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中等部 編
10歳、カウイと従兄弟と時々、子分
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授業の場所が変更になった事を伝える為、カフェテリアへとやって来るも、肝心のカウイがいない……。
もしかして、行き違いになった?
とはいえ、私もカウイもまだ学校に慣れていないから、他のルートで教室に戻る事は考えにくい……。
うーん、カウイはどこに行ったんだろう?
まずはこの辺りを捜してみて、いないようなら一度教室に戻ろう。
そう心に決め、キョロキョロと周囲を見渡しながら歩いていると、カフェテリアの近くにある庭から話し声が聞こえてくる。
「お前みたいな落ちこぼれが、セレスさんやルナさんと一緒にいるなんて生意気だぞ!」
「そ、そんな……」
……!この声はカウイだ!!
声を追うように庭の方へ移動すると、カウイが3人の男の子たちに取り囲まれていた。
なんだろう? 不穏な空気を感じる。
確かめようとカウイの元に駆け寄ろうとした瞬間、輪の中心にいた男の子がカウイを殴った。
……えっ! 何が起きたの!?
咄嗟の出来事に、思わず動きが止まってしまう。
なんでこんな……って、違う!
ぼーっと眺めている場合じゃない! カウイを助けなきゃ!!
「カウイ!!!」
慌てて走り出すと、カウイと男の子たちとの間に体を滑り込ませる。
急に現れた私の存在が気に入らなかったのか、カウイを殴ったリーダー格っぽい男の子が私の事を睨みつけてきた。
「誰だ? お前」
「私はアリア。カウイの友人よ! カウイ、大丈夫?」
「……アリアちゃん」
倒れているカウイへ手を差し伸べると、その様子を見ていたリーダー格の男の子が、またもや挑発的な言葉を投げかてくる。
「家ではママに助けられて、学校でも女に助けられてるなんて、相変わらず情けない男だな」
「……ちょっと! さっきカウイを殴った事といい、あなた何なの!?」
怒りで口調が強くなる。
「俺? 俺はカウイの従兄弟オリュンだ。まあ、カウイの従兄弟だとは思えないくらい優秀だけどな」
「その通りです!オリュンさんほど優秀な人なんて、他にいませんよ!」
カウイの従兄弟と名乗った男の子は、意地悪そうな笑みを浮かべている。
一緒にいる他の2人も、笑いながらうなずいている。
ペコペコと頭を下げる姿や口調から察するに、この2人は子分みたいなものかな。
それにしてもカウイの従兄弟って言ったよね?
以前、同じ年の従兄弟がいるって話をしてくれた事は覚えてるけど……。
『ぼ、僕が上手に話せなくて、お、怒らせたことがあって……あまり仲良くないんだ』
カウイの声のトーンが明らかに下がったから、それ以上は聞かなかったんだよね。正直、あまりいい印象はなかったな。
あの時、話に聞いてた従兄弟も私たちと同じ学校だったんだ。
「なんでカウイを殴ったの? カウイがあなたに何かした?」
「調子に乗ってるから、従兄弟としてちゃんとしつけをしたんだよ。じゃないと、周りにも迷惑を掛けるだろ!?」
──!!! そ、そんな理由で!?
「カウイに迷惑を掛けられた事なんて一度もないわ。オジュンだっけ? そんなくだらない理由でカウイを殴るなんて!」
「オリュンだ! くだらない理由だって? お前も同じ目に合わせてやろうか!?」
そう言うと、オリュンは私に向かって拳を構える。
殴られるっ! と思った瞬間、両手を広げたカウイが庇うように私の前に立った。
「ア、アリアちゃんに暴力を振るわないで」
「んっ? やっぱりカウイは調子に乗ってるようだな」
カウイの手足がカタカタと震えている。
反抗された事に腹が立ったのか、オリュンはカウイの髪を掴んでぐっと引っ張り、笑いながら引きずり回した。
オリュンの仲間たちは、引きずられる姿を見て「情けねえ」と馬鹿にしたように笑っている。
「い、痛いよ」
「ハハハ! 調子に乗ってるお前が悪いんだからな。分かったか?」
許せない!
こんなひどい事をして、笑ってるなんて!
