一番モテないヒロインに転生しましたが、なぜかモテてます

Teko

文字の大きさ
上 下
98 / 261
高等部 1年生

間違った正義はカッコ悪い(前編)

しおりを挟む
あれから数日が経過し、私とカウイには警護がつく事になった。

12名の警護員の方々とは、事前に打ち合わせを兼ねて挨拶する機会があった。
もちろん12名全員が一度に警護につくわけではなく、基本2名体制とのこと。
24時間体制なので、交代しながら警護につくと教えてくれた。

リーダーの“ララ”さんは、なんと女性!
女性でリーダーなんて、かっこいいし憧れる!!
ララさんが全員を順番に紹介した後、いくつかの注意事項を説明してくれた。

最後に──

「このメンバー以外、警護につく事は絶対にありません。『臨時で警護につく事になりました』という警護員が現れても、決して信用しないでください」

“絶対”、“決して”という言葉に『怪しいと思ったら信用するな』という力強いメッセージを感じる。
迷惑を掛けない為にも絶対に守らないと!!

「分かりました。今日からよろしくお願いします」

深々と頭を下げ、こうして私(とカウイ)の警護つき生活が始まった。


マイヤといえば……あれから、いつもと変わらない可愛い笑顔で声を掛けてくれる。
……特にエウロについて触れてくる事もない。
私が余計な事を言って口出しするのも変だし、相談してくれるなら力になりたいな。

とりあえず週末、カウイと約束している“お互いの両親に婚約解消を伝えに行く”というミッションをクリアしなければ!!
理由を聞かれたら、なんて言おうかなぁ~。



週末になり、少し緊張しながらもカウイの家に赴いた。
カウイが事前に婚約解消の話をしていてくれたみたいで、特に理由を聞かれる事もなかった。

「残念だけど、仕方ないわね。アリアさんが娘になったら化粧の仕方とか教えがいがあったんだけど、ふふ」

ホーラさん(カウイの母)があでやかに笑ってみせる。
その後「まぁ、まだ分からないものね? ふふ」という含みのある言い方が、また妖艶ようえんさを際立たせていた。

私の家も事前に伝えてあったので、スムーズに報告が終わった。
お母様が私に婚約者がいなくなる事を「大丈夫かしら?」と不安に思ってはいるみたいだけど……。
お父様は「アリアだから大丈夫だよ」と言ってくれた。

お母様は“アリアだから大丈夫かしら”。
お父様は“アリアだから大丈夫だよ”。

夫婦でこうも意見が真っ二つに分かれるとは……。
安心され過ぎても調子に乗るだけだし、心配され過ぎても不満に思ったかもしれないし、私にとってはこの両親で良かったんだろうなぁと改めて思う。


帰り際、カウイがエレに「エレくんは上機嫌だと思ってたけど違うんだね」と声を掛けていた。

「ただの“婚約解消”だったらそうだったんですけど、ね。きっと理由がある“婚約解消”だと思うので」

…………ああ!
エレは婚約した時、私と遊べなくなると思って寂しがってたからなぁ。
カウイはその事を知ってたのかな?
それにしても婚約解消の理由を述べていないのに“理由がある婚約解消”だって気がつくなんて、エレって天使な上に……人の心も分かる天才なの!!?

感動からふと我に返ると、カウイとエレが私の方をジーッと見ていた。

「きっと見当違いの事をに考えてますね」
「そうだね、アリアだからね」

…………ん?
なんか2人もちょっとだけ呆れてない??


その後は寮へと戻るまでの間、エレとたっぷり話をして存分に癒やされた。

「エレといると癒やされるなぁ。やっぱり安らぎをもたらす魔法が使えるからかなぁ?」

私が言った一言に年相応の屈託のない笑顔を見せる。
この笑顔を見るだけでも、すっごく癒やされるなぁ。

1週間と経たない内に二ティと勝負して、オーンに告白されて、オリュンが脱走して狙われる事になって、婚約を解消して……。
色々とあり過ぎて、心身ともに疲れてたんだな、私。

オーンの事は誰にも話してないけど、オリュンの件はエレにも説明した。
予想通り、ものすごく心配してくれた。
残念な事に、私が調べようとしている“魔法から身を守る方法”はエレも聞いたことがないらしい。

「今年のテスタコーポ大会に参加して、“特別室図書館の使用権利”を手に入れて調べてみるよ」

エレが誇らしげな表情を見せた。
……本当に有言実行しそうだな。



週末明け──教室に入ると、クラスメイトのユラちゃんが「アリアー!」と目を丸くしながらやって来た。

な、なにごと!?

慌てた様子とは裏腹に、私の耳元に顔を近づけコソッとささやく。

「カウイくんと婚約解消したの?」

な、なんで知ってるの?
まだお互いの家族しか知らないのに……。
私が返事をしない内に、ユラちゃんが小さな声で話を続ける。

「もう聞いてると思うけど、エウロくんとマイヤちゃんも婚約解消したみたいだよ。アリアの幼なじみが全員婚約解消したから、みんな色めき立ってるみたい」

えっ! エウロとマイヤも婚約解消したの!!?
聞いてないし、知らなかった!
私も正式に婚約を解消したのは週末だったという事もあって、幼なじみたちにも『カウイと婚約解消した』とは伝えていない。
その事を考えると2人の婚約解消を知らなかったのはいいとして……マイヤがエウロを意識してる? と思った途端に婚約解消!?

…………謎すぎる。
またまたまた私の予想は外れていたらしい。

それよりも……ユラちゃんが言った『みんな色めき立ってるみたい』っていうセリフ。
みんなって、学校の生徒の事だよね?

な、なんで? みんな知ってるの??

「ねぇ、ユラちゃん。私とカウイが婚約を解消したって、どこで知ったの?」
「校内で噂になってて……だから本当なのかな? って思って」

噂の出どころまでは知らないらしい。ただ2組同時の婚約解消という事もあり、校内中の噂になっていると言っていた。
事実だから知られてもいい事だけど、なんで校内中の噂なの!?

遅れて来たサイネちゃんも教室へ入るなり、興奮気味に私に話し掛けてきた。

「アリア! 好きな人ができたの!?」
「…………へっ!?」

私って、いつの間に好きな人ができてたの!? 
……はっ!! あまりの驚きに一瞬『そうなのかな?』と錯覚してしまった。

「いや、できてないけど。急になんで?」
「アリアの婚約解消を目撃した人がいるみたいで、アリアが『好きな人ができたから婚約を解消してほしい』ってカウイくんに言ってたって」

んー、半分事実で、半分事実無根だなぁ。
婚約解消の話をした時、周りに人がいたような感じはしなかったけど……?
それで知られて噂になってるってことか。

サイネちゃんが「それで……」と浮かない表情をしている。

「いや、ごめん。なんでもない」

どうしたのかな?
なんでもないって顔じゃないけど……。


この時はまだ知らなかった。
まさか、事実無根の噂が嫌がらせを受けるキッカケになろうとは……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!

神桜
ファンタジー
小学生の子を事故から救った華倉愛里。本当は死ぬ予定じゃなかった華倉愛里を神が転生させて、愛し子にし家族や精霊、神に愛されて楽しく過ごす話! 『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!』の番外編を『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!番外編』においています!良かったら見てください! 投稿は1日おきか、毎日更新です。不規則です!宜しくお願いします!

処理中です...