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中等部 編

14歳、波乱の幕開け(1/4)

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──20分が経過した。


モハズさんは戻ってこなかった。
サウロさんがヤイネさんやビアンさんと顔を見合わせ、スッと立ち上がる。

「よし、行くぞ! リーセ、後は頼んだ」
「分かりました」

サウロさん達が向かったのを見届け、私たちも元来た道へと歩き始めた次の瞬間、後ろから大きな声が聞こえてきた。

「ちょっと待ってくれ! モハズが戻ってきた!!」


──えっ! !
振り返ると、サウロさん達と一緒にモハズさんが立っている。
よかったぁ~。モハズさん、無事だったんだ!!

「例の道を歩いてたら、1分も立たない内にモハズが見つかったんだ」
「そうだったんですね。モハズさんが無事で何よりです。怪我はないですか?」
「ありがとう、リーセ。大丈夫。心配掛けちゃったみたいでごめん」

無事が確認できて安心したのか、サウロさんが今度は少し厳しめの口調でモハズさんを叱り出す。

「命令も聞かずに勝手な行動をするな! 1人の勝手な行動で、みんなが命を落とす可能性だってあるんだぞ! それくらいお前だって分かってるだろ?」
「ご、ごめんなさい。来た事もあるルートだったから……大丈夫だろうと思って」
「はぁ~、説教は追い追いするとして……大丈夫だったのか?」
「うん。結構遠くまで見に行ったんだけど、特に何もない普通の道だった。人や生物も見かけなかったよ」

サウロさんに叱られたという事もあり、モハズさんの声にはあまり元気がない。
返事を聞いたサウロさんはというと、腕を組みながらこれから先の行動を考えているようだ。

「そうか……。無事でよかったが……この道はたぶん《土の魔法》と《緑の魔法》を使い、人工的に作られている。誰が何の目的で作ったのか分からない以上、この先のルートが安全という保証はなくなった。オーンとアリアには悪いが今回の旅はここまでだ。リーセが記録を取り終えたら、引き返そう」

「分かりました、賢明な判断だと思います」
「はい、分かりました」

オーンが返事をした後、私も頷きながらサウロさんに同意した。

体験で来ただけのオーンと私に万が一の事があってはいけない、無茶はできないというのがサウロさんの出した結論なんだろうな。
……残念だけど、こればかりはしょうがない。

「本当に迷惑を掛けてごめんなさい!!」

モハズさんが深々とみんなに謝罪をした。
頭を下げ続けるモハズさんの横にきたサウロさんが肩をポンと叩く。

「みんな、今回の件は許してやってくれ。二度とこんな事をしようと思わないくらい、 俺が責任もってモハズを叱っておくから。それで、だ。今から昨日泊まった場所まで戻り、そこで1泊しようと思う。そして、次の日“ルリラッサ”の町まで戻る。いいな?」
「分かりました」

サウロさんの指示にみんなが返事をし、再び、昨日泊まった場所に向かって歩き始めた。

何か起きたら……っていう不安もあったけど、何のトラブルも起きなくてよかった。
到着後、すぐにサウロさんが指示を出す。

「昨日と同じ分担にしよう。早速、準備に取り掛かってくれ。アリア! 食料だけど、多めに使っていいぞ」
「分かりました。豪勢な料理を作ります!」
「おっ、いいな。それは楽しみだ」

元気のないモハズさんに美味しい料理を作ろう!
最後の夜だもん。せっかくなら楽しく終わりたい。

料理を作り終わった後は、みんなで集まり、一緒に食べ始める。

昨日に引き続き、夕飯は大好評!!
みんなと楽しく会話をしていく内にモハズさんも段々と元気になり、食べ終わる頃にはいつもの明るさを取り戻していた。
……というか、むしろ元気過ぎるくらいだけど……本当によかったぁ。

明日もまた、初日に経験したあの険しい道のりを1日中歩く事になる。
早めに就寝するようサウロさんから言われ、モハズさんと2人でテントに入った。

寝袋に入りながら、モハズさんがお礼の言葉を口にする。

「短い期間だったけど、楽しかったよ。ありがとう」
「私もモハズさんが居てくれたお陰で楽しかったです。ありがとうございます」
「あはは、照れるなぁ。……おやすみ」
「おやすみなさい」


──深夜、小さな物音に意識が浮上する。

なんか目の前に人の気配を感じるような……。
寝ぼけながら目を開けようとした瞬間、何者かに思い切り首を絞められた。

「うっ! うぅ……っ」

苦しい……声が出せないっ!
目を開ける事はできたものの、暗闇で誰なのかも分からない。

何かあった時に身動きできるようにと、寝袋でも手を出して寝ていたのが幸いした。
まずは、絞めている手を外さなきゃ!!

相手の手首を掴み、外そうと必死にもがいたけれど、力の差があるからか全く外れない。

よく聞くと、呟くように「アリア死ね、アリア死ね……」と何度も繰り返している。


──この声はモハズさんだ!!

目が慣れてきたのか、相手の顔も徐々にはっきりとしてくる。
そこには予想通り、恐ろしい形相をしたモハズさんの姿があった。

モハズさんの目はカッと開き、血走っている。それに焦点も合っていない。
首を絞める力は先ほどよりも強まっていて、呼吸する隙間すらない。

モハズさんは私を本気で殺そうとしている。
……な、なんで? 急にどうして!?

混乱しながらも懸命にふりほどこうとするけれど、手に力が入らなくなってきた。
時間の経過と共に、どんどんと頭がボーッとしてくる。
諦めちゃダメだ……早く手を外さないと……。

…………そうだ。
ぼんやりとした頭を奮い立たせ、横に置いておいた剣に必死で手を伸ばす。
お願い! 届いて……!!

ふと、指先に剣の鞘が触れる。
届いた!! ……よし、チャンスは一度だけ。手加減したら、失敗するかもしれない。
モハズさん! ごめんなさい!!

鞘を掴み、剣の柄頭で思い切りモハズさんの頭を殴る。
その反動で首を絞めていた手が外れ、モハズさんが横に倒れた。

「っ! ……はっ、かはっ」

呼吸がつらい。酸欠状態になっている所為で、頭もふらつく。
助けを呼びたいのに、むせて咳込む事しかできない。

けれど、ここにいるのは危険だ。何とか逃げ出さないと!
なりふり構わず、這うようにしてテントから出ようとした瞬間、倒れていたはずのモハズさんが信じられないほどの力で私の足を引っ張った。

痛いっ! ……まずい! このままじゃ……!
引き戻されないよう、テントの入り口に死に物狂いでしがみつく。

「かはっ、……た、たすけ、っ」

ダメだ、うまく声が出せない。
願いもむなしく、ものすごい力でテントへと引きずり込まれる。
がむしゃらに暴れてみるが、とんでもない力を前に為す術もない。


再び、モハズさんが馬乗りになり、私の首へと手を掛けた。
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