私はカウイの髪を引っ張るオリュンの手を掴み、勢いよく振り払った。
突然、邪魔が入った事に驚いたオリュンが、私の方へと向きを変えるように体を動かす。
その隙にもう一度オリュンの手首掴み、くるっとひねった。
「い、痛っ。何するんだ、この女!」
護身用にと、家庭教師の先生に習った技が成功した! 実戦で使うのは初めてだったけど、上手くいってよかった。
オリュンの手首を彼の背中側にひねって固定したまま、助けを呼ぼうと周りを見渡す。
……誰もいない。
もうすぐ授業が始まるから、誰もいないんだ。
そうだ! カフェテリア内なら、人がいるかもしれない。
オリュンの手を離したらすぐにカウイと一緒に助けを呼びに行こう!!
合図代わりに名前を呼ぼうとカウイの方へ顔を向けた瞬間、横からドンっと物凄い力で突き飛ばされた。
「ア、アリアちゃん!!」
「オリュンさんに手を出すからだ。当然の報いだな!」
オリュンの子分が私に体当たりしてきたらしい。
バランスを崩した体は、地面へと後ろ向きに倒れ込んだ。鈍い音が響き、同時に強い痛みが走る。
痛っ!!
どうやら頭を打ったみたい……。なんだかくらくらする。
頭だけじゃない。目に映る景色も影を覆ったかのように暗いし、ぼんやりとしている。
そっと目元に触れてみれば、手のひらが血で赤く染まった。頭を打った時にどこか切ったみたい。
眩暈と痛みでふらふらになりながらも、立ち上がろうと足に力を入れる。
近くから「おっ、また突き飛ばされたいのか!?」という、からかい混じりの声が聞こえてきた。
「──ア、アリアを傷つけた! 絶対に許さない!!」
今まで聞いた事のない声だった。
よく知るカウイの声ではあるけれど、いつもよりも低く、感情的だ。
怒っているせいか、わずかに震えている。
「はっ!? 誰が許さないって!?」
オリュン達へと鋭い視線を向けるカウイの手のひらから、突然、炎が舞い上がる。
その光景にオリュンが一瞬ひるむ様子を見せたものの、すぐにニヤッと笑った。
「へぇ、お前も魔法を使えるようになったのか。面白い。魔法で勝負するか?」
オリュンの手のひらからも、カウイと同じ赤い炎が現れる。
待って!
カ、カウイが魔法を!? カウイはまだ魔法を使えないはず。
これがきっかけで使えるようになったのだとしたら…………?
魔法を使えるようになったとしても、思ったように操るためには訓練が必要だと習った。
という事は、まずい!カウイはきっと魔法の制御ができない!!
不安定な状態で魔法を使えば、オリュンもそうだけど、カウイ自身にも危険が及ぶ可能性がある。
……それにカウイの様子がいつもと違う。いつもの穏やかな口調じゃないし、優しい表情も消えてる。
何かおかしい!絶対に止めなきゃ!!!
今この瞬間にもオリュンを攻撃しそうなカウイへと、目一杯、大きな声で叫ぶ。
「カウイ! 待って!!」
私の声が聞こえたのか、攻撃態勢に入っていたはずのカウイの手から炎が消え、目線がこちらへと移動する。
よかった! 止まった!!
顔はまだ険しいままだけれど、とりあえずは被害を出さずに済んだ。
──そう安堵したのもつかの間、手のひらに小さな炎の玉を作り出したオリュンが、それをカウイに向けて火炎弾のように放った。
危ない!!
気がつくと、私は全速力でカウイの元へと走り、オリュンが放った火炎弾を背中全体に受けていた。
途端に顔色を変えたカウイの目の前で、沈み込むように倒れる。
「さ、さすがにやばいですよ。オリュンさん!」
「に、逃げましょう!」
「チッ」
焦ったような声とともに、バタバタと逃げ去っていく足音が聞こえる。
カウイよかったね。これでもう大丈夫だよ。
そう思っていても声が出ない……なぜだろう?
「アリアちゃん! アリアちゃん!!」
顔面蒼白なカウイが、必死に私の名前を呼んでいる。
答えようと口を動かしてはいるけれど、声が出ない。
「アリアちゃん!」
カウイが何か叫んでる。
「……アリアちゃん」
声がどんどん遠くなっていく。
そこで私の意識は途絶えた─
もしかして、行き違いになった?
