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高等部 1年生

悩みも積もれば何とやら(後編)

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──放課後、セレスが借りてくれた会議室にみんなが集まる。

……そういえば、オーンと会うのは一昨日(告白)以来かぁ。
う~ん、こんなにも早く会うとは思わなかったな。
普通に、普通に、普通に……。
そう思いつつも……ついつい目が泳いでしまう。

チラッとオーンの様子をうかがう。
気のせいかな? なんか笑っているような??

「で! アリア!! 何があったの!?」

待ちきれなかったのかセレスから話を切り出した。
そうだった。まずは本題を話さないと。

「ええとね──」

私がマライオから聞いた話や両親が説明してくれた話をみんなに順を追って説明する。
話している途中で、すでにセレスが怒りで冷静さをなくしているのが伝わってきた。
エウロは心配そうな表情を浮かべながら聞いてくれている。

話し終えたところで、改めてみんなの顔を見た。
最後に、私がみんなに話そうと思った経緯について伝える。

「みんなとは一緒にいる機会が多いから巻き込んでしまう可能性があるなと思って。だから早めに話しておきたかったんだ。警護の人がついてくれるようになるから、大丈夫だとは思うんだけど……なんかごめんね」

これから起こるかもしれない危険な事にみんなを巻き込んでしまうかもしれない。
謝罪をすると、セレスが勢いよく椅子から立ち上がった。

「謝る必要なんて微塵もなくってよ? それにアリアにしては珍しく正解よ! よく話してくれたわ!!」

セレスが嬉しいのか怒っているのか分からない不思議なテンションで語っている。
……そう言ってくれるなら話して良かったな。

「復讐のつもりなんでしょうけど、逆恨みもいいとこだわ!! 」

あっ。感情が怒りオンリーになった。
怒鳴っただけでは怒りが収まらなかったのか、セレスはまだぶつぶつと文句を言っている。

その横でルナが私の手を握り、真剣な眼差しで言った。

「アリアは私が守る」

ルナ、カッコいいよ。発言と行動がイケメンだよ。
そして、ルナの発言に黙っていないのが──やっぱりセレスだった。

「わ、た、しがアリアを守るから大丈夫よ。ルナはいつも通りボーッとしてなさい」
「ボーっとしてないし。セレスなんていつも怒ってるし」

セレスが「なんですってー!」と怒っている。

「……いや、うん。2人ともありがとうね」

もはや2人の言い合いは定番といっても過言じゃないな。
最近はこれはこれで仲がいいのかな? とも思い、少しの間、放置する事にした。

言い争う2人とは対照的に、マイヤが心配そうに眉を下げている。

「アリアちゃん、カウイくん気をつけてね」
「ありがとう、マイヤ」
「……なんか私も怖くなってきちゃった」

マイヤは心配と同時に恐怖もわいてきたみたい。
そうだよね。実際に殺された人もいるし、怖くもなるよね。

オーンが私とカウイに助言をしてくれた。

「セレスが言った通り、アリアとカウイが悪いなんて思う必要はないよ。警護がつくまでの間は1人での行動は避けて。ひとけが少ない場所とかも避けるよう気をつけて。警護がついても……2人は手引きした人が判明するまでの間、軽率な行動は避けた方がいい」

経験上、慣れてるのかな? 的確なアドバイス!
オーンの言葉に私が返事をするより先にカウイが答えた。

「そ……」
「そうだね、気をつけるよ」

どうしたのかな? 
カウイがいつもより積極的というか、なんというか……??
いつもとちょっと違う感じ。

返事をするタイミングをなくした私を余所に、エウロがオーンに同調する。

「そうだな。むしろアリアとカウイは被害者だよ。だから俺たちの事で気を病む必要はない。それに2人にとっては『いつ来るんだ?』って考えたら不安だよな」

エウロはいつも相手の立場になって考えてくれるな。
こういう所、尊敬するし見習いたいな。

ミネルは……というと、顎に手をあてて考え込んでいる。

「ミネルどうしたの?」
「いや、いつ来るか分からない奴を気にして生活するのは向こうに先手を取られた気分で面白くない」

なんか発言がミネルらしいな。

「後手に回るのは苦手だからな。情報を集めて必ず探し出す。それしかないだろ」
「探し出す……大丈夫? 危険じゃない?」

私が不安をそのまま口にすると、ミネルが余裕の笑みを浮かべる。

「まずは調べるだけで行動には移さない。それなら大丈夫だろう」
「そ、そうだよね。私も調べてみる!」

怯えて待つだけは私の性に合わない!!
ミネルの意見に賛同すると、誰が何を話したのか分からないくらい同時に否定された。
 
「お前はやめとけ」
「アリアはやめといた方がいいわ!!」
「アドバイス聞いてた? やめておこうね」
「アリアは絶対ダメ」
「危ないよ。アリアちゃん」
「アリアの望みは極力叶えてあげたいけど、今回ばかりは……」
「今はやめておいた方がいいんじゃないか?」

さすがに全員に否定されるとは……。

「わ、分かったよ」

渋々、承諾するしかなかった。



帰り際、エウロが私の元にやって来た。

「少しでも不安に思ったら、溜め込まずに言うんだぞ。一人でいたくない時は、遠慮せずに声を掛けろよ? その方が俺は嬉しいから」
「ありがとう、エウロ」

笑顔でお礼を伝える。
エウロの気遣いはものすごく嬉しい……けど、あれ? 固まってる??

「俺は嬉しい……から?」

ん? また同じセリフを言った?
さらになんで疑問形??
首をかしげていると、突然、エウロが「ああー」と唸りながらその場にしゃがみ込んだ。

えっ! なに? 
頭を抱え込んでるけど、何があったの??

「俺って…………本当に鈍かったんだなあ」

ん? 急にどうしたんだろう?
どちらかというと思いやりがあるエウロは敏感な方だと思うけど、な。

「大丈夫? エウロ??」

心配で声を掛けると、エウロがゆっくりと立ち上がった。
複雑そうな表情で「はぁぁ~」と大きなため息をついている。

「……いや、なんでもない。なんでもないんだ」
「なら、いいけど?」

んー、なんでもないようには見えないけど。
考えている間に、エウロは「じゃあな」と言って私の頭に手をポンと置き、そのままオーンたちと一緒に男子寮へ帰って行った。

本当に大丈夫かな? エウロ。
若干、心配は残りつつも、女子寮へと戻る事にした。

道すがら、さっき落ち着いたはずのセレスとルナが、再び言い合いを始めている。
さすがにそろそろ止めようかな?
声を掛けようとした瞬間、横にいたマイヤがビックリするような質問を投げかけてきた。

「エウロくんって、アリアちゃんの事が好きなのかな?」

へっ!!? 
マイヤのビックリ発言に、思わず笑ってしまう。

「あはは。それはないよー」
「そうかな? エウロくん、アリアちゃんの前では少し普段と違うように見えるけど?」
「ああ、それは……以前“私だけはなぜか緊張しない”って言ってたから、女性扱いしていないんだと思うよ」
「そうなんだ……。それならいいんだ」

そう呟くと、マイヤは屈託のない笑顔を見せた。


え……? 今の発言ってもしや──マイヤがエウロを意識してる!?
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