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中等部 編
13歳、テスタコーポ大会 1日目(前編)
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「本日は晴天に恵まれ、絶好の大会日和ですね! 正々堂々と悔いのない大会にしていただきたいと思います。それでは、第48回 テスタコーポ大会を開催します!!」
理事長の挨拶とともにテスタコーポ大会は幕を開けた。
1ヶ月間、猛特訓した成果を出す時がついにきたんだ!
参加者がまず集められたのは、何千人? 何万人? 入るんだろうというくらい、めちゃくちゃ広い高等部の第1グラウンド。
高等部には同じくらい広いグラウンドが他に5つあるらしい。なので、どこのグラウンドか分かるように“第1グラウンド”と呼ばれている。
さっき理事長が「今大会は4年生の参加者が8割、5年生の参加者が9割と例年よりも多い参加率」と言っていた。
多分、幼なじみ達のかっこいい(美しい)姿をみたい人が多いんだろうな……。
挨拶を終えた理事長が仮設ステージから降りると、今度はルナのお兄さんであるリーセさんが現れた。
理事長と挨拶を交わした後、入れ違いに登壇し、参加者に向けて話し始める。
「大会主催者のリーダーを務めるリーセです。“テスタコーポ”は高等部の人たちが中心となって大会を計画し、運営しています。したがって、ここからは我々が大会の説明や進行、審判なども行っていきます」
リーセさんが話し始めた途端、グラウンド中が女の子達の「きゃー」「かっこいい」という黄色い歓声に包まれた。
うわぁ、大人気!! というか、リーセさんが大会のリーダーなんだ。
近くにいるルナに目をやると、嬉しそうな顔でリーセさんの話を聞いている。
「この大会は全部で第5ステージまであります。まずは第1ステージの説明を始めますので、元気がいいのは素晴らしいけれど……少しだけ静かにしてくださいね」
リーセさんからのお願いに、さっきまで騒いでいた女の子達が一斉に「はーい」と返事をする。
一瞬にして静まり返ったグラウンドの様子ににっこりと微笑むと、リーセさんが再び口を開いた。
「ありがとうございます。それでは説明を始めます。第1ステージは“知力”と“協力”が重要なテーマです。ペアになった人と協力し合い、私たち上級生が考えた問題を100問解いてもらいます。4、5年生で問題は異なりますので、4年生は安心してくださいね。100問解いたペアから順に、皆さんから見て左側にいる上級生達に採点してもらいます。80問以上正解すれば、次のステージへ進めます。次のステージの詳細については、採点した上級生が説明してくれます」
第1ステージの内容に、生徒達が小さな声でざわざわと騒ぎ出す。
こういった反応は毎年の事なのか、気にもせずリーセさんが説明を続ける。
「残念ながら80問以上正解できなかったペアは、再度、別な問題を解いてもらいます。2回目以降は50問になり、40問以上正解すれば次のステージへ進めます。クリアするまでは、何度も繰り返し問題を解いてもらいます。決められた問題数を正解しない限り、第2ステージには進めません。また、第1ステージの会場は、皆さんの後ろ側に用意されています」
リーセさんが伸ばした手の先を辿るように、みんなの目が一斉に後ろ側──第1ステージの方へと向けられる。
そこには前後左右の間隔を空けたテーブルと椅子が用意されていた。
「これから上級生達がみなさんを各テーブルへと誘導します。場所が決まりましたら、椅子に座ってお待ちください。全員の準備が整い次第、開始します!」
リーセさんの説明が終わったと同時に、上級生達が参加者を席に案内していく。
私とエウロはいち早く移動する事になった為、歩きながら近くにいる幼なじみ達へと声を掛けた。
「エウロ、行こっか! みんなも頑張ろうね!」
「よし! じゃあ先に行くな」
私達が手を振ると、オーンが笑顔で小さく手を振り返した。
「そうだね、お互いにいい結果を残せるように頑張ろう」
「アリア! 悪いけど、私達が勝たせてもらうわよ。あなたは潔く、2位を目指しなさい!」
「……頑張れって事なんだろうけど、2位って……一応、気持ちはありがたくもらっておくね」
セレスとオーンのペアは、少なくともセレスは優勝を狙ってるんだな。
さすがセレス、と感心していると、後ろから服をツンツンっと軽く引っ張られる。
振り返った先にはルナが立っていて、私と顔を合わせるなり、ぽつりと呟くように口を開いた。
「頑張ってね」
「ありがとう。ルナも頑張ってね!」
「うん、ほどほどに頑張る」
私達のやり取りを聞いていたミネルが、すかさずルナにツッコミを入れる。
「おい! ちゃんとやれよ。……はぁっ、不安しかないな」
「あはは、なんだかんだミネルとルナっていいコンビだね」
「お前は相変わらず見る目がないな。どう考えても違うだろ」
そうかなぁ? ミネルは否定するけど、私は結構いいコンビだと思うんだけど……。
ルナとミネルとの会話が終わった後、私達は第1ステージへと向かった。
移動中、エウロが周りに聞こえないようこっそりと提案を持ち掛けてきた。
「なぁ、アリア。時間を短縮する為、担当を分けて解かないか?」
「いいね。それでいこう。念の為、不安な問題にはマークをつけておこっか。不安な問題が多かったらクリアが危ういから」
「そうだな」
4年生までの内容で出題されるなら、問題なくクリアできそうな気はするけど、1回目でクリアできなかったらそれだけでタイムロスになる。
念には念を入れておかないと!