とはいえ、私もカウイもまだ学校に慣れていないから、他のルートで教室に戻る事は考えにくい……。
うーん、カウイはどこに行ったんだろう?
まずはこの辺りを捜してみて、いないようなら一度教室に戻ろう。
そう心に決め、キョロキョロと周囲を見渡しながら歩いていると、カフェテリアの近くにある庭から話し声が聞こえてくる。
「お前みたいな落ちこぼれが、セレスさんやルナさんと一緒にいるなんて生意気だぞ!」
「そ、そんな……」
……!この声はカウイだ!!
声を追うように庭の方へ移動すると、カウイが3人の男の子たちに取り囲まれていた。
なんだろう? 不穏な空気を感じる。
確かめようとカウイの元に駆け寄ろうとした瞬間、輪の中心にいた男の子がカウイを殴った。
……えっ! 何が起きたの!?
咄嗟の出来事に、思わず動きが止まってしまう。
なんでこんな……って、違う!
ぼーっと眺めている場合じゃない! カウイを助けなきゃ!!
「カウイ!!!」
慌てて走り出すと、カウイと男の子たちとの間に体を滑り込ませる。
急に現れた私の存在が気に入らなかったのか、カウイを殴ったリーダー格っぽい男の子が私の事を睨みつけてきた。
「誰だ? お前」
「私はアリア。カウイの友人よ! カウイ、大丈夫?」
「……アリアちゃん」
倒れているカウイへ手を差し伸べると、その様子を見ていたリーダー格の男の子が、またもや挑発的な言葉を投げかてくる。
「家ではママに助けられて、学校でも女に助けられてるなんて、相変わらず情けない男だな」
「……ちょっと! さっきカウイを殴った事といい、あなた何なの!?」
怒りで口調が強くなる。
「俺? 俺はカウイの従兄弟オリュンだ。まあ、カウイの従兄弟だとは思えないくらい優秀だけどな」
「その通りです!オリュンさんほど優秀な人なんて、他にいませんよ!」
カウイの従兄弟と名乗った男の子は、意地悪そうな笑みを浮かべている。
一緒にいる他の2人も、笑いながらうなずいている。
ペコペコと頭を下げる姿や口調から察するに、この2人は子分みたいなものかな。
それにしてもカウイの従兄弟って言ったよね?
以前、同じ年の従兄弟がいるって話をしてくれた事は覚えてるけど……。
『ぼ、僕が上手に話せなくて、お、怒らせたことがあって……あまり仲良くないんだ』
カウイの声のトーンが明らかに下がったから、それ以上は聞かなかったんだよね。正直、あまりいい印象はなかったな。
あの時、話に聞いてた従兄弟も私たちと同じ学校だったんだ。
「なんでカウイを殴ったの? カウイがあなたに何かした?」
「調子に乗ってるから、従兄弟としてちゃんとしつけをしたんだよ。じゃないと、周りにも迷惑を掛けるだろ!?」
──!!! そ、そんな理由で!?
「カウイに迷惑を掛けられた事なんて一度もないわ。オジュンだっけ? そんなくだらない理由でカウイを殴るなんて!」
「オリュンだ! くだらない理由だって? お前も同じ目に合わせてやろうか!?」
そう言うと、オリュンは私に向かって拳を構える。
殴られるっ! と思った瞬間、両手を広げたカウイが庇うように私の前に立った。
「ア、アリアちゃんに暴力を振るわないで」
「んっ? やっぱりカウイは調子に乗ってるようだな」
カウイの手足がカタカタと震えている。
反抗された事に腹が立ったのか、オリュンはカウイの髪を掴んでぐっと引っ張り、笑いながら引きずり回した。
オリュンの仲間たちは、引きずられる姿を見て「情けねえ」と馬鹿にしたように笑っている。
「い、痛いよ」
「ハハハ! 調子に乗ってるお前が悪いんだからな。分かったか?」
許せない!
こんなひどい事をして、笑ってるなんて!
