夫婦でこうも意見が真っ二つに分かれるとは……。
安心され過ぎても調子に乗るだけだし、心配され過ぎても不満に思ったかもしれないし、私にとってはこの両親で良かったんだろうなぁと改めて思う。
帰り際、カウイがエレに「エレくんは上機嫌だと思ってたけど違うんだね」と声を掛けていた。
「ただの“婚約解消”だったらそうだったんですけど、ね。きっと理由がある“婚約解消”だと思うので」
…………ああ!
エレは婚約した時、私と遊べなくなると思って寂しがってたからなぁ。
カウイはその事を知ってたのかな?
それにしても婚約解消の理由を述べていないのに“理由がある婚約解消”だって気がつくなんて、エレって天使な上に……人の心も分かる天才なの!!?
感動からふと我に返ると、カウイとエレが私の方をジーッと見ていた。
「きっと見当違いの事をに考えてますね」
「そうだね、アリアだからね」
…………ん?
なんか2人もちょっとだけ呆れてない??
その後は寮へと戻るまでの間、エレとたっぷり話をして存分に癒やされた。
「エレといると癒やされるなぁ。やっぱり安らぎをもたらす魔法が使えるからかなぁ?」
私が言った一言に年相応の屈託のない笑顔を見せる。
この笑顔を見るだけでも、すっごく癒やされるなぁ。
1週間と経たない内に二ティと勝負して、オーンに告白されて、オリュンが脱走して狙われる事になって、婚約を解消して……。
色々とあり過ぎて、心身ともに疲れてたんだな、私。
オーンの事は誰にも話してないけど、オリュンの件はエレにも説明した。
予想通り、ものすごく心配してくれた。
残念な事に、私が調べようとしている“魔法から身を守る方法”はエレも聞いたことがないらしい。
「今年のテスタコーポ大会に参加して、“特別室図書館の使用権利”を手に入れて調べてみるよ」
エレが誇らしげな表情を見せた。
……本当に有言実行しそうだな。
週末明け──教室に入ると、クラスメイトのユラちゃんが「アリアー!」と目を丸くしながらやって来た。
な、なにごと!?
慌てた様子とは裏腹に、私の耳元に顔を近づけコソッと囁く。
「カウイくんと婚約解消したの?」
な、なんで知ってるの?
まだお互いの家族しか知らないのに……。
私が返事をしない内に、ユラちゃんが小さな声で話を続ける。
「もう聞いてると思うけど、エウロくんとマイヤちゃんも婚約解消したみたいだよ。アリアの幼なじみが全員婚約解消したから、みんな色めき立ってるみたい」
えっ! エウロとマイヤも婚約解消したの!!?
聞いてないし、知らなかった!
私も正式に婚約を解消したのは週末だったという事もあって、幼なじみたちにも『カウイと婚約解消した』とは伝えていない。
その事を考えると2人の婚約解消を知らなかったのはいいとして……マイヤがエウロを意識してる? と思った途端に婚約解消!?
…………謎すぎる。
またまたまた私の予想は外れていたらしい。
それよりも……ユラちゃんが言った『みんな色めき立ってるみたい』っていうセリフ。
みんなって、学校の生徒の事だよね?
な、なんで? みんな知ってるの??
「ねぇ、ユラちゃん。私とカウイが婚約を解消したって、どこで知ったの?」
「校内で噂になってて……だから本当なのかな? って思って」
噂の出どころまでは知らないらしい。ただ2組同時の婚約解消という事もあり、校内中の噂になっていると言っていた。
事実だから知られてもいい事だけど、なんで校内中の噂なの!?
遅れて来たサイネちゃんも教室へ入るなり、興奮気味に私に話し掛けてきた。
「アリア! 好きな人ができたの!?」
「…………へっ!?」
私って、いつの間に好きな人ができてたの!?
……はっ!! あまりの驚きに一瞬『そうなのかな?』と錯覚してしまった。
「いや、できてないけど。急になんで?」
「アリアの婚約解消を目撃した人がいるみたいで、アリアが『好きな人ができたから婚約を解消してほしい』ってカウイくんに言ってたって」
んー、半分事実で、半分事実無根だなぁ。
婚約解消の話をした時、周りに人がいたような感じはしなかったけど……?
それで知られて噂になってるってことか。
サイネちゃんが「それで……」と浮かない表情をしている。
「いや、ごめん。なんでもない」
どうしたのかな?
なんでもないって顔じゃないけど……。
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まさか、事実無根の噂が嫌がらせを受けるキッカケになろうとは……。
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