上級生に案内された席に座り、目の前のテーブルに置いてある回答用紙へと視線を動かす。
問題用紙は後から配るのか……と開始の合図を待っていると、どこからかテンション高めの声が聞こえてきた。
「えー、みなさん、おはようございます! 私はたまに現れる大会実況のメロウです!! そしてもう1人……」
「キナでーす。みなさん、よろしくお願いしまーす!」
すごい! この大会って、実況までいるんだ!!
2人がどこから実況してるのかは不明だけど、声から察するにメロウさんは明るく元気な男性で、キナさんはメロウさん以上にテンション高めな女性。
何というか、大会を盛り上げてくれそうな2人だなぁ。
いまだに状況を呑み込めていない参加者もいる中、メロウさんが再び、テンション高めに話し始める。
「ここからは私達2人が、みなさんの活躍をどんどんお伝えしていきますね!」
「分かりやすくお伝えできるように頑張りまーす!」
「そしてそして、僭越ながら、私がステージ開始の合図も行わせていただきます! もうすぐ、みなさんが座っているテーブルの上に問題用紙が現れますので、私の合図とともに第1ステージを開始してください!」
問題用紙が現れる!?
……なるほど! この大会は高等部の人たちが運営をするって言ってたから、《知恵の魔法》を使える上級生達が問題用紙を出すのかな?
以前、ミネルが手帳のような“ナレッジ”を見せてくれた時みたいに。
そう考えると、高等部の人たちの魔力とかも試される大会なんだなぁ。
メロウさんの話に続き、今度はキナさんがこれまたテンション高めに注意事項を伝えてくれる。
「合図開始前に問題を解く行為、いわゆるフライングは速攻でバレますので気を付けてくださーい! また、あらゆる場所に不正などをチェックする監督官がいますので、カンニング行為なども速攻でバレまーす」
「それでは、みなさん準備はいいですか!?」
メロウさんの掛け声とともに、テーブルの上に問題用紙が現れた。
それと同時に、ツル植物で作られた緑の壁が、隣のテーブルとの間を遮るように生い茂る。
すごい! 《緑の魔法》で壁を作ったんだ!
こんなにも沢山の魔法を見る事がないから、それだけで興奮しちゃうけど、今回ばかりは気持ちを落ち着かせなきゃ……。
「皆さん、驚いちゃいましたぁ!? 説明してなくてすいません!(笑) それでは、第1ステージを開始します!!」
──ついに始まった!!
久しぶりのワクワクするような緊張感。息を大きく吸い、エウロと顔を見合わせる。
「私が最後の問題から解いていくね」
「了解! じゃあ、俺は最初から解いていく」
早速、最後の問題へと目をやると……うわっ、難しい……。
エウロの方はスラスラ解いてる。
これって、もしかして徐々に問題が難しくなっていくのかな?
だとしたら選択を誤ったような……。
まあ、しょうがない。どんどん解いていくしかない。
開き直って、エウロと一緒にひたすら問題を解いていると、突如、メロウさんの興奮した声が聞こえてきた。
「おおっと! 1時間半を経過し、もう採点エリアに向かうペアがいる! これは前代未聞の早さじゃないかー!!」
「情報が入ってきましたー! なんと、4年生のミネル&ルナペアでーす!!」
キナさんも大興奮で叫んでいる。
さ、さすが……速読できるって言ってたもんなぁ、ミネル。
実況の声に反応し、エウロが私に話し掛けてくる。
「俺たちも残り3問解けば、終わるんじゃないか?」
「そうだね! まだ全然巻き返せる時間だね!」
「そうだな」
それからすぐに私達も全ての問題を解き終わった。
不安な問題も5問程度と少なく済んだので、足早に採点エリアへと向かう。
途中、またしてもメロウさんの熱の入った実況が聞こえてきた。
「1位のミネルとルナペアから少し遅れて、今採点エリアへと向かっているのは、なんと2組! またまた4年生のオーンとセレスペア! そして、エウロとアリアペア!」
オーンとセレスは私たちより少しだけ前を走っている。
あとちょっとで追いつく! と思ったところで、採点エリアへと到着した。
私とエウロの姿を見た上級生が優しく声を掛けてくれる。
「お疲れ様でした。これより採点を始めます」
採点に時間がかかるのかと思いきや、《知恵の魔法》で回答用紙である“ナレッジ”を取り込むと、あっという間に採点が終わった。
「エウロ、アリアペアは97点! 高得点ですね。第1ステージクリアです。おめでとうございます!」
採点結果にエウロとハイタッチを交わす。
このまま別な場所へと移動するのかと思っていたら、採点してくれた上級生が第2ステージについても説明してくれた。
「第2ステージは“体力”、そして何より“協力”が重要となってくるステージです。まず、武術か剣術どちらか好きな方を選択してください。選んだ方で上級生と勝負してもらいます。さて、どちらにしますか?」
上級生からの問いかけに、エウロと再び顔を見合わせる。
「……エウロはどっちが得意?」
「俺は武術だな。アリアは?」
「剣術だけど、一緒に稽古をした時、武術の方が連携できてたと思う。協力してやる事を考えるなら武術にしよう」
「OK」
「武術にします」と伝えると、上級生は笑顔でうなずき、片手を上げて近くに立っている人を呼んだ。
「武術を選択されました。第2ステージへの案内をお願いします」
「分かりました。ここからは、私がステージへ案内しますので、ついてきてください」
「はい、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」
2人そろって上級生に一礼する。
私達の行動に、案内役の女性がニコッと微笑んでくれた。
「まずは第1ステージクリアおめでとうございます。案内しながら、第2ステージの説明をしますね」
「はい」
「お願いします」
ついに第2ステージに突入かぁ。今のところ、2番手か、3番手のはず。
案内役の人が歩きながら説明を続ける。
「これから案内するステージで、上級生と武術で勝負をしてもらいます。エウロくん、アリアさん2人に対し、上級生は1人です。要は2対1で勝負をしてもらいます」
「2対1……」
「はい。対戦相手の両肩、両もも、両膝、両肘の8箇所に魔法でつけた葉がついています。2人には特殊な手袋を付けてもらい、靴にも同様のカバーを掛けて試合してもらいます。手袋やカバーが葉に触れると、葉が自動的に落ちるようになっています。制限時間は5分。8箇所の葉を全て落とせたら、次のステージへ行けます。クリアできなかった場合は、自分たちの好きなタイミングで別な上級生にチャレンジしてもらいます。10回やってもクリアできない場合、1回目から数えて落とした葉のトータルが8枚を超えていればクリアとします。8枚を超えていないペアは、超えるまで繰り返し挑戦してもらいます。何か質問はありますか?」
「俺は大丈夫です」
「私も大丈夫です。ありがとうございます」
案内役が「そうですか」と返したのとほぼ同時に次の会場へと到着した。
2人で「ありがとうございました」とお礼を伝えた後、案内役の女性は去り、代わりに別な上級生がやってきた。
「第2ステージの審判をするロロです。よろしくお願いします。そして、2人の目の前にあるのが試合を行う競技台です! 対戦相手はすでに競技台の上で君たちを待っています。試合を行う準備ができた段階で私に声を掛けてください」
そう告げると、ロロさんは少しだけ私たちから距離をとった。話し方もそうだけど、随分と真面目そうな人だなぁ。
ロロさんが離れてすぐ、エウロが考えながら口を開いた。
「すぐに試合をするより、しっかりと作戦を立ててからの方が体力の減りも少ないし、結果的に早いような気がする」
「やっぱり気が合うね、エウロ。私も同じ考えだよ」
2人で笑い合うと、急いで作戦を練り始めた。
理事長の挨拶とともにテスタコーポ大会は幕を開けた。
1ヶ月間、猛特訓した成果を出す時がついにきたんだ!
参加者がまず集められたのは、何千人? 何万人? 入るんだろうというくらい、めちゃくちゃ広い高等部の第1グラウンド。
高等部には同じくらい広いグラウンドが他に5つあるらしい。なので、どこのグラウンドか分かるように“第1グラウンド”と呼ばれている。
さっき理事長が「今大会は4年生の参加者が8割、5年生の参加者が9割と例年よりも多い参加率」と言っていた。
多分、幼なじみ達のかっこいい(美しい)姿をみたい人が多いんだろうな……。
挨拶を終えた理事長が仮設ステージから降りると、今度はルナのお兄さんであるリーセさんが現れた。
理事長と挨拶を交わした後、入れ違いに登壇し、参加者に向けて話し始める。
「大会主催者のリーダーを務めるリーセです。“テスタコーポ”は高等部の人たちが中心となって大会を計画し、運営しています。したがって、ここからは我々が大会の説明や進行、審判なども行っていきます」
リーセさんが話し始めた途端、グラウンド中が女の子達の「きゃー」「かっこいい」という黄色い歓声に包まれた。
うわぁ、大人気!! というか、リーセさんが大会のリーダーなんだ。
近くにいるルナに目をやると、嬉しそうな顔でリーセさんの話を聞いている。
「この大会は全部で第5ステージまであります。まずは第1ステージの説明を始めますので、元気がいいのは素晴らしいけれど……少しだけ静かにしてくださいね」
リーセさんからのお願いに、さっきまで騒いでいた女の子達が一斉に「はーい」と返事をする。
一瞬にして静まり返ったグラウンドの様子ににっこりと微笑むと、リーセさんが再び口を開いた。
「ありがとうございます。それでは説明を始めます。第1ステージは“知力”と“協力”が重要なテーマです。ペアになった人と協力し合い、私たち上級生が考えた問題を100問解いてもらいます。4、5年生で問題は異なりますので、4年生は安心してくださいね。100問解いたペアから順に、皆さんから見て左側にいる上級生達に採点してもらいます。80問以上正解すれば、次のステージへ進めます。次のステージの詳細については、採点した上級生が説明してくれます」
第1ステージの内容に、生徒達が小さな声でざわざわと騒ぎ出す。
こういった反応は毎年の事なのか、気にもせずリーセさんが説明を続ける。
「残念ながら80問以上正解できなかったペアは、再度、別な問題を解いてもらいます。2回目以降は50問になり、40問以上正解すれば次のステージへ進めます。クリアするまでは、何度も繰り返し問題を解いてもらいます。決められた問題数を正解しない限り、第2ステージには進めません。また、第1ステージの会場は、皆さんの後ろ側に用意されています」
リーセさんが伸ばした手の先を辿るように、みんなの目が一斉に後ろ側──第1ステージの方へと向けられる。
そこには前後左右の間隔を空けたテーブルと椅子が用意されていた。
「これから上級生達がみなさんを各テーブルへと誘導します。場所が決まりましたら、椅子に座ってお待ちください。全員の準備が整い次第、開始します!」
リーセさんの説明が終わったと同時に、上級生達が参加者を席に案内していく。
私とエウロはいち早く移動する事になった為、歩きながら近くにいる幼なじみ達へと声を掛けた。
「エウロ、行こっか! みんなも頑張ろうね!」
「よし! じゃあ先に行くな」
私達が手を振ると、オーンが笑顔で小さく手を振り返した。
「そうだね、お互いにいい結果を残せるように頑張ろう」
「アリア! 悪いけど、私達が勝たせてもらうわよ。あなたは潔く、2位を目指しなさい!」
「……頑張れって事なんだろうけど、2位って……一応、気持ちはありがたくもらっておくね」
セレスとオーンのペアは、少なくともセレスは優勝を狙ってるんだな。
さすがセレス、と感心していると、後ろから服をツンツンっと軽く引っ張られる。
振り返った先にはルナが立っていて、私と顔を合わせるなり、ぽつりと呟くように口を開いた。
「頑張ってね」
「ありがとう。ルナも頑張ってね!」
「うん、ほどほどに頑張る」
私達のやり取りを聞いていたミネルが、すかさずルナにツッコミを入れる。
「おい! ちゃんとやれよ。……はぁっ、不安しかないな」
「あはは、なんだかんだミネルとルナっていいコンビだね」
「お前は相変わらず見る目がないな。どう考えても違うだろ」
そうかなぁ? ミネルは否定するけど、私は結構いいコンビだと思うんだけど……。
ルナとミネルとの会話が終わった後、私達は第1ステージへと向かった。
移動中、エウロが周りに聞こえないようこっそりと提案を持ち掛けてきた。
「なぁ、アリア。時間を短縮する為、担当を分けて解かないか?」
「いいね。それでいこう。念の為、不安な問題にはマークをつけておこっか。不安な問題が多かったらクリアが危ういから」
「そうだな」
4年生までの内容で出題されるなら、問題なくクリアできそうな気はするけど、1回目でクリアできなかったらそれだけでタイムロスになる。
念には念を入れておかないと!
上級生に案内された席に座り、目の前のテーブルに置いてある回答用紙へと視線を動かす。
問題用紙は後から配るのか……と開始の合図を待っていると、どこからかテンション高めの声が聞こえてきた。
「えー、みなさん、おはようございます! 私はたまに現れる大会実況のメロウです!! そしてもう1人……」
「キナでーす。みなさん、よろしくお願いしまーす!」
すごい! この大会って、実況までいるんだ!!
2人がどこから実況してるのかは不明だけど、声から察するにメロウさんは明るく元気な男性で、キナさんはメロウさん以上にテンション高めな女性。
何というか、大会を盛り上げてくれそうな2人だなぁ。
いまだに状況を呑み込めていない参加者もいる中、メロウさんが再び、テンション高めに話し始める。
「ここからは私達2人が、みなさんの活躍をどんどんお伝えしていきますね!」
「分かりやすくお伝えできるように頑張りまーす!」
「そしてそして、僭越ながら、私がステージ開始の合図も行わせていただきます! もうすぐ、みなさんが座っているテーブルの上に問題用紙が現れますので、私の合図とともに第1ステージを開始してください!」
問題用紙が現れる!?
……なるほど! この大会は高等部の人たちが運営をするって言ってたから、《知恵の魔法》を使える上級生達が問題用紙を出すのかな?
以前、ミネルが手帳のような“ナレッジ”を見せてくれた時みたいに。
そう考えると、高等部の人たちの魔力とかも試される大会なんだなぁ。
メロウさんの話に続き、今度はキナさんがこれまたテンション高めに注意事項を伝えてくれる。
「合図開始前に問題を解く行為、いわゆるフライングは速攻でバレますので気を付けてくださーい! また、あらゆる場所に不正などをチェックする監督官がいますので、カンニング行為なども速攻でバレまーす」
「それでは、みなさん準備はいいですか!?」
メロウさんの掛け声とともに、テーブルの上に問題用紙が現れた。
それと同時に、ツル植物で作られた緑の壁が、隣のテーブルとの間を遮るように生い茂る。
すごい! 《緑の魔法》で壁を作ったんだ!
こんなにも沢山の魔法を見る事がないから、それだけで興奮しちゃうけど、今回ばかりは気持ちを落ち着かせなきゃ……。
「皆さん、驚いちゃいましたぁ!? 説明してなくてすいません!(笑) それでは、第1ステージを開始します!!」
──ついに始まった!!
久しぶりのワクワクするような緊張感。息を大きく吸い、エウロと顔を見合わせる。
「私が最後の問題から解いていくね」
「了解! じゃあ、俺は最初から解いていく」
早速、最後の問題へと目をやると……うわっ、難しい……。
エウロの方はスラスラ解いてる。
これって、もしかして徐々に問題が難しくなっていくのかな?