私はカウイの髪を引っ張るオリュンの手を掴み、勢いよく振り払った。
突然、邪魔が入った事に驚いたオリュンが、私の方へと向きを変えるように体を動かす。
その隙にもう一度オリュンの手首掴み、くるっとひねった。
「い、痛っ。何するんだ、この女!」
護身用にと、家庭教師の先生に習った技が成功した! 実戦で使うのは初めてだったけど、上手くいってよかった。
オリュンの手首を彼の背中側にひねって固定したまま、助けを呼ぼうと周りを見渡す。
……誰もいない。
もうすぐ授業が始まるから、誰もいないんだ。
そうだ! カフェテリア内なら、人がいるかもしれない。
オリュンの手を離したらすぐにカウイと一緒に助けを呼びに行こう!!
合図代わりに名前を呼ぼうとカウイの方へ顔を向けた瞬間、横からドンっと物凄い力で突き飛ばされた。
「ア、アリアちゃん!!」
「オリュンさんに手を出すからだ。当然の報いだな!」
オリュンの子分が私に体当たりしてきたらしい。
バランスを崩した体は、地面へと後ろ向きに倒れ込んだ。鈍い音が響き、同時に強い痛みが走る。
痛っ!!
どうやら頭を打ったみたい……。なんだかくらくらする。
頭だけじゃない。目に映る景色も影を覆ったかのように暗いし、ぼんやりとしている。
そっと目元に触れてみれば、手のひらが血で赤く染まった。頭を打った時にどこか切ったみたい。
眩暈と痛みでふらふらになりながらも、立ち上がろうと足に力を入れる。
近くから「おっ、また突き飛ばされたいのか!?」という、からかい混じりの声が聞こえてきた。
「──ア、アリアを傷つけた! 絶対に許さない!!」
今まで聞いた事のない声だった。
よく知るカウイの声ではあるけれど、いつもよりも低く、感情的だ。
怒っているせいか、わずかに震えている。
「はっ!? 誰が許さないって!?」
オリュン達へと鋭い視線を向けるカウイの手のひらから、突然、炎が舞い上がる。
その光景にオリュンが一瞬ひるむ様子を見せたものの、すぐにニヤッと笑った。
「へぇ、お前も魔法を使えるようになったのか。面白い。魔法で勝負するか?」
オリュンの手のひらからも、カウイと同じ赤い炎が現れる。
待って!
カ、カウイが魔法を!? カウイはまだ魔法を使えないはず。
これがきっかけで使えるようになったのだとしたら…………?
魔法を使えるようになったとしても、思ったように操るためには訓練が必要だと習った。
という事は、まずい!カウイはきっと魔法の制御ができない!!
不安定な状態で魔法を使えば、オリュンもそうだけど、カウイ自身にも危険が及ぶ可能性がある。
……それにカウイの様子がいつもと違う。いつもの穏やかな口調じゃないし、優しい表情も消えてる。
何かおかしい!絶対に止めなきゃ!!!
今この瞬間にもオリュンを攻撃しそうなカウイへと、目一杯、大きな声で叫ぶ。
「カウイ! 待って!!」
私の声が聞こえたのか、攻撃態勢に入っていたはずのカウイの手から炎が消え、目線がこちらへと移動する。
よかった! 止まった!!
顔はまだ険しいままだけれど、とりあえずは被害を出さずに済んだ。
──そう安堵したのもつかの間、手のひらに小さな炎の玉を作り出したオリュンが、それをカウイに向けて火炎弾のように放った。
危ない!!
気がつくと、私は全速力でカウイの元へと走り、オリュンが放った火炎弾を背中全体に受けていた。
途端に顔色を変えたカウイの目の前で、沈み込むように倒れる。
「さ、さすがにやばいですよ。オリュンさん!」
「に、逃げましょう!」
「チッ」
焦ったような声とともに、バタバタと逃げ去っていく足音が聞こえる。
カウイよかったね。これでもう大丈夫だよ。
そう思っていても声が出ない……なぜだろう?
「アリアちゃん! アリアちゃん!!」
顔面蒼白なカウイが、必死に私の名前を呼んでいる。
答えようと口を動かしてはいるけれど、声が出ない。
「アリアちゃん!」
カウイが何か叫んでる。
「……アリアちゃん」
声がどんどん遠くなっていく。
そこで私の意識は途絶えた─
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