だとしたら選択を誤ったような……。
まあ、しょうがない。どんどん解いていくしかない。
開き直って、エウロと一緒にひたすら問題を解いていると、突如、メロウさんの興奮した声が聞こえてきた。
「おおっと! 1時間半を経過し、もう採点エリアに向かうペアがいる! これは前代未聞の早さじゃないかー!!」
「情報が入ってきましたー! なんと、4年生のミネル&ルナペアでーす!!」
キナさんも大興奮で叫んでいる。
さ、さすが……速読できるって言ってたもんなぁ、ミネル。
実況の声に反応し、エウロが私に話し掛けてくる。
「俺たちも残り3問解けば、終わるんじゃないか?」
「そうだね! まだ全然巻き返せる時間だね!」
「そうだな」
それからすぐに私達も全ての問題を解き終わった。
不安な問題も5問程度と少なく済んだので、足早に採点エリアへと向かう。
途中、またしてもメロウさんの熱の入った実況が聞こえてきた。
「1位のミネルとルナペアから少し遅れて、今採点エリアへと向かっているのは、なんと2組! またまた4年生のオーンとセレスペア! そして、エウロとアリアペア!」
オーンとセレスは私たちより少しだけ前を走っている。
あとちょっとで追いつく! と思ったところで、採点エリアへと到着した。
私とエウロの姿を見た上級生が優しく声を掛けてくれる。
「お疲れ様でした。これより採点を始めます」
採点に時間がかかるのかと思いきや、《知恵の魔法》で回答用紙である“ナレッジ”を取り込むと、あっという間に採点が終わった。
「エウロ、アリアペアは97点! 高得点ですね。第1ステージクリアです。おめでとうございます!」
採点結果にエウロとハイタッチを交わす。
このまま別な場所へと移動するのかと思っていたら、採点してくれた上級生が第2ステージについても説明してくれた。
「第2ステージは“体力”、そして何より“協力”が重要となってくるステージです。まず、武術か剣術どちらか好きな方を選択してください。選んだ方で上級生と勝負してもらいます。さて、どちらにしますか?」
上級生からの問いかけに、エウロと再び顔を見合わせる。
「……エウロはどっちが得意?」
「俺は武術だな。アリアは?」
「剣術だけど、一緒に稽古をした時、武術の方が連携できてたと思う。協力してやる事を考えるなら武術にしよう」
「OK」
「武術にします」と伝えると、上級生は笑顔でうなずき、片手を上げて近くに立っている人を呼んだ。
「武術を選択されました。第2ステージへの案内をお願いします」
「分かりました。ここからは、私がステージへ案内しますので、ついてきてください」
「はい、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」
2人そろって上級生に一礼する。
私達の行動に、案内役の女性がニコッと微笑んでくれた。
「まずは第1ステージクリアおめでとうございます。案内しながら、第2ステージの説明をしますね」
「はい」
「お願いします」
ついに第2ステージに突入かぁ。今のところ、2番手か、3番手のはず。
案内役の人が歩きながら説明を続ける。
「これから案内するステージで、上級生と武術で勝負をしてもらいます。エウロくん、アリアさん2人に対し、上級生は1人です。要は2対1で勝負をしてもらいます」
「2対1……」
「はい。対戦相手の両肩、両もも、両膝、両肘の8箇所に魔法でつけた葉がついています。2人には特殊な手袋を付けてもらい、靴にも同様のカバーを掛けて試合してもらいます。手袋やカバーが葉に触れると、葉が自動的に落ちるようになっています。制限時間は5分。8箇所の葉を全て落とせたら、次のステージへ行けます。クリアできなかった場合は、自分たちの好きなタイミングで別な上級生にチャレンジしてもらいます。10回やってもクリアできない場合、1回目から数えて落とした葉のトータルが8枚を超えていればクリアとします。8枚を超えていないペアは、超えるまで繰り返し挑戦してもらいます。何か質問はありますか?」
「俺は大丈夫です」
「私も大丈夫です。ありがとうございます」
案内役が「そうですか」と返したのとほぼ同時に次の会場へと到着した。
2人で「ありがとうございました」とお礼を伝えた後、案内役の女性は去り、代わりに別な上級生がやってきた。
「第2ステージの審判をするロロです。よろしくお願いします。そして、2人の目の前にあるのが試合を行う競技台です! 対戦相手はすでに競技台の上で君たちを待っています。試合を行う準備ができた段階で私に声を掛けてください」
そう告げると、ロロさんは少しだけ私たちから距離をとった。話し方もそうだけど、随分と真面目そうな人だなぁ。
ロロさんが離れてすぐ、エウロが考えながら口を開いた。
「すぐに試合をするより、しっかりと作戦を立ててからの方が体力の減りも少ないし、結果的に早いような気がする」
「やっぱり気が合うね、エウロ。私も同じ考えだよ」
2人で笑い合うと、急いで作戦を練り始めた